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第67回 東京にリトル沖縄! シャッター商店街が街おこしに成功したそのワケは!?

[ 2009年6月30日 ]

 甲州街道沿いに突如現れる、朱礼の門。......といっても、あの首里城のようなごつごつした重厚なものではなく、路地の味わいを損なわない、ささやかで華奢な門だ。柱には金色の模様が施され、小さなシーサーが出迎えてくれる。

 ここはその名も「沖縄タウン」! 杉並和泉明店街への入り口だ。アラフォー世代にとっては記憶のツボ「ひとつ屋根の下」のロケ地としても名の知れたこの街が、リトル沖縄として盛り上がっていると聞いてやってきた私。

 シーサーに挨拶をして、さっそく朱礼の門をくぐってみることにした。

甲州街道沿いに突如現れる、朱礼の門

閉まってもただじゃ起きない!? シャッターが下りたらそこはキャンバス

 事のはじまりは5年前。ディスカウントストアや、コンビニエンスストアの進出で、世間では商店街の危機が叫ばれていた。ここ和泉明店街とて、シャッターの下りた店が目立つようになった。いかにして魅力的なアレンジを加えるか。そこでクローズアップされたのが、当時ブームでもあった「沖縄」だったのだ。杉並には沖縄出身の人が多いこともあり、「都会の人が出会ったことのない沖縄の発見&体感ができる街、沖縄タウン」のコンセプトが決定した。

 立ち上げにあたっては、「沖縄タウン」応援団が募られた。商店街のメンバーはもとより、ここをホームタウンとする学生、他の地域から集まる若者たちなど、沖縄そしてこの地を愛する人たちが集結した。事務所のシャッターに大きく描かれたシーサーの絵は、応援団の美大生がボランティアで描いたもの。いつでも商店街に活気のまなこを向けて、パワーを送り続けている。

 うーん、いいね、こういうの。年齢も立場も超えた人たちが、こうして街を活性化するなんて。もちろん主婦だって入っていいわけだし。

閉まってもただじゃ起きない!? シャッターが下りたらそこはキャンバス

手づくりだから、やりすぎない。だから自然に受け入れられる「沖縄感」

 ところでこの「沖縄タウン」、入ってみれば甲州街道の喧騒など忘れてしまいそうなたたずまい。建物のつくりは古いし、コンビニもない。袖振り合うも多生の縁、じゃないけれど、顔を確認せずにはすれ違えないくらいの細~い路地。なんだか昭和の世界に戻ったような気分だ。多摩ではこんな商店街、お目にかかれない。

 沖縄らしさはと言うと、最初に目に入ったのは電柱に貼られた街のPRチラシ。そして、フリーハンドの説明書きがほほえましい、沖縄のお酒が山と並ぶ酒屋さん。一人で店番するおばちゃんが気さくな沖縄物産専門店。どこからともなく聞こえてくる沖縄民謡。

 が、はて......。確かにそこここに沖縄カラーが目につくけど、街全体を見通すと、あっちもこっちも沖縄一色! とは言えないぞ。まだ先にも仕掛けがあるのかしら。

 と思えば、よく見ると書いてある、置いてある。何の変哲もないフツーの中華料理店に「沖縄やきそば」。雑貨店の店先に、所せましと並ぶシーサーの置き物。なるほど、大々的に外観から変えている店もあれば、隠れ沖縄な店もあるわけだ。統一感がないところに、かえって好感がもてるではないか。

 「我々、素人だからね。とにかくみんなで手づくりしたんだよ」と話すのは、株式会社沖縄タウンの瀧上さん。この街は「手づくり」感が共感を呼ぶのだな......。

手づくりだから、やりすぎない。だから自然に受け入れられる「沖縄感」 手づくりだから、やりすぎない。だから自然に受け入れられる「沖縄感」

何か違う! めんそーれ市場は、プチアドベンチャー!?

 商店街の中ほどにある、上部に大きなハイビスカスが描かれた、めんそーれ市場入り口。中に入ると何だかミステリアス。屋外の開放感から一転、通路は狭く、足下は水が撒かれたコンクリート。確かに市場っぽくはある。

 それに、古いせいか、田舎のおばあちゃんちのにおいがする! いろんなものがあって、ところどころ裸電球とか使ってて、新しくないけど自分が知らない何かが出てくる、おばあちゃんち。この市場もそう。見るもの一つひとつ「これって何?」って確認せずにいられないから、素通りできないのだ。通路が途中で直角に曲がっていて、先が見えないのもさらにドキドキする。

 肉屋、食品店、沖縄家庭料理の店......。オリオンビールの提灯くらいは私でも見たことはあるけど、店構えとしてはどれも未完成な感じで、かえって沖縄の地元っぽさを感じる。沖縄の楽器、三線の「とぅるるんてん」なんて、弦とか備品まで売っていて、超マニアック。

 そんなこんなで、そろそろと進みながら市場を抜けた私。気の抜けない雰囲気のおかげで、めんそーれ市場を出たところで「ほうぅっ」と息をついた。テーマパークのナントカ館、を出たかのごとくね。

何か違う! めんそーれ市場は、プチアドベンチャー!?

ひとつ街の下、ハンドメイドは文化をやさしく伝える手法!?

 市場を出てから、「首里製麺」で「沖縄すば」を食べてみる。これがおいしいの何のって! 普段食べてる麺類のどれにも分類できない味。休日ともなれば行列ができるらしい。店の内外には手書きのメニューやこまかい説明、沖縄ことばをまじえたお店からのメッセージが貼られている。文字だけでなくイラストもたくさん添えられていて、ほんわかした気持ちになる。

 この手書きのよさを感じたのは、ここだけではない。最初に目についた片桐酒店もそうだったし、三線の「とぅるるんてん」だって、個展ができそうなほど素敵なイラストがたくさんあった。

 手書きって、こんなにもあたたかいものだろうか。人の「手」を通すと、ただの「沖縄の味」「沖縄のもの」が、そう、「沖縄の文化」となって心にじーんと伝わるのだ。

ひとつ街の下、ハンドメイドは文化をやさしく伝える手法!?

足りなさ加減がその魅力! 沖縄タウンを動かす「人」の頑張り

 沖縄タウンは、その活動が話題を呼んで、さまざまなメディアで紹介されている。東京に沖縄? ちょっと面白そうじゃない? そう思うのは、私だけではないのだ。みんなが気になる、杉並和泉明店街。それは、ここに関わる人の「手づくり」な頑張りを感じる場所。隣でやってる面白そうなことに、ホントはみんな関わりたいし、頑張りたい。沖縄タウンを盛り上げる原動力は、ここに集まる人の「気持ち」、そして「手づくり」のあたたかさなのだ。和泉明店街が好き、沖縄が好き。だから、頑張る。頑張るから、注目される。そしてまた頑張れる。

 できたものが未完成でもいい。むしろその未完成な部分が、その先への原動力に変わるのではないか。ひとつ屋根の下ならぬ、ひとつ街の下、「沖縄」を合言葉にして集まった人の頑張りが、この「沖縄タウン」の今を導いているのだと思う。

足りなさ加減がその魅力! 沖縄タウンを動かす「人」の頑張り"

三方からのベクトルがぶつかり、弾ける広場! 夏休みイベントに期待大!!

 平日は地元から、休日は京王線沿線やもっと遠くから、たくさんの人たちが集まってくる「沖縄タウン」。代田橋駅までの「通り道」だったこの商店街が、「目的地」へとポジショニングを変えるために一役買ったのが、年に数回行ってる、沖縄イベントだろう。

 メインステージは、商店街中心にある広場。いや、正確に言えば道路だ。東、西、南と三方向からの道路の交差点。そこがほどよい広場のような役割をして、ステージと化す。シャッターに描かれたシーサーが見つめる。まるでこのために作られたような絶好のスペースだ。

 イベント内容も、三線の日、ゴーヤー祭り、離島フェア、沖縄そばの日......。そのたびにエイサーや唄三線あり、沖縄名物の無料配布あり、とにかく、「行ってみたくなる」ような趣向が満載だ。

 来たる7月には「夏だ! 祭りだ! エイサーだ! 」というタイトルのエイサーまつりが開催される。去年は本場沖縄からエイサー隊を招いて、獅子舞まで登場し、大いに盛り上がったとか。今年はどんな沖縄の「夏」を見せてくれるのか。我が家の夏の楽しみが、ひとつ増えたのは間違いない。

三方からのベクトルがぶつかり、弾ける広場! 夏休みイベントに期待大!!

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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