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連載コラム

第68回 もしかしたら暗闇は心の扉を開ける鍵なのかも。"ホンネ"トーク炸裂のワケに迫ってみた!

[ 2009年8月3日 ]

  初告白は暗闇のトンネルの中。そこには素直な自分がいました。

 そういえば昔、家の近所に長いトンネルの遊具が置いてある公園があったのだ。ブランコも滑り台も大好きだったんだけど、やっぱり一番好きだったのはみんなで"基地"と呼んでいた長いトンネル。いっつもケンカばかりしていた近所のやっちゃんに、人生初の愛の告白をしたのも、そのトンネル内だった。かくれんぼをしていて、たまたま隠れた場所が、やっちゃんと一緒のトンネルだったの。暗闇の中、鬼に見つからないように二人して「し~っ」なんて言っているうちに、だんだん、どっきんどっきん心臓の鼓動が早くなってきちゃってね。で、とうとう隠れていることも忘れて「私ね、やっちゃんのこと好き! 」なんて愛の告白をしちゃったのだ。確かにやっちゃんは、なんか気になる存在ではあったけれど、まさか自ら告白しようとは...。でもそれは、紛れもなく自分の素直な気持ちからでた言葉。気が弱かった私が、あんな大胆な告白ができたのは、きっと暗闇の中だったせい。なんだか暗闇って人を素直にさせる力がありそうだぞ。

さあ洞窟探検にでかけよう! 無国籍居酒屋「ぐろっと」

 "グロット"とは世界的に有名なサイパンのダイニングポイントを指し、島から外洋へと続く"小さな洞窟"のこと。トンネル状になっているので太陽の光は差し込まず、一面すべてが青色で彩られているらしい。この幻想的な美しさに、ダイバーのだれもが魅了されてしまうそうだ。
 
 そんなダイビングスポットをイメージしたのが、小田急江ノ島線南林間駅西口からすぐのところにある無国籍居酒屋「ぐろっと」だ。一人がやっと通れるほどの扉を開けると、そこには岩をイメージした、ごつごつしたトンネルが。目が慣れていないせいもあり、先に何があるのかまったくわからない。天井から照らす薄ぼんやりとした赤い光が、この暗闇に妙にマッチし、一瞬ぞくぞくっとする。「うわっ! なんだか暗黒の世界に落ちていくようだ」それがこの店の第一印象だった。

 先の方に灯るかすかな光だけをたよりに、恐る恐る中へ入っていくと、突然、竹で作られた屋根が見えてきた。ボラカイ島やフィリピン製のランプ、大きなほら貝などが、天井から無造作にぶら下がっていて、まるで浜辺に建つ小屋みたいだ。耳を澄ますと、どこからか潮騒が聞こえてくるように感じた。

海の中でダイビングをしているような、ふわ~りとした感覚

 間仕切りで仕切られた個室スペースは、岩をイメージした壁に水槽がはめ込まれ、熱帯魚がすいすいと優雅に泳いでいる。暗闇の中、青白い光がテーブルを照らし、幻想的な模様を壁一面に映し出す。すべての演出が心憎いねぇ。ダイバー心をくすぐるってもんだわ! 酔いも手伝ってか、まるで海の中でダイビングをしているような、ふわ~りとした感覚に陥っちゃったよ。

 

ぐろっと2 ぐろっと3

「ぐろっと」のコンセプトは、居心地のよさ。装飾のほとんどは、海に憧れる店長の手作りなのだそう。入り口の洞窟には、ちょっとびっくりしたけれど、店長が作るおいしい"男の手料理"とフレンドリーな雰囲気も手伝って、見事"私のお気に入りベスト10"にランクイン! 友人と長い時間あれやこれや話しをすることができたのも、もしかしたら、うす暗さが自分を素直にさせてくれたのではないかと密かに思っている。洞窟は、私にほっとするひとときを与えてくれたぞ。

1950年代のアメリカがそのまま色濃く残る「イタリアンガーデン」

 土曜の昼下がり。小田急線相模大野駅近くの行幸道路は、行き交う車や人で大混雑だ。そんな喧噪を払拭させてくれるのが、45年ほどの歴史を持つ「イタリアンガーデン」だ。鬱蒼と生い茂る木々の中に見え隠れする「ITARIAN GARDEN」と書かれた看板。営業しているのかしていないのか、常にひっそりしているので、「中はどうなっているのかなあ...」と興味を持ちつつ、いつも前を通り過ぎてしまっていた。だが、この日は旦那とふたりで、勇気を出して出かけてみることに。ちょっと怖いもの見たさ?って気持ちもあったのかも(お店の人ごめんなさい!)。店の前にある駐車場のジャリを踏みしめ、こわごわ木の扉を少しだけ開けて中を覗いてみる。五月晴れの空とは対称的に店内は真っ暗で、なんだか穴ぼこを覗き込んでいるような感じ。「どうぞ」と言う声がかからなければ、きっとそのままそうっと閉めて帰ってきてしまっただろう。

 ここは1950年代にアメリカ人によって建てられ、当時は毎晩、キャンプの米兵たちで賑わっていたのだそうだ。その頃の名残が、まだそこらここらに色濃く漂っている。

 一番奥のテーブルに案内された。歩くたびにぎしぎしと唸る、ささくれだった木の床。白いビニールのテーブルクロスや赤いパイプ椅子もすべて古めかしい。蛍光灯が補助的に何個かあるだけで、灯りと言えば、いくつも置かれている手作り蝋燭の光だけ。窓がない密室空間の中でゆらゆらと灯る蝋燭が、この店の独特な雰囲気をかもしだしていた。溶けて流れて固まったロウに長い歴史を感じる。まるでここだけ、時がフリーズしてしまったかのように、すべてが古き良き時代のアメリカのままなのだ。

 だんだんと目が慣れてくると、店の中のいろいろな物が目に飛び込んできた。急に旦那が「うわっ! ワーリッツァーのだ。すごいなあ」と叫ぶ。そこには大きなジュークボックスが置いてあった。中にはアメリカンポップスなど洋楽レコードが100枚ほど入っていて、今も現役で音を奏でているそうだ。スピーカーから流れてくる独特な音色と、ガチャガチャとレコードが入れ替わる音すべてがレトロ。そう言えばン十年前、元彼と一緒に曲を選んだっけな、なんて余計な事を思い出してしまったよ。「メンテナンスしながら使い続け、現在のは3代目です。修理してくれるところが少なくなってしまったので、継続して使い続けるのが大変なんです」と店員さん。そうだろうなあ。今どきこんなアナログな音色が聞けるところをほかに知らない。
 
 ぐるっと店内を見回してみると、壁一面には、ここに訪れたことがある有名人とお店の人とのツーショット写真が飾ってあった。ざっと100は超えているだろう。人気司会者あり、大物ミュージシャンあり、国民的スポーツ選手あり...。「えっ? あの人もここに来たの?」と探してみるのも興味深い。お忍びで来るにはもってこいのところなのだ。

 ピザやスパゲティもおいしく、久々に旦那とデート気分。ふだんは子どもの話題ばかりなのだが、ゆらめく蝋燭のシチュエーションには、そんな会話は似合わない。ゆらゆら揺れる炎を見ていたら、思わず新婚時代にタイムトリップ、なんだか胸がキュン☆としてしまったよ。
 

暗闇は自分を素直にさせ、見つめ直すことができる空間なのかも

 私が「暗闇いいのよ、暗闇~」なんて話を会社でしていたら、K子がこんなお店を紹介してくれた。JR横浜線相模原駅から5分くらいのところにある「ラヴァーズロック」は、どこかの秘境にいるような感覚が楽しめるダイニングバーなのだそうだ。11個ある個室はそれぞれ個性的で、入り口には滝(?)がある...らしい。うーんますます興味深いね。聞いているだけでなんだか探検している気分になってきたよ。今度の飲み会は、ココ!で決まりだな。

JR横浜線相模原駅から5分くらいのところにある「ラヴァーズロック」 JR横浜線相模原駅から5分くらいのところにある「ラヴァーズロック」

JR横浜線相模原駅から5分くらいのところにある「ラヴァーズロック」

 友達や彼氏に悩みや恋愛について話をする時、明るい店内だと、どうしても理性や体裁などが働いてしまって、"ホンネ"が語れないような気がするのだ。でもね、もしもよ、相手の顔がかすかに見える程度の暗闇の中だったらどうよ? すべてクリアに見えないことで「これはもしかしたら夢? それとも現実?」と自分でもだんだん区別がつかなくなってきてしまうのだ。すると氷が溶けるように緊張が和らいでいき、いつの間にか素直な自分が出現する。そしていよいよクライマックス、心のもやもやを吐き出すように"ホンネ"トークが炸裂だぁ! あー、気分爽快、すっきりした! 暗闇ってさ、もしかしたら心の叫びに耳を傾け、扉を開けてくれる鍵なんじゃないのかな? たまにはそんな店で心の掃除をすることをオススメします!!あ、でもね、余計なお世話と言わないで。主婦たちが男友達と暗闇に飲みに行って、ついつい言わなくてもいい旦那の愚痴をポロリとこぼして意気投合、「僕はそんな思いはさせない」「そうよねあなたなら」そして一線を...なんてことにならないようにご注意を。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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