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連載コラム

第72回 行けばわかる、紙の魅力。クラフトでコミュニケーションを取り戻せ! スクラップブッキング専門店「Lucky You!」

[ 2009年12月7日 ]

 アメリカでは超ポピュラー、日本でもここ数年、小さい子どもを持つママたちに人気急上昇中のクラフト、スクラップブッキング。写真を台紙にレイアウトし、そのまわりに紙やシールでデコレーションを施してかわいく変身させるというホビーをご存じだろうか。
 こう見えて私も、就学前の子どもを持つママの一人。子どもの写真を飾ってにんまりするなんて、1日1回じゃすまないくらいだ。でも、私と手づくりクラフトの距離は微妙に遠く、スクラップブッキングだって、インターネットで見て「かわいいな」とは思ってるけど、遠まきに眺めてるだけというのが正直なところ。
 そんな私を見たわがスタッフの、「見てみたら変わりますから、ぜひ一度!」という言葉に背中を押されてやってきたのがここ、吉祥寺というわけ。
 手づくりカードという言葉にちょっと気遅れしつつ、一人のママとして、スクラップブッキングの世界をのぞきにきたのだが......。

「Lucky You!」

ここなら安心! 大人がカッコいい街で、子どもと一緒に立ち寄りたくなる

 自由が丘ほどお洒落じゃないけど、下北沢ほどごちゃごちゃ感がない。だけど「吉祥寺」と聞けば誰もが「おっ」と思う。大人がカッコいい街、というキャッチどおり、期待値たっぷりな街だ。
 駅から大通りを渡り、中道通り。いろんな店がそこここにある。自分が立っているところのちょっと先に、主張のある店の軒先だけが目に入る。気になるからつい歩く。またすぐ先に何かがある。その繰り返し。
 そんな中道通りから路地を一本曲がったところに、Lucky You! はあった。白を基調とした明るい外観。季節がらクリスマスグッズのワゴンが置いてあり、太陽の光にきらきら輝いて一層まぶしく感じる。この路地だと車の通りはさほどないから、ベビーカーや手つなぎ必至の子連れママたちだって安心だ。殿方にはわからないかもしれないけど、これって大事なのよね。子どもと一緒に立ち止まってると車がブーン、危ない、なーんていう場所じゃ、オチオチ店先なんて眺めちゃいられないもの。
 入り口には、黒板にチョークで書かれたインフォメーションボード。ああ、この手描きチョークに弱いんだよね、私。描いてる人の姿とかを想像して、いらっしゃいませなんて言われる前から、歓迎されてる気になっちゃう。この日、ボードに書かれていたのは、スクラップブッキングの講習イベントの告知。なんと、複数回の案内のうちすでに満員御礼、受付終了の回がある! なにっ、やっぱり人気なんだ!?

Lucky You! Lucky You!

わくわくしすぎてすっかりガーリーな気分! 接客するのはディスプレイ!?

 店内に入ってからは、人目もはばからず黄色い声を出し続けた私。これ、かわいい! あ、これも! うわー、こんなのが!! ......とまあ、夫がいたら引いただろうなというくらい、アラフォーから少女へと一気にタイムスリップしてしまった。
 決して広くはない店内に、ところ狭しと並ぶ2000アイテム以上の細かい品々。小さいスタンプから、インク、ラメ、ペーパー、型抜きパンチ、エンボス加工(紙に凹凸をつける技法)のためのグッズ。傍らにはそれぞれ、作品がサンプルとして置いてあって、これを使うとこうなる、という成果が見える。見てると自分がそれを使って作品を作りあげる工程までイメージできてしまって、気がつくと手にはお買い上げ予定のスタンプとカードが数点。「その気にさせられる」それでもいいのだ。だってガーリーな気分なんだもの。
 商品説明の手描きPOPも心にくい。これいいでしょ、楽しいよ、やってみようよ、と、POPが語りかけてくるのだ。その語りかけにいちいち前のめりになる私。うん、いいね。これもやってみたいね。......これだけ小ぢんまりした店内なのに、一歩移動するのに何分かけたことか!
 この細かなディスプレイ、気がつけば店員さんの接客の役割を果たしていたのかも。そもそも、商品がかわいいからお客の気持ちは前向き。ちょっとしたことは手書きPOPが説明してくれて、仕上がり具合も明確。押しつけ感や買わなきゃ感なんてまったく無いのに、自然と吸い寄せられて、興味がわく。手にとってみたくなる。
 もちろんわからないことがあれば、振り返ったすぐそこにオーナーの杉井さんがいるから、気軽に質問ができるのも魅力だ。店自体のコンパクトさ、扱う商品の小ささ、そして見えない店員さん(笑)......居心地がよくて、時が経つのをすっかり忘れてしまう。

Lucky You! Lucky You!

このプチ体験で扉が開く! ようこそ、クラフトの世界へ!!

 お店の中央にはテーブルがあって、そこで自由にお試し体験ができるようになっている。動物や音符、クローバーなど超キュートな形に紙を切りぬくパンチや、通すだけで紙がトタンのようなナミナミに変身するペーパークリンパー、エンボス加工ができるテンプレートなど、スクラップブッキングのツールを使うことができる。私もチャレンジしてみた。グリーンの紙をパンチにはさんで、自分でカチャン、と型抜き......ポロリと落ちる生まれ変わった紙のかけら! ただの紙が魔法みたいな変化を遂げたその瞬間、手元から心に、何か熱いものが伝わった気がした。これが、世のママたちがスクラップブッキングに夢中になる所以。四角い紙がデコラティブに輝いていく心の満足感なのだ!
 考えてみれば子育てって、目に見えて報われることなんて皆無。そりゃあ刻一刻と愛するわが子が成長してるのは知ってるけど、徒労に終わることの多さと言ったら。そんなとき、この「ただの紙」が華麗に変身して、プチアーティスト気分を味わえたらどう? わが子の写真、家族の写真をオリジナルのアルバムで残せたらどう? 子育ての報われない思いなんて吹っ飛んじゃう。わかるわかる、これならやってみたいと思うよね!

Lucky You! Lucky You!

小さな店が、これからの日本を支えていく!?

 スクラップブッキング人口は、小さなお子さんがいるママたちが断然多いのだが、最近ではシニアの愛好家も増えているとか。お孫さんが持ってくる写真や、ご自分で描く絵手紙に飾りを施すのだそう。もちろんOLさんたちの趣味や、ウエディングパーティなどの需要もあって、その層は年々幅広くなっている。
 Lucky You! オーナーの杉井さんは、これから、子どもたちにスクラップブッキングを普及させようと考えているそうだ。「スクラップブッキングはもともと、アメリカで子どもたちがゲームをしないようにと始まったんです。男の子なんて、面白くてこのテーブルから離れたがりませんよ」。
 なるほど。おためし体験でコロリと落ちるのは私だけじゃないのだ。スクラップブッキングのツールや作品を見るだけでなく、この小さいテーブルがあることで「つくる」喜びを知ることができるわけだね。一度でもここに来て、切って、触って、紙が変身するのを見たら、ボタンを押すだけで完結してしまうゲームの世界なんて感動のかけらもないはず。五感をフル活用して何かを創造するよろこび。それを一緒にわかちあう楽しみ。写真を扱うことで大切にできる思い出、そして家族の会話。クラフトを通じて人とのつながりを大切にする。今の日本人に必要なものって、まさにそれじゃないの!
今年のクリスマスは、手づくりカードを息子たちに贈ってみようかな。今までになかった新しい語らいがうまれるかも。
 紙が教えてくれる魔法のコミュニケーション。この小さな店が草の根的に蒔いていく種は、これから間違いなく、大きな大きな根をはって、日本人の足りないトコロを埋めていく。そう願いたい。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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