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連載コラム

第73回小学生の頃の気持ちへ戻れる場所。学校風居酒屋という魔法。

[ 2009年12月28日 ]

試験管やビーカーがグラス! 机も椅子も学校風

 「カクテルが試験管に入っている」「パフェの容器がビーカー」。友人からそんな店があると聞き、ただひたすら驚いた。思わず「え? 薬くさくないの? プール掃除みたいなにおいはしないの? 」と思わず問い返してしまったほどだ。もちろん、実験に使ったものを再利用しているわけではない、と一笑されたんだけどね(笑)
 さらに店内は教室に見立てられており、机や椅子も昔の小学校っぽいものが使用されていると聞き、ますます興味がわいた。そこで大阪出張の折、何をおいても、と「個室居酒屋 6年4組 谷町本校」をのぞいてみることにした。

オーナーが通った小学校の木造校舎がモデル

 店のオーナーがその昔在籍した、島根県にある岩倉分校をモデルとして再現したという店内は廊下、床、壁がすべて木造だ。ごく少人数向けのスペースから十数人程度が入れる広さのある個室まで、壁で細かく仕切られ、それぞれに黒地に白い文字のプレートで「理科室」や「PTA室」などと名前が掛けられている。まるでタイムスリップしたみたいで古きよきって感じ。私が最初に通っていた小学校はこんな感じだったなーって思うけど、経験なくても昭和を感じてもらえるのは、やっぱりこの木のぬくもりかしら。

学校風居酒屋 学校風居酒屋 学校風居酒屋

10年以上も前に制作された子どもたちの作品を展示

 店の一番奥の壁は、アニメキャラクターや似顔絵、知人へのメッセージなどで埋まっていた。スタッフが一つ絵を描いたら、あとはあっという間にお客さんたちが思い思いに落書きしていったとのこと。この落書きを見ていると、知らず知らずのうちに、小学生だったあの頃に戻っていくようだ。

学校風居酒屋 学校風居酒屋 学校風居酒屋

 店内は、壁のいたるところに絵や書道の作品が飾られているのだが、いくつかの作品を眺めているうち、作者が同じものが複数あることに気がついた。実はこれらの作品は店を飾るためにわざわざ製作されたものではなく、店の社員さんたちが大切に保管していた、自分の家族が小学生の時の作品だとのこと。中には20年近く前の作品もあるんだそうだ。言われてみると、今どきの子どもが描かないようなチャンネル式テレビや黒電話の絵もあったりして。何より、用紙の黄ばみが時間の流れを感じさせ、店の雰囲気作りに一役買っている。小学校らしさを醸し出すランドセルも、作品と同様、社員のお子さんが実際に使用されたものをディスプレイしているそうだ。大切な子どもの作品やランドセルを店のために提供する。そうしようと社員が思えるほど、ここはアットホームな職場なのだろう。この雰囲気が訪れたお客さんの心をほぐし、童心に返らせてくれるに違いない。

遊び心のあるドリンクメニュー

 出席簿風のメニューを開くと、そのネーミングに思わず吹き出した。

学校風居酒屋 学校風居酒屋

 ドリンク類で、まず私の目を引いたのが「理科のお勉強」だ。オレンジジュースが三角フラスコに、レモン、パッションフルーツ、ヨーグルト、マンゴーのリキュールが試験管に入っている。グラスにそれらを注いで自分だけのオリジナルカクテルを作る、というものだ。「これこれ。これが、友人が話していた、試験管入りのカクテルね!」とさっそく注文した。リキュール類はそれぞれどんな組み合わせでも相性がよく、甘みの少ないオレンジジュースは2杯分のカクテルができる量が入っているらしい。オレンジジュースを注いだグラスに、まずはレモンを、続いてヨーグルトを加えようと、試験管を傾けた。その瞬間、私の頭に「酸にたんぱく質を加えると凝固する」という理科の知識が蘇ってきた。ちょうど注文を取りに来たスタッフに、凝固しても飲めるのか尋ねると、「大丈夫です。まさに『理科のお勉強』です。どれぐらい固まるか、カクテルを作りながら実験してください」と促された。ドロッとなるのを期待しながら攪拌したが、白っぽい凝固物がほんの少し沈殿した程度。それより、液体の変化に気を取られてレモンを入れすぎ、酸っぱくなってしまったのが残念! 2杯目のパッションフルーツとマンゴーの調合に細心の注意を払ったのは言うまでもない。
 他にもミルメイクのカクテル「大人のミルメイク」が牛乳瓶で出てくるなど、細かい工夫がされていておもしろい。リキュールは自分で混ぜるため、アルコールに弱い人も、自分に合わせて調節できるのだ。

懐かしい味、懐かしい名前の食事メニュー

 数ある給食メニューの中で、小学生の私がもっとも楽しみにしていたのがソフト麺だ。当然「6年4組」のメニューにもソフト麺はある。ただし、ソースはミートソースのみ。カレー麺ではなかったが、こちらも注文してみた。この店では取り皿がアルマイト製だが、このメニューも、一つのアルマイト皿にビニール袋に入ったままの麺が乗せられ、もう一つのアルマイト皿にミートソースが入って運ばれてきた。想像していたよりも麺は細かったが、小学生に戻った気分で、袋を破ってミートソースの皿に麺を入れた。ベタッとくっついてなかなかほぐれないのは、昔のまんま。アルマイト皿のふちのわずかなへこみが、給食で使ったベコベコのアルマイト皿を思い出させた。味は「懐かしい」とだけ言っておこう。

学校風居酒屋 学校風居酒屋

 が、すべての料理が「懐かしい」味というわけではない。「給食おばさんの~」「昔なつかし」といった枕詞のついたメニューは数多いが、クリームコロッケや唐揚げといった揚げ物や、そば飯やチャーハンなどご飯ものも、素朴ながらおいしい(ちなみに料理は陶器などの器に盛り付けられている)。コラーゲン入りのジュレを混ぜ合わせたサラダは酸味があり、さわやかだ。しかも、どのメニューも価格は決して高くない。居酒屋はシチュエーションが大切だが、それは味と価格がそろってこそ。あらためて居酒屋に要求される条件を考えた。

学校風居酒屋 学校風居酒屋

 食事の最後には「6年4組100点パフェ」をいただいた。これは注ぎ口のある300mlのビーカーに入っている。でも、容器がビーカーだということは、言われなければ気付かない。薄くて透明で上から下まで同じ太さのビーカーは、作業のしやすさを追求した結果この無駄のない形になったのであり、それゆえ食品を入れるのにも適しているのではないか? 甘さにとろけそうになりながら、そんなことを考えた。ちなみにスプーンはもちろん先割れ。うーん、心配りが憎い!

小学生時代を思い出させる仕掛けは他にも!

 店ではなんと小テストもある。曜日によって教科が決まっているようだが、この日は算数のテストだった。分数の計算、道のりや比重、平均などについて出題された。店名が「6年4組」だけに6年生向けの問題なのか、日ごろ怠けている私の頭には計算がややこしく、意外と時間がかかった。が、結果は100点満点! ごほうびのラムネやスナック菓子をいただいた! こんなふうに入場者を面白がらせる仕掛けが随所にあると、宴はいっそう盛り上がるよね。

学校風居酒屋 学校風居酒屋

 「個室居酒屋 6年4組」は近年、各地に進出している。大阪では梅田、北新地、枚方に、そして福岡にも分校をオープンさせた。スペース的にはどこも谷町本校より広く、オルガンのある音楽室を備えた分校もあるとのことだ。しかし、椅子や机にいたるまで、昔の分校の雰囲気を一番残しているのが谷町本校。椅子は小さくて硬く、正直言えば座布団がほしいが、この雰囲気はなかなか味わえない。ずっと変わらずにあってほしい。平成生まれが新入社員で入ってくるようになった今日だからこそ、昭和のテイストを守っていって欲しい。あ、ソフト麺はもうちょっとおいしくなってもいいかも......でした。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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