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連載コラム

第76回 今地元が新しい! 街と人とをつなぐ情報拠点を目指す「furukost」

[ 2010年4月1日 ]

 東京の南西部にある八王子。都心との距離ゆえに独自の発展を遂げることができた、23区外では一番人口の多い市だ。ここで、雑貨やなのに地元密着型、という新しい展開を見せている店があるので紹介しよう。

雑貨やに入るのはオンナの使命!?

 車移動に慣れている私だけど、この日は久しぶりに電車に乗って八王子へ。......と、多摩とはひと味ちがった駅前のにぎわいに圧倒されてしまった。八王子の駅前ってこんなにスゴかったっけ? 学生の街だからか、平日なのに渋谷なみのにぎわい(!)。でも、ちょっと歩いただけで喧騒から離れ、商店街の延長のような温かさと安心感が戻ってくる。振り返って駅を見るとすぐそこに駅ビルが見えるのにね。なんだか不思議。
 「furukost」は、西放射通りを抜けてすぐの交差点近くに店を構えている。環境に配慮した品、オーガニックや手づくり品、自然由来のものにこだわりをもつ、ナチュラル嗜好の生活雑貨店だ。
 見ると店頭には、オーガニック洗剤と掃除用品がディスプレイしてあった。魔法使いが使っているみたいなほうき。思わずさわってみると、見た目の期待どおり、ほどよいやわらかさだ。こういうこだわり感に、主婦はめっぽう弱いのよね。あなたの周りを見直してみて、こんな生活も思い出して、と語りかけてくるような。......日々の忙しさにかまけている私には喝! というか。
 見ると、ガラスの向こうにはまだまだそそられるものが置いてありそう。さっそく中に入ってみた。

雑貨やに入るのはオンナの使命!? 雑貨やに入るのはオンナの使命!?

「こだわり」ゆえのとっつきにくさを払拭

 ご夫婦でやっているというだけあって、店内はとても小ぢんまりとして居心地がいい。でも、商品が積みあがって圧倒されるなんていう感じはない。わくわくする雑貨やさんの雰囲気だ。あちらこちらにある、段ボールに書かれたPOPが温かい。リサイクルを意識しての素材利用なのに、おしゃれ感たっぷりだ。
 もちろん、置いてあるのはオーガニックティーやチョコレートなどフェアトレード(発展途上国の生産者を守る活動)の製品をはじめ、新聞紙をリユースした鉛筆、工場の端布を利用した布ナプキンなど、こだわりの品々。でも、そこに押しつけ感はなく、軽い説明POPがあるだけだ。興味があれば商品の傍らに置いてあるパンフレットを手にとって、詳しい商品説明や背景などをじっくり読むことができる。さらに知りたければ、すぐそこにいるオーナーに質問もできるわけ。地球のため、無添加、手づくり、というと、こだわりすぎて入り込めないイメージを持つ人もいるけど、これなら馴染みのない人でもすうっと入ってこられる。そんなやさしい心配りだ。
 店内にはリサイクル・リユースだけでなく安全・安心を考えた商品も置いてある。目をひくのは子どものおもちゃやベビー服。そうそう、子どもが小さいと、与えるすべての素材に気を使うものだ。赤ちゃんの無垢な肌に触れ、口に入ることを考えたら。私の場合、子どもの年齢が上がってきたことでつい忘れがちなのだが......反省しなければ! でも、こういう店があると、はっとして立ち止まれる。環境にやさしいグッズもしかり。自分では情報収集しきれない部分をこういう店がリードしてくれたら、そして「のめりこみ度」を自分で決められたら......。それって理想じゃない?

「鉄カフェ・レトロ」 「鉄カフェ・レトロ」

商品へのこだわり、地域へのつながり

 オーナーの松浦さんは、サラリーマン時代は転勤族。結婚してから色々な土地を回って八王子に越してきた結果、この街がとても気に入ったそうだ。「北海道に行かなくても、長野に行かなくても、山梨に行かなくても味わえる自然がここにはある。落ち葉を踏んで歩けるこの環境の中で、子どもたちに育ってほしかった」なるほどね。生粋の八王子市民だと、都心都内から遠いということでマイナスに感じがちなのかもしれない。各地を転々としてきたからこそ見えてくる八王子のよさがある。それを松浦さんが地元の人に伝えているのだそうだ。
 だから、環境や安心・安全だけがこの店のこだわりではない。商品を手にとると、それが地元八王子で作られたものであったり、ご近所の工房で作られていたりするのだ。聞けばそれぞれにオーナー松浦さんとのつながり、地元とのつながりというストーリーが見えてくる。例えば店頭に並ぶ無添加の飴。これは、松浦さんが道の駅でたんきり飴を買ったことがきっかけで店頭に並んでいるもの。天井から下がっている品のよいステンドグラスは、年に一度行われる八王子の工房びらきで出会ったステンドグラス作家さんの作品。中には路上イベントでの出会いもあるとか。「地元でこんなものが作られているんだ!」という新しい発見って感動するし、その感動って誰かに伝えたくなるじゃない? その先へ動きたくなるのが人間というもの。客が店からメーカーに、もしくはメーカーからこの店にと、リンクさせているということよね。
 このつながりは商品を通してだけではない。レジの横には掲示板があり、地域の情報やイベントのチラシなどが貼ってある。保育園の広報や、八王子市の子育てマップ、目や耳が不自由な子のための玩具カタログなど、お店全体が交流の場となっている。赤ちゃんがいるママがベビーカーでふらっと立ち寄るのも大歓迎。食品検査までパスしたという安全な木のおもちゃだって、子どもがさわりやすい低い棚に置いてあって、おためしもOK。うれしい配慮だ。

「鉄カフェ・レトロ」 「鉄カフェ・レトロ」

 新しいものは都心から、なーんて昔の話。情報源からのタイムラグって絶対にあるよね。だけど地元の情報を地元で発信できたら、それって一番フレッシュな情報だと思う。興味をもつ、選ぶ、広げる、つなげる。訪れた人の気持ちがこの店にあつまり、発展する。それを育てるのはオーナーのもつ地元への愛着と商品へのこだわりなのだろう。その気持ちは店にあらわれて、来る人をも動かす。区役所や公民館だけが地元の文化交流の場じゃないのだ。こういう地域交流の拠点が増えていったら、街はもっともっと発展するんだろうな。


今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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