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連載コラム

第80回 「ここに行けば何かが見つかる! 情報とグッズと音楽の宝庫、ヴィレッジヴァンガード」

[ 2010年8月3日 ]

 テンションが下がったときに、エネルギー補給に行く店。そういう店が私にはある。ヴィレッジヴァンガード。何度口にしても舌を噛みそうになるこの店は、私の元気の源だ。店の名前はともあれ、あそこにあるこんな店、と言えばわかる方も多いのではないだろうか。さて、「こんな店」がどんな店なのか、ご紹介しよう。

いざ、宝の山へ。つかみはこの「ごちゃごちゃ感」! 異色なたたずまいに足がとまる

 ヴィレッジヴァンガードといえば、どの店舗でも共通しているのが、遠くからでもすぐにわかる雑多な店構えだ。初めてこの店を見つけたのはたしか数年前。思わず「なんじゃありゃ!?」と思って小走りになったっけ。今でも近づくと気持ちが急くのは変わらない。普段はママの買い物に付きあうなんてまっぴらゴメンという小1の次男でさえ、ヴィレッジヴァンガードが見えると私の手を振りほどいてどんどん先に行ってしまう。血は争えない? いや、そうではない。年齢を超えて吸い寄せられる雰囲気とでも言おうか。ほら、てんこもりになったおもちゃ箱をざざざーってひっくり返すおチビちゃんの気持ちに帰る、みたいなね。

 さて、今回ご紹介するのは、田園都市線と横浜線が交差する街、長津田のヴィレッジヴァンガード。郊外型ショッピングセンター、アピタ長津田内にあるこの店には、周辺マンションのファミリーが毎日のように集う。休日にはゆったりショッピングをしにくるカップルも見かける。
 ショッピングセンター内の広い通路を歩いていると、あったあった、「あの外観」。どこが入り口かわからないくらいに、店の外にも所せましと商品が並んでいる。子ども向けのキャラクター、見たこともない形のマット、吊り下げられたビニール人形。ショーケースの中には「これは何?」というような得体の知れないものが並び、かといえばその先にはどこにでも売っていそうなサンダルやバッグ。「ここ、何の店?」と足を止めずにはいられない。

飽きないのはこの「前にすすめない」ディスプレイのせい?

 入り口を入ると、まずはじめに目にとびこんできたのは、人気アニメグッズ。小学生から大人まで支持を受けてるというアニメだ。ただし! グッズといっても、とおりいっぺんの平凡なモノから、「こんなものがあるんだ!」というモノまで、ありとあらゆる商品が置いてある。登場するキャラクターをふかーく研究した本とか、アニメのストーリーに関連する周辺情報の大人向けの本、パズル、トランプ、アクセサリー......。思わず立ち止まってじっくり読んでしまう。私は決してはまっているアニメじゃないのに、この場でいったい何分費やしただろう? まだ何かあるんじゃないのか? 見逃したものはないか? と洗いざらいチェックしたくなる。

 このディスプレイは、ワイヤーラックが立ててあり、周辺にモノが置いてある、というとても簡易なもの。ふと見ると、壁際の本棚はともかく、ここ以外のコーナーも同じようなつくりになっている。一見雑然と見えるが、ワイヤーラックは上のほうまで商品がかけられていて、サンプル的なものは「見るだけ」、じっくり手にとりたくなるものは手元の高さ、下はバケツに入っている大物でかんたんに出し入れできたり......、雑然と見えて実は配置も考えられているように感じる。あちこちにモノがあって目線が定まらないこの配置が、飽きさせないテクニックなのかもしれない。上から下まで、その情報の詰まりようが半端じゃないもの。このコーナーは裏にもグッズが置いてあるのだが、周りを見ると、裏と表ではまったく違うジャンルのものが置いてあったり、規則性があるような、ないような、いや、あるかどうかわからないからとにかく裏も見る! 見逃したくない! と思ってしまう。それが作戦なのか?

ファンになるのは、好きな「何か」が見つかるから

 入り口前のアニメコーナーをやっとの思いではなれると、となりは別のキャラクターグッズがあった。ジブリもの、ディズニーもの、その他いろいろなキャラクターのぬいぐるみや雑貨が置いてあるのだが、それぞれけっして子どもだまし(なんて言ったら子どもに怒られちゃうかな)じゃなく、大人が見ても「これは!」と思うものが必ず見つかる。キャラクターそのものにさして興味がなくても、雑貨として見たときの希少性や、自分が持っているイメージとのギャップに驚き、思わず手にとってしまう。この年になっていまさらとあるキャラクターのファンになっちゃった、ということだって大ありなのだ。

 さらに奥に行くと、CDコーナーを発見。試聴もできるようになっている。CDコーナーはジャンルごとに店内数箇所あって、それぞれの場所で販売されている曲が流れている。聞こえてきた曲のCDをかならず手にとることができるので、「これだ!」と思ったら即移動。「Now Playing」のPOPを目印に、今かかっているCDがチェックできる。ビジュアル的にも雑多だが、耳から入ってくる情報もめまぐるしく変わるしくみだ。ヴィレッジヴァンガードのCDセレクションは、一般的なCDショップとは一線を画す。世間の売れ筋トップ10などとはまるで無縁。ボサノヴァ、ジャズ、ワールドミュージック......、おすすめポイントが手描きで書かれたPOPもそこここにある。このPOPのひとことがまたすごく効いているのだ。友だちに「これいいよ! 聞いてみたら?」と話しかけられているみたいな気軽さとでも言おうか。この店に置いたことがきっかけで広まりメジャーになった、というアーティストもいるぐらい影響力があるというのもうなずける。だからこそリピーターの信頼度はバツグンだし、初めて見る人だって十分ひきつけられるのだろう。

いまどきの複合書店は、情報発信地。

 大型書店や専門書店、世間にはいろいろな書店があるが、このヴィレッジヴァンガードは「複合書店」という類に入る。CDや雑貨、文房具、コスメ、キッチン用品まで、本だけでなくさまざまなジャンルの商品が並んでいる、「複合的」な書店。子どもは、書店であるという認識はないようだが、三方の壁は基本的に本棚。もちろんこの本も、書店にかならずあるとは思えない、ラインナップのおもしろさとPOPの魅力が活かされた本ばかりだ。

 ここにいて楽しいというのはモノに囲まれることに幸せを感じるからかもしれない。昭和の生き残りと言われようとかまわない。コタツにみかん、片手にテレビのリモコン、新聞、振り返ればポットに急須、みたいなやつ。スッキリしたシンプルな部屋もいいけど、なんだかくすぐったい、そんな感覚が根っこにあるからかな。整然として洗練されたショップもいいけど、掘り出し物を見つけるヴィレッジヴァンガードは、私には別ものだ。ほら、駄菓子やさんだってそうだったじゃない? 所狭しと並んだ商品を、ものすごい集中力で見て回った子ども時代を思い出す。そこで自分のお気に入りをみつけると、忘れられないくらいの快感で、その発見が思いがけないものであればあるほど、また次への期待が高まる。
 主婦って忙しくて時間がないけれど、ここにくると何か新しいモノ、コトに出会える気がする。好きなものは自分で探す、というのも、なんだかイマドキじゃない? 帰り際まで「まだなにかあるんじゃないか」と後ろ髪をひかれるこの気持ちが忘れられないから、ヴィレッジヴァンガードに私の足は向かうのだ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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