日経メッセ > リテールテックJAPAN > 連載コラム > 今どき主婦のShopウォッチ > 第81回 遊びながら働く・交わるヨロコビを感じる! いろんな活動を生み出すシステム「かえっこ」

連載コラム

第81回 遊びながら働く・交わるヨロコビを感じる! いろんな活動を生み出すシステム「かえっこ」

[ 2010年9月6日 ]

 秋葉原といえば、電気街、外国人観光客、AKB48、いや、メイドカフェか。最先端の家電やパソコン、通信、オーディオ機器を売る店に、掲げられた色とりどりの看板。とにかく街全体が「売る気」と「買う気」にあふれている。
 そんな商売っ気たっぷりの街の中心部からほんの少しだけ離れたところに、秋葉原気質(?)とはかけ離れたちょっとユニークな"お店"があるのでご紹介しよう。

都会のオアシスのよう! ぽっかりとあらわれた憩いの場

 秋葉原、中央通りから一本入ったところに、中学校跡地を利用して設置された「アーツ千代田3331」という大型アートセンターがある。都会の喧騒と隣あわせなのに、ここだけまるで違う雰囲気だ。秋葉原の高層ビル群や人ごみを抜けてきたからだろうか、建物前面に敷かれた芝生がやけにまぶしい。芝生部分は練成公園といい、かつて中学校のプールがあったのだそうだ。ベンチもあっておよそ秋葉原のにぎやかさとは縁遠い感じがする。公園には人がまばらで、かえっこの旗がぱたぱたと音をたてて出迎えてくれる。

 目指す「かえるステーション」は、この「アーツ千代田3331」1階に常設されている。ここは、「かえるポイント」という世界共通の子ども通貨を使用し、いらなくなったおもちゃを交換して遊ぶ場所だ。子どもたちは、持ってきたおもちゃと引き換えにしたり、ワークショップに参加したり、お手伝いをしたりすることでかえるポイントを手にする。もらった(稼いだ?)ポイントで他のおもちゃを交換したり、オークションで好きなおもちゃをせり落としたりもできるのだ。

ビビッドに彩られたスペースが語るものは、いらなくなった「モノ」の意味

 かえっこ事務局の壁はとてもカラフル。赤、青、緑、黄色......色とりどりで子ども心をくすぐる。しかしよく見るとその壁は、おもちゃが詰まった棚。ファーストフード店で子ども向けのセットを買うとついてくるおまけがほとんどだ。これも、ああこれも見たことがある、うちにもある。そんなおもちゃが色別、種類別に分けられ、透明な棚にぎっしり入っているのだ。これだけ集まると壮観だなあ、と感心する反面、この何十倍、何百倍もの同じおもちゃが日本全国の子どもたちにわたり、壊れたり捨てられたりしていくことを考えるとなんだか複雑。家の中でころがっているおもちゃを見るのとは違う。この「いらなくなった」おもちゃたちが何かを語りかけているように思えてならない。

 おっと、棚のおもちゃに圧倒されていてはいけない。あちらには巨大な怪獣が! と近づくと、それは青いおもちゃを集めてつくられた藤浩志氏のアート作品だ。一つひとつがおもちゃのパーツ。でも遠くから見ると迫力満点のトイ・ザウルス。ばらばらにしたらただのガラクタなのに、こうして作品となると立派なものだ。怪獣のほかにも、男の子が見たら憧れ度200%な機械もどきのオブジェや、同じおもちゃをつなげただけの飾りなど、ガラクタアートがたくさんおいてあった。これがみんな、いらなくなったおもちゃなんだ......。最近は「工作の材料がないから」といってすぐに100円ショップに走る子どもが多いっていうけど、なんかそれって間違ってる。ここで見て触れて、わが息子もそう感じたに違いない。

ワークショップでポイントゲット! 強制じゃない「お手伝い」って楽しい!

 この日は、2か月に1度のワークショップの日。かえるポイントを稼げて、使える日だ。会場には親子連れが何組も来ていて、おもちゃを選んだり、ワークショップに参加したりと思い思いに楽しんでいた。
 とりあえずかえるポイントを集めなきゃ! と、まずは受付に。家でずっとホコリをかぶっていたおもちゃを出し、カードにスタンプを押してもらった。使っていないおもちゃだったので結構なポイントがもらえて、子どもはニヤリとご満悦。気をよくしてワークショップへ向かう。あ、断っておくけどこの「かえっこ」、別に子どもだけしか参加できないわけじゃあない。参加資格には「子どもの心をもった人なら誰でも」と書いてある。えへへ、私だっていいんじゃない。子どもだけ楽しませるわけにはいかないもん。

 まずは工作コーナー。「遊んだらかえるポイントがもらえる」というもの。壊れたおもちゃをホットボンドでつなぎあわせて、自由に形づくる。もちろん作ったものはお持ち帰りOK。これで夏休みの作品を作ったらみんなの注目の的だろうな。画用紙や角材など、決まりきったものしか与えられない図工の時間とは大違いだ。くっつけるだけでも工夫を凝らさないといけない。不規則な形のガラクタが、小さな手を困らせる。......ガラクタって手ごわいんだな。

 おとなりのワークショップは「ぬいぐるみから綿を出す仕事」。手伝うとかえるポイントがもらえるのだ。係の人が背中を切ってくれたぬいぐるみから、中の綿を取り出すというもの。そんな体験は初めての息子、夢中になって綿を出してはポイントをもらっていた。何たって、手伝えばポイントがもらえるのだから、張り切らないわけがない。
 ところでぬいぐるみといっても、つくりがいろいろ。ビーズが入っていたり、スポンジが入っていたり......。それに、ぬいぐるみの顔やからだを裏から見たことなんてないよね? クマの頭ってこうしてできている、腕はこうやってついている。そんなことを子どもが触って感じているのがよくわかる。綿出しの仕事という共通点があるから、係の人と話をするのもスムーズだ。子どもがすうっとその場に溶け込んでいるのが印象的だった。ちなみに綿を出したぬいぐるみたちは、つなぎあわせてカーペットとなるらしい。くたびれたぬいぐるみも、まだまだ使い道があるのね。
 ほかにも、本を読んで感想を書いたり、受付を手伝ったり、風船で飛ばす作品を作ったりと、いくつものワークショップがあった。どれもこれも、触って、考えて、モノが最後まで無駄にならないことを感じたり、その場ごとに会話がうまれたりするワークショップだった。

役に立つといいことがある! 働くって楽しいんだ! 交流するっておもしろい!

 さて、待ちに待ったオークション。ここまでがんばって集めたポイントはおもちゃと交換もできるが、ちょっとイケてるおもちゃはオークションにかけられて、子どもたち、もとい、子どもの心を持った人ならだれでも、手持ちのポイントを使ってせり落とすことができるのだ。
 「3ポイントからはじめます」「5ポイント!」「7ポイント!」「10ポイント!」「......10ポイント以上出す人はいませんか? では、10ポイントで」という具合に落札される。これはとても楽しい。見てるだけでも十分楽しい。子どもたちももちろん夢中。「もっとがんばってお手伝いして、かえるポイントをためなきゃ!」と、意欲まんまんだった。

 この「かえっこ」、全国でワークショップが開催されるそうで、内容も地域それぞれだとか。こうして地元で子どもたちが集まって、おもちゃや会話や仕事のしかた、いろんなものを「とりかえっこ」することで、新しい接点がうまれることは間違いない。自分でやりたいものを見つけて自主的な動きができたら、その子自身もまわりの人も活性化する。ポイントを集めたいがためにチャレンジしてみたら意外とおもしろかった、それでも立派な発見じゃない? 
 働くヨロコビ、地域とのつながり......。これってビジネスの原点だよね。あのガラクタはただのディスプレイじゃない。ガラクタをどう活用していくかがキーなんだっていうことを強烈に訴えている。そんなことを頭じゃ絶対に考えない子どもだからこそ、何かが生まれるんだよね。子どもと一緒に「かえっこ」で大いに学び、大いに体験して、地域をもっと盛り上げよう!

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

バックナンバー

PAGE TOP