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連載コラム

第88回 いちど行ったら、白黒のツートンカラーが心に常駐する!? 心のオアシス「ぱんだ珈琲店」

[ 2011年4月6日 ]

 ことのはじまりはツイッター。たまたま見かけたタイムラインに飛び込んできた、パンダのラテアート写真だった。「なにこれっ!! かわいい!!」とまあ私はくぎづけになってしまい、そのラテが出てくる店をネットで調べまくった。見つけたのは、ラテアートの達人の店、ではなく、店中パンダなコーヒーショップ。なんか、かわいくない? パンダだらけの店なんて、とても放っておけないじゃない? とにもかくにも行ってみることにした。パンダグッズを喜ぶかどうか、ぎりぎりな年齢の息子を連れて......。

中央線の下町、メインストリート沿いにちょこんとぶらさがった、パンダの看板

 吉祥寺や中野に比べて、街のイメージ色があまり濃くない、阿佐ヶ谷。下町っぽく落ち着いてる街だ。決して「阿佐ヶ谷へショッピングに行こう」なんて思うようなところではない。そんな阿佐ヶ谷の、けやき並木を数分歩いたところに、見えてきた見えてきた! 丸い、パンダの看板! なんともいえないほのぼの感だ。
 店は階段を上った2階らしく、階段の上り口には黒板のインフォメーションボードが置いてあった。チョークで「ぱんだ珈琲店」と書かれたこのボードには、メニューやお知らせ、隅っこには手描きパンダのイラストが。描きなれたふうのその「ゆるさ」が愛らしい。一歩下がって店と思しき2階を見上げると、白黒の物体が見える。ああ、パンダだ(笑)!

 店の立地を考えたら、2階より1階のほうが物件的にイケてるんだろうけど、この店に限ってはちがう気がする。だって、通りから丸見えじゃワクワク感がなくなっちゃうじゃない? パンダの看板だけを頼りに狭くて急な階段をのぼってると、カフェへの期待感はアップするし、なんだかひみつの隠れ家に向かってるみたいなキモチになるもの。
階段をのぼりきると、正面にパンダの木製看板。いかにも手作りという風合いがほほえましい。コーヒーカップを持つパンダの、デフォルメした手に思わず笑ってしまった。

仲間意識がうまれる! コンパクトな空間と、あふれるパンダグッズ

 さて、扉をあけ、店内へ進んだ私。こういうとき、店に入ったらまず店員さんを探すものなのだが、この日の私は、おそらく中に入ってから口をぽかんと開けていたのだと思う。「何名さまですか?」と聞かれてハッとわれに返った。「ああはい、2名です」。案内された席に向かいながらも、白黒づくしなパンダ風景が視界に飛び込んでくる。
 店内はさほど広くない。座席も20席ほどで、端から端まで声が届くくらい小ぢんまりしたつくりだ。パンダの愛らしさを共有するにはちょうどいいんじゃない? だって、ひみつの隠れ家は広くちゃいけないもの、ね。

 とにもかくにも席につく。やっと落ち着いてまわりの観察ができる、と、テーブルにあるパンダの置きものを見つめて思わずにんまりした。店内には、あそこにもここにも、ありとあらゆるパンダがいる。飾り棚に置いてある、コーヒー豆でかたどったパンダの顔の「作品」、パンダの鍋つかみ。パンダ柄の生地にぬいぐるみ、パンダの小物(大物も!?)。壁にはなんと、ぱんだ珈琲店オリジナルマーク入りの扇風機まで! 世の中にはこんなにいろいろなパンダグッズがあるのか......。聞けばオーナーが買ったものだけでなく、お客さんが持ってきてくれたものもあるというではないか。まるでパンダグッズの展示場のようだ!

 おっと、忘れそうだが、ここは珈琲店。お茶を飲むところだ。私はホットココアを注文した。「なんか、なごむねえー。」気がつけば、息子の表情がいつもよりやわらかい。他のお客さんも、なんだかほんわかしている感じがする。うっかり目が合ってもまちがいなく笑顔で返せる自信がある(笑)。それどころか「かわいいですよねこの店」なんて声をかけてしまいそうな、ね!
 そのとき「リーン」何かが鳴った。昔の黒電話のような音。店内、一斉にその音がする方向を振り向いた。......音を鳴らしているのは、パンダの電話ではないか。あちこちから「鳴ってるよ!」「使えるんだ!」というひそひそ声がする。スタッフがその電話を取ったあとも「すごいねー」と、皆でパンダ電話の余韻にひたる。
 なんだろう、この連帯感は。私は毎日パンダを求めているわけじゃないし、パンダグッズがむっちゃ好きだからこの店にきた、というわけでもない。あきらかにこの店の雰囲気、このパンダたちが、私も含め、今ここにいる客を見えない絆で結びつけてるのだ。

ココロも気持ちもとろけそう! ふわふわパンダのラテアート

 注文したホットココアが私の前に到着した。息子と2人「おおおー」とカップをのぞきこむ。それは、それは、とても見事なパンダのラテアート。私のために描いてくれたパンダだ! パンダの顔っていろいろあるけど、この店のパンダは、目玉を描かない。目ヂカラまるでなし、のこの画風、なんともいえないゆるさだ。これが、テーブルに運ばれてきた瞬間、客は骨抜きになる。子どものころ、上野動物園でパンダを見たときの感動がカタチを変えて攻めてくるような......。
 ちなみに息子が頼んだアイスココアは、この店で焼いた「ぱんだクッキー」つき。子どもだからか、スプーンまでパンダだった!

 さて、私はこのホットココアを飲まねばならない。でも飲みたくない。冷めてしまうかもというギリギリまで目で堪能してから、ラテアートを崩し、パンダとお別れ......しつつ、おいしくココアをいただいたのだった。

パンダグッズで、ほんわか感のお持ち帰り。「また行きたい!」を思い出させるバーチャルアプローチ

 この数十分で、ちょっとしたテーマパークと同じ興奮を味わった私。こうなると、楽しい時間を少しでもカタチに残したいのが女の性ってものだ(なんて夫には理解してもらえないだろうけど)。幸い、この店にディスプレイされているパンダグッズは、箸置きからお弁当箱、食器、スプーン、シールにキーホルダーなど、販売されているものがたくさんある。それも、エコバッグやTシャツなど、オリジナルグッズまで売っているのだ。私は「ぱんだ飴」を買って帰ることにした。飴を手に、店をあとにしながら「また来たい!」と、心から思った。
 ぱんだ珈琲店は、お店のサイトにブログがある。ミクシィにはコミュニティがあって、そこではオーナーとお客さんとの交流もある。一度行ってファンになった人は、心の片隅に常駐してしまったほんわか感が忘れられずに、ここにまた足を向ける。そんな図式が目にうかぶ。
 この店に私が行った少しあとに、未曾有の災害、東北地方太平洋沖地震が起こった。被災地の方々のことを考えると、本当に心が痛い。避難生活、これからの復興、大変なことだと思う。こんなとき、いや、こんなときじゃなくても、人はパンダに癒されるのではないか。なぜにパンダ、というのが単にオーナーの好みだったとしても、それをこういうカタチで店にしたという目のつけどころはすばらしい。
 前から見ても後ろから見ても、底なしに愛らしいパンダ。パンダには、人をなごませる力がある。いつもじゃなくていい、ときどきふっと思い出し、会いに行く。そして無条件に幸せなひとときを過ごせる。この店も、パンダも、これからずっとそんな存在でありつづけるのだろう。毎日はしりまわる主婦にとってはこのうえない"憩いの空間"だ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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