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連載コラム

第89回 ママたちの夢をかなえる温かみとおもしろみのあるショップ 授乳服専門店「モーハウス」

[ 2011年5月9日 ]

ぱっと目を引く「おっぱいオブジェ」が圧巻!

 表参道駅から渋谷に向かって青山通りをおおよそ5分ほど歩いていたところ、青山学院大学の向かい側で、不思議なものを見つけた。間口の狭い店の店外のディスプレイ。アクリルや毛糸などさまざまな素材を使っていて、とてもおしゃれでPOPな色づかいなのだが、うーん、なにかを彷彿とさせるよ、これ! この盛り上がりって......そう、おっぱい! おっぱいがずらっと並んでいるように見えるんだけど~~~~。
青山通りだよ、ここ! 国連ビルもすぐ裏に建ってるよ! いいのかっ? こんなにおっぱいを展示しちゃって。
 と驚きつつ、間口のわりに奥行きのある(いわゆるうなぎの寝床?)店内をのぞいてみた。シンプルでおしゃれな洋服が並んでいるが、洋服を売る店にしては照明が薄暗い印象。そして、なんといっても特徴的なのは、天井が布張りになっていて、しかもその布も壁紙のようにぴたっと壁にくっつけるのではなく、たるみをつくってあるのだ。なんだかとても手作り感にあふれていて、ぬくもりを感じる。ここの社長が17年前の「BRUTUS」で紹介されたほどの個性的な家の持ち主だというのもうなずけるではないか。店内に入ると、ちょうどテントの中に入ったような感じ。モンゴルの住居「パオ」もこんな感じじゃなかったっけ? 
 店内の壁面や床面には、温かみのあるタッチの絵が描かれている。とくにレジ前の床面に大きく描かれた黄色いヒヨコ。この絵がとてもいい。「これから大きくなっていくヒヨコ」の絵が、未来ある子どもたちというイメージにとてもぴったりくるのだ。

子宮をイメージした内装が、心地よく落ち着ける空間を演出

 その独特な天井の造りや、薄暗い照明のため、ここにいるとなんだか妙に落ち着く。この落ち着く感じはなぜなんだろう、と思っていたら、店内のスタッフさんが教えてくれた。「この内装は、子宮をイメージしているんです」......子宮!? なるほど。たしかにそうだ! このゆったり、すっぽり包まれる感じって、子宮内のイメージだ(いや、子宮内のことは覚えていませんが、あくまでイメージ!)。
 試着室も同じ雰囲気で作られていて、一見、遊牧民のテントのようだ。いったん中に入ってしまうと、あまりの居心地のよさに出てきたくなくなるほど。それくらい落ち着ける空間なのだ。

ママたちを応援する商品、情報がいっぱい!

 外にはおっぱいがいっぱい! 中に入ると子宮のイメージっていったい?  ここはなんの店なのかというと......。「モーハウス」という授乳服の専門店なのだ。
 「授乳服」とは、「自分の胸を人目にさらさずに、赤ちゃんに授乳できる特殊なつくりの服」のことだ。うちの下の子(現小2)が乳児のころにはもうかなり普及してきていたが、こんな専門店が青山の超一等地にあるとは!
 「モーハウス」の授乳服は、じつにセンスがいい。言われなければ「授乳服」だなんて気づかないくらい、普通にハイセンスな服がそこには並んでいる。シンプルなデザインや色づかいのものほとんどだが、中には十分、パーティーなどにも着ていけそうなデザインもある。
 商品だけではない。モーハウスに置かれているソファやベビーベッドなどは、角のとがっていない、丸みを帯びたデザインのもので、万が一子どもがぶつかってもけがなどしないようにというやさしさに満ちている。

 そして、店の入口の脇には、ウォールポケットがあり、そこには「母乳育児」や「助産院」「子育てセミナー」「子育て向きの住宅」など、子育て中のママたちに有益な情報のリーフレットがさしてある。今の時代、こういった情報は、インターネットでちょちょいと検索すれば見つけられるものではあるが、こうしてふとしたところで目にすることも、まだ多いだろう。ウォールポケットから少し店の奥に入ると、低い位置に本棚もあり、ここにも子育て関連の書籍が並んでいる。店の奥にあるベビーベッドには赤ちゃんを寝かせることもできるそうなので、思いがけずここで赤ちゃんが長くお昼寝してくれたら、ちょっと本でも読みながらくつろぐこともできそうだ。いたるところに、ママたちに対するこの店のやさしさを感じる。

 

販売員も「子連れOK」! ハンデをアドバンテージに変える店

 この日、店内では、小さな赤ちゃんを連れた若いお母さんが、店のスタッフさんと向き合って座ってずっとお話をされていた。商品の説明を受けるにしてはちょっと雰囲気が違うな、と思っていたら、なんとそれは販売員募集に応募してきた方の面接だったのだ。面接に子連れ? それも、スリングに入れて抱っこしながら? 子育て中ママが働くことには驚かない私だが、「子連れ面接」には、さすがにちょっと驚いた。しかし、これがこの「モーハウス」の、もう1つの特徴なのだ。

 モーハウスでは、乳児連れで働くお母さんを積極的に採用している。子連れで出勤して、子どもを抱っこしながら働くという働き方を推奨しているのだ。かなり小さい乳児のうちからでもよい。もちろん、乳児でなくなってからも、子どもと一緒にそのままショップで働く人もいれば、預け先を見つけて単身で働く人もいる。昭和の時代には考えられない、子育てママのための職場ではないか。

 たしかに、この店の商品を購入するのは、小さな子どものいるママだ。だったら、同じくらいの子どものいる同世代の女性こそ、頼りになる販売員になる資質を備えているのは間違いない。子どもを抱っこしながらの接客する販売員の言葉は、説得力があり、信頼感や安心感を与えることができる。「子連れ」であることがハンデではなく、ここではアドバンテージなのだ。「小さい子ども連れ」だからこそ歓迎される職場、なんてめったにない。が、それがここにはある。

 


 自分の子育て中に、「あったらいいのに......」と思ったものを、次々に作ってきたのがキャリア・マムだと思っている。ママ達が輝ける場、ママになっても自分でいられる場をできるだけ作ってきたつもりだ。「モーハウス」も、きっと同じ思いをもった方たちがやっている店なのだろう、とビンビン感じた。
 店の外観、内装、扱っている商品、そして雇用の仕方。すべてが、「ママとして生きること」を応援している店だと主張している。こういう店が、東京渋谷のど真ん中のこの場所でやっていけていることに、日本も捨てたもんじゃないな、とうれしくなった。
 うちだって負けていられない! ママたちが輝ける明日のために、「あったらいいな」を実現し続けていかなくちゃね!

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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