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連載コラム

第93回 「昔ながら」に味わいがある盛岡市肴町の街並みには、地元への愛とセンスがあった!

[ 2011年9月5日 ]

 東日本大震災から、もうすぐ半年になる。「がんばれ、東北キャンペーン」というわけではないが、この半年間で、比較的東北には行く機会があった。
 本コラムでも、つい先だって青森を取り上げたばかりだが、今回は盛岡だ。盛岡は城下町でもあり、岩手の中心地。この夏に私用で盛岡に立ち寄ったので、そのときに見つけた盛岡の素敵な場所を紹介したい。

このまま保存したくなる。「肴町」という街

 盛岡駅から、路線バスに15分くらい乗って行くと、「盛岡市肴町」という街がある。いわゆる昔からの繁華街? そんな感じの街並み。地方都市にはよくある(いや東京にもあるが)アーケードの商店街もあり、それもなんだかとてもなつかしい佇まいだ。
ただ、行ってみて驚いたのが、この「肴町」というごく狭い限られた範囲だけでも、旧家や古い蔵を利用した施設や商店の多いことだった。なんだか、街そのものが保存文化財のような、そんな雰囲気が肴町にはある。
 あとでわかったことなのだが、この肴町は、江戸時代に染物職人や商人がたくさん住んでいた地区なのだそうだ。365メートルもあるというこの商店街もその気運を受け継ぎ、現在に至るまで、盛岡市内のなかでも商人が集まる中心商店街としてゆるぎない地位を担っている。天井のアーケードが、同じ空間にいるというシンパシーをかもし出しているから、道行く人に親近感さえ覚えてしまう。商店街が活発な地域独特のあたたかさだ。

旧家、土蔵利用の建物、施設が立ち並ぶ街

 これは、老人福祉センター 。


なんとも立派な建物ではないか。こちらはそのすぐ近くにある洋品店。



遠目ではとてもそうは見えないのだが、近寄ってみると窓には洋服がディスプレーされていて、そのミスマッチ感がなんとも楽しい。建物の雰囲気そのものの南部鉄器の工房もあり、



のぞいて見ると、美しい鉄器が並んでいる。鉄瓶のほか、灰皿や帽子掛けのような実用品もあり、どれもとても洗練されたデザインだ。
 現在15代目という由緒ある工房らしいが、そう説明されなくても店の造りを見ただけで、歴史と伝統が感じられる。それは、「古い建物」だけがもつオーラとも言えるだろう。この工房のすぐ並びには、土蔵を利用したクラシカルなカフェもある。


これらの建物が徒歩5分以内に隣接しているのだ。

 盛岡は、東日本大震災の被害はそれほど大きくなかったと言うものの、あちこちに爪痕は残っている。それでもこの古い歴史ある建物は、あの規模の地震にもびくともせず健在、なんと頼もしいことだろう。むしろ古い建物ゆえに頑丈だったのかもしれない、とも思う。しかし、感心するのは、こういった建物を壊して新しいビルを建てるのではなく、保持していこうとする地元の人達の心意気であり、センスである。
 このあたりは盛岡駅からすこし離れていることもあり、観光客が押し寄せるような立地ではない。でも、こういう昔ながらの街並みを大切にしているということが、「盛岡」という街の懐の深さのように思えてくる。

国の重要文化財にもなっているクラシカルな元銀行も!

 バス通りに面しているが、前述の肴町から徒歩5分も離れていないところにあるのが、元は第九十銀行本店本館だったという建物を利用している「もりおか啄木・賢治青春館」だ。

 この建物は、1910年に建てられたというから、ちょうど100年が経過しているというところか。ドイツ風ロマネスク様式を取り入れた、当時としては「ハイカラ」な建物だが、現在見ても、レトロなおしゃれ感にあふれている。なんでもこの建物は、国の重要文化財に指定されているのだとか。
 そして、この建物のすぐ近くには、創作料理のレストランもある。

こちらも、江戸末期に建てられた土蔵を利用しているというから、やはり築100年以上という代物だ。盛岡の建築物は、築100年くらいが普通なのか?という気分になるくらい、この界隈には古くて、趣きのある建物が多い。それも街中に、ごく普通に存在しているところがすばらしい。あるところには江戸期の面影が、またあるところには洋風建築が堂々と点在し、まるで時の散歩道だ。つくりものではなく、人々が大切にしてきた「時代」が、そのままの形でうまく共存しているそのさまは、東京から来た私にはとても魅力的だった。

 観光客のために、というのではなく、地域に密着した施設や商店もこういった風情を残している街・盛岡。その魅力に、「絶対にまた来よう!」と思った。個々の店で、趣向をこらすだけではできないこういう街並み自体の魅力づくりは、新興都市には真似できない古くからある都市だけの特権とも言える。昔ながらの建物を、「古くさい前世紀の遺物」にするか、「魅力ある街づくりの起爆剤」にするか、はそこに暮らす人々の感性と工夫にかかっているのだ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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