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連載コラム

第94回 インパクトとおもてなしが女ゴコロを刺激する!「dining&barゴリラキッチン」

[ 2011年10月3日 ]

 横浜駅西口を出てすぐの、「西口五番街」。大型のファッションビルや家電量販店へと続く小ぢんまりとした繁華街だ。車道より歩道の面積のほうが大きくて、車で通ると申し訳ない気分になってしまうエリア。居酒屋、飲食店、カラオケ店......ずっとかわらないこの雑多な雰囲気が、ああ~西口に来たな、と思わせてくれる。
 そんな西口五番街の雰囲気にはいささかそぐわない、かわいらしい雰囲気のお店を見つけた。白木の窓枠に、赤い屋根。海外モノのおしゃれな三輪車に、チョークで描かれたお店の案内。ちょっと、いいじゃない? ......私は吸い寄せられるようにその店に近づいた。が、次の瞬間ぎょっとした。なぜかって、このかわいい店が「dining&barゴリラキッチン」という名前だったからだ。

「不揃い」がいい!とびっきりガーリーなインテリアが、女の子を笑顔にする

 あまりにインパクトがある店名に、一瞬足が止まってしまった私。ゴリラキッチンという店名ならば、中はゴリラグッズであふれているのか? ゴリラ似の店員が一斉に「いらっしゃいませ~」と掛け声をかけてくれるのか? なんて考えながら、こわごわと店内に入ってみた。すると、出迎えてくれたのはゴリラ似の店員......ではなく、さわやかな笑顔のイケメン男性。ほっとして店内を見わたすと、なんてかわいい! 男の子2人のママにはまばゆいばかりの、スーパーポップなインテリアだ。いいのかしら、こんなところに入っちゃって!

 椅子は赤、オレンジ、黄色と、色こそ統一されているけれど、デザインはばらばら。高さもちがう。背もたれがゆったりしているのもあれば、座面がプラスチックなもの、クッション性のあるもの、丸、四角、バラエティーに富んでいる。そしてその不揃いな感じが「自分のため」にあつらえてもらったような気分にさせてくれて、妙な満足感を感じるのだ。それに、どの椅子もみんなかわいく見えるのが不思議。「今度くるときはあっちの席に座ってみたいな」なーんて思うのは私だけじゃないはず。店をはじめるときはきっちりスツールを揃えるのが基本、なんて思っていたけど、そんな常識は吹っ飛んでしまった。

 もちろん、かわいいのは椅子だけではない。窓際の換気扇は真っ赤。カウンター飾り棚の縁も赤のタイル張り。荷物やコートをかけるフックは動きを感じさせるアクティブなデザインで、色は至極カラフル。トイレのドアも赤だ。白い壁、白いテーブルとのコントラストで、ひとつひとつが新鮮さを感じさせ、客の気分をビビッドに盛り上げてくれるのだ。それと、ゴリラキッチンのシンボル? とも言えるカウンター席。なんと、厨房が鉄柵で囲まれている!! 厨房からホールに料理を出すためのトンネルは、ゴリラにエサをやるスペースをイメージしているのだろうか。もちろん奥にゴリラが......いるわけではないが、すでに私のテンションはピークに達してしまった。

 いつも青や黒ばっかりな男の子グッズに囲まれてるけど、私だってホントはこういうかわいいのが好きだ。カラフルに、デコラティブに、見る方向すべてに違ったカタチがあふれてるインテリア。自然と口角があがってウキウキする。自分の中にあった笑顔のモトが引きだされてくる気がするのだ。聞けば、内装はスタッフの手作業だったとか。どうりでオリジナリティーがあって、あたたかみを感じるはずだ。

店のコンセプトでもある「女の子思い」。気配りの理由が異色ネーミングの理由!

 席についた私の前には、赤いハートのコースターの上に置かれたお水。足元には、荷物や上着を置けるカゴ。カゴの中には毛布があり、ひざかけとして使えるよう配慮されている。エアコンが効きすぎたり、ミニスカートやショートパンツで座った時に活躍しそうだ。それにとなりのテーブルを見ると、どうやらここはテーブルチェック方式らしい。座ったまま店員さんにお金を払っている。あれもこれも、なんだか店全体がレディーファーストの雰囲気じゃない?
 メニューの冊子は至ってフツウだが、ゴリラの名がつく料理がいくつかある。どんな料理かというと、ゴリラの好物バナナを使ったりしているようだ。しかしなぜゴリラ? ......私は、注文するときに意を決して聞いてみた。「どうして、ゴリラキッチンっていうんですか?」すると店員さんが、待ってましたとばかりにとある紙を持ってきてくれた。「なんでゴリラキッチンなの?」と題され、その答えが書かれた紙だ。そりゃそうよね。おそらく、こういう質問は日に何度も出てくるにきまってる。
 で、そのネーミングの理由だが、【女性がたくさん来る店をつくろう! かわいい名前もいいけどインパクトがある名前を......。そんなときにオーナーが、テーマパークで女の子に『ゴリラ』と言われた】これが発端だとか。
 なるほど。女性にたくさん来てほしいから女性好みの雰囲気にしたってことか。店内を見回すと、たしかに他のテーブルのお客さんたちも女性同士かカップルばかり。おひとりさまの女の子もいる。やっぱり男性同士だと入りにくいのかと思いきや、店員さんによると「男性の方もいらっしゃいますよ」とのこと。そうだった、あまりの異空間に忘れていたが、ここは横浜駅西口。平日はビジネスマンもランチにくるはずだ。壁の一部にはスクリーンがあり、そこで映像ごしにスポーツ観戦もできるようになっている。「次は女の子を連れて来よう」なんて思う男性客もいるにちがいない。

レディーファーストの仕上げはスタッフ! おもてなしもゴリラ級!?

 もうひとつ、この店で忘れてならないのが、ホールスタッフのフットワークのよさだ。小ぢんまりした店内ですべてのテーブルに気を配り、待たせるときにはひと声かけ、応対もフレンドリー。一緒に食べていたうちの息子が「なんかここの店員さんて知り合いみたいで話しかけやすいね」と言っていたぐらいだから、まちがいない。
 必要な接客だけでなく、気の利いた言葉で客をリラックスさせてくれるのもいいところ。いつもは、ちょっとした用でスタッフを呼ぶくらいならがまんしようかな、と気おくれすることが多い私だけど、この店なら「すみませーん」と堂々と言える。世間話さえしてもいいかも、と思えてしまう。なぜかって、声をかければスタッフが必ず笑顔でこたえてくれるという確信がもてるからだ。たった数十分いるだけなのに、だ。これこそ、究極のレディーファーストではないだろうか。この接客を見た男性も、きっと感じるところがあると思う。

 女の子はこのインテリアとおもてなしに笑顔になって、また来たくなる。ビジネスマンも、次は女の子を連れて来ようと思う。ゴリラそっくりなオーナーが考えた「女の子ごのみ」は、女性が考えるよりはるかに女性向き。このゴリラキッチンに来ると、女の子が女の子らしさをとりもどせる、そんな場所だと思う。インパクトのあるネーミングで客をひきつけ、「女の子思い」でとことんもてなす。驚くことだらけだったけど、忘れられない、リピーターになりたい店だ。

今どき主婦のShopウォッチ
執筆者:堤 香苗

株式会社キャリア・マム代表取締役。1964年、兵庫県神戸市生まれ。早稲田大学第一文学部・演劇専攻卒業。
大学時代よりテレビ、ラジオのパーソナリティー等をつとめ、フリーアナウンサーとして活躍。結婚、出産後、子育ての経験を生かした仕事を志し、1995年4月、育児サークルPAO(キャリア・マムの前身)を設立。その後、ママの社会参加の機会を積極的に創出する活動母体として、「ママの元気と笑顔」を合言葉に、『キャリア・マム』を設立。現在、コーディネーターとして、主婦や育児中の女性、起業を目指す人へのアドバイスや、「女性の起業」「在宅ワーク」「ITビジネス」等のテーマで講演も行う。2007年1月「おしゃべり力〜主婦のホンネが常識を変える!〜」、5月「ヒット商品はこうしてできる!売れるマーケティングのしかけ」を出版。

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