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リテールテックJAPAN 2018 | 2018年3月6日(火)〜9日(金) 東京ビッグサイト

ロンドンバスが「payWave/PayPass」でも乗車可能に!

 毎年11月にロンドンとパリに行き、決済サービスの動向やNFC導入の進捗などを確認しています。11月にパリ開催される展示会"CARTES" にあわせて行程を立てるため、まずロンドンに入り、そこからパリへ移動するという流れが案外都合良く、毎年ほぼ同じ行程を組んでいます
 今年のCartesの内容については本稿の締め切りとの兼ね合いから次回に譲るとして、今回は1年ぶりに来たロンドンの非接触決済サービスの状況をご報告したいと思います。

文・山本 正行(山本国際コンサルタンツ 代表)

ロンドンのpayWave/PayPass導入状況

 1年前に比べ、ロンドン市内にはpayWave/PayPassが使える場所が大幅に増えました。TESCO、M&S(マークスアンドスペンサー)などの大手スーパー、マクドナルドなどの飲食店、カフェなど、チェーン大手の店舗でpayWave/PayPassが利用できるようになりました。
 イギリスの主要銀行が発行するデビットカードやクレジットカードにもpayWave/PayPassが付くようになり、自分では気づかないうちにpayWave/PayPassを持っていた、という人も増えています。

 さらに興味深い出来事は、ロンドン交通局の交通乗車券「オイスター(Oyster)」カードの代わりとしても、payWave/PayPassが使えるようになったことです。
 第1弾はロンドン名物の二階建てバスで、今年の4月から、これまでのオイスターカードに加えてpayWave/PayPassカードでも運賃を払えるようになりました。payWave/PayPassのカードであれば世界中どこで発行されたカードも利用できる、との触れ込みでしたので、今回、私と行程を共にした電子決済研究所の多田羅氏(本コラムのもう1人の著者)が持参したPayPassカードで試してみよう、ということになりました。
 結論は、あっけないほど簡単(かざすだけなので当然ですが)で、全く問題なく運賃を支払い乗車することができました(写真)。
 ところで、本来昨年春に予定されていた本命ともいえるロンドン地下鉄での利用はスタートが遅れています。ロンドン交通局の職員に聞いたところ、少し遅れていて、2014年1月からサービス開始予定とのことでした。
 銀行などが発行するpayWave/PayPassをそのまま交通乗車券で使用できるようにする、というアイディアは画期的ですが、以前から試みられていました。ニューヨークの地下鉄でPayPassを使った実証実験が行われたこともあり、イスタンブールでもpayWave/PayPassに対応したゲートがすでに設置されています。今後、他の都市でも導入される可能性があるでしょう。
 それにしても、ロンドンでは実証実験もなくぶっつけ本番の商用化だったので、本当にうまくいくのだろうか? と私は多少懐疑的に見ていました。しかし、1年遅れとはいえ結果的になんとか始まった状況を見て、今では「payWave/PayPassのこんな利用方法もあったのか」と関心しています。

ロンドン名物のダブルデッカーバス

リーダの外観は以前と変わりませんが、オイスターに加えて、コンタクトレスにも対応しました(写真左のステッカー)

実はあまり使われていないpayWave/PayPass

 利用場所が増え、バスの乗車券としても使えるのであれば、ロンドンでのpayWave/PayPassの利用が順調に伸びているのではいか、と想像が膨らみます。しかし、現実はそうでもないようです。
 イギリスの金融機関などが参加する業界団体「Payments Council」の広報を担当するMark Bowerman氏によれば、「payWave/PayPassカードはまだ認知されていない」と言います。
 実際に、PayWave/PayPassの発行枚数は増えているものの、ショッピングでの利用は進んでいないようです。Mark氏はその理由を2つ挙げています。まず、広告などによる告知が不十分で、一般の人への周知が徹底していないこと。もう1つは現在イギリスで発行されるデビットカード、クレジットカードは100%チップ化(接触型IC)され、カード利用の際には必ずPINを打ち込む習慣が消費者に浸透していることから、今さら「PINが不要」と言われても消費者がかえって混乱するだけ、と指摘します。イギリスではカード決済時に利用者自らがカードを決済端末の接触ICリーダーに差し込む習慣なので、せっかくのpayWave/PayPass付きカードをうっかり接触型リーダーの方に差し込んでしまい、接触型IC(EMV)で決済してしまった、という話も実際にあるようです。
 とはいえ、Mark氏は「時間はかかるが、認知が広がれば使う人も増えてくるだろう」と希望的な意見も述べており、その可能性は好意的に受け止めているようです。
 これとは別に、今回会ったイギリスの知人の中には、「payWaveカードをカフェでいつも使っている」という人もいました。イギリスにおけるpayWave/PayPassは現状まだ発展途上の状態ですが、利用環境が急速に整いつつあり、更に地下鉄の乗車券としても利用できるようになればその認知は高まり、自然に利用が進むのではないか、と考えています。

スマホでの利用はこれから

 現状、ロンドンでのpayWave/PayPassは全てカード方式で、NFC搭載スマートフォン(NFCスマホ)によるサービスはまだ始まっていません。バークレイズ銀行などがロンドンオリンピック開催にあわせて実証実験を行いましたが、一般向けのサービスはまだこれからという状況です。
 お隣のフランスではpayWave/PayPassをNFCスマホから始め、モバイル決済の基幹サービスにしたいという意見を良く聞きますが、イギリスは「カードありき」の伝統的な枠組みの上に、非接触サービスを付加価値として追加したかたちです。この違いに新しいもの好きなフランス人と、保守的なイギリス人という両国の対照的なお国柄を感じます。
 実用化はまだこれからという状況ですが、スマホでのNFC利用は単にpayWave/PayPassが使えるというだけでなく、店舗で商品タグにかざして購入商品をスマホに登録して決済する、などのいくつかのサービスを組み合わせたソリューションが多く見られるようになりました。
 ロンドンのように街中に非接触決済の利用環境が広がるのにつれて、スマホをかざす文化がゆるやかに広がっていくのかもしれません。

電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ
執筆者:電子決済研究所/山本国際コンサルタンツ

多田羅 政和 (写真左、Masakazu Tatara)
株式会社 電子決済研究所 代表取締役社長。
カードビジネス専門誌『カード・ウェーブ』編集長、『モバイルメディア・マガジン』編集長を歴任した後、(株)シーメディア・ITビジネス研究所でマーケット調査やコンサルティングに従事、『電子決済総覧』『ICカード総覧』等の研究レポートの編集・執筆にも携わった。2009年7月に独立し、電子決済(クレジットカード、eコマース、電子マネー・プリペイドカードなど)、ICカード技術、生体認証技術、CRM・マーケティング(ポイントカード、電子クーポンなど)、ITセキュリティ(3Dセキュア、PCI DSSなど)といった、いわゆるICT全般に関連したビジネスを手がける調査・研究機関として、電子決済研究所を設立。2011年6月に同事業を法人化した。近著(編集協力)に『NFC総覧2010-2011』『電子決済総覧2011-2012』(iResearch Japan発行)、『NFC最前線2012』(日経BP社)などがある。


山本 正行 (写真右、Masayuki Yamamoto)
山本国際コンサルタンツ 代表。
主に決済サービス事業の企画、戦略立案を専門とするコンサルタントとして、銀行、クレジットカード関連会社、通信キャリア、鉄道会社などの事業化、サービス企画などを支援。
山本国際コンサルタンツは、電子決済、ICカード、モバイル、認証、CRM・マーケティング、ITセキュリティなどの分野で活躍するコンサルタントから構成される組合組織(2009年7月開業)。電子決済・ICカード・モバイル等ICT関連ビジネスの事業支援をはじめ、マーケティング支援、コンサルティング、教育、調査、外資系企業の日本参入に関するビジネスモデル調査・支援(非会計分野)、日本企業の海外進出、海外向け製品販売の支援などのサービスを提供する。
他に、山本コマースITオフィス事業主、関東学院大学経済学部経営学科講師、株式会社 電子決済研究所 取締役、(一社)電波産業会 高度無線通信研究委員会特別委員(モバイルコマース担当)も務める。講演、執筆多数。近著に『カード決済業務のすべて〜ペイメントサービスの仕組みとルール〜』(一般社団法人 金融財政事情研究会)など。

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