リテールテックJAPAN

リテールテックJAPAN 2020 | 2020年3月3日(火)〜6日(金) 幕張メッセ
展示会トップ

西友CEOスティーブ・デイカスさん――新PB、じっくり進化(トップの戦略)

刷新後に売上高15%増

 米ウォルマート・ストアーズ傘下の西友が健闘している。牛肉の安売りやプライベートブランド(PB=自主企画)商品の刷新など低価格戦略が消費者に浸透してきたためだ。ただ、世界最大の小売業の成長力としては物足りない。西友のスティーブ・デイカス最高経営責任者(CEO)に日本市場に対する認識や攻め方を聞いた。(聞き手は編集委員 中村直文)

国際調達網通じ

新たな経験提供

 ――米ウォルマート・ストアーズが日本進出を表明してから11年。市場に対する見方や姿勢はどう変わりましたか。

 「2012年12月期の既存店売上高は前の期比0・5%増と4期連続でプラスとなりました。市場や競合企業よりも良い数字だったのではないでしょうか。目標ほどではありませんが、難しい状況でこの数字を達成できたのは喜ばしいことです」

 「ウォルマートには学習する組織というDNAが埋め込まれています。ミスをしないからではなく、ミスから学んでいることが今までの成功の理由だと思います。そういうバックボーンがあるから、昨年は220億ドル成長し、総売上高が4600億ドルに達しました」

 「それは日本でも同じことです。従来のPBは顧客の要望に応え切れていなかったし、成長力も欠いていた。そこで『みなさまのお墨付き』『きほんのき』という2つのPBを立ち上げました。ブランドとはただのラベルではありません。顧客から品質を認められた、立ち位置がしっかりしたものです」

 ――新PBの出足は。

 「サンプルテストで70%以上の人が、5段階評価のうち上の2段階のレベルにある、と答えないと商品化できません。こうした厳しいテストを経た結果、実績は良好です。前のPBに比べ販売数量は20%、売上高も15%伸びています。年末にはお墨付きを400品目、きほんのきを100品目に増やしたい。もっとやりたい気持ちもありますが、品質を確実に高めるには時間もかかるので、じっくり進めます」

 ――日本市場はやはり特殊でしょうか。

 「どの市場も難しいですよ。アジアや欧州、北米でも働きましたが、その地域にしかない課題があります。小売りは非常にローカルな産業です。ウォルマート全体で見ると、国際事業の25%がウォルマートの看板ですが、残りは日本なら西友、英国ならアズダと、それぞれの国になじみのある看板で営業しています。グローバルなブランドとローカルなブランドのバランスをとることで、顧客に低価格で高品質で楽しみのある商品が提供できます」

 「例えば日本の市場にはないユニークな商品をグローバルな調達網を通して販売することもあります。例を挙げると、ブラウニーというケーキの材料です。ニーズに応じた商品ではなく、新しい経験を提供することで市場を掘り起こせます」

ネットスーパー

拡大戦略で重視

 ――取引先と販売・在庫情報や生産計画情報まで共有する「リテールリンク」はどこまで広がっていますか。

 「メジャーな企業の取引先は680社以上になり、これをさらに広げようとしています。双方のビジネスに対する理解が進むので実績が上がります。在庫であれ補充であれ、物流であれ、世界各国でシステムプロセスのアイデアが毎日生まれ、『毎日が安売り』を実現し、世界中でシェアが広がる。このアイデア力が競争力の源泉です」

 ――日本メーカーにとって、西友と組むことは海外進出するチャンスになるのでしょうか。

 「ウォルマートは常にウィン・ウィンの関係を求めます。我々だけが成功しようと考えたら、絶対に成功しません。個人的にもこの点を重視しており、海外のバイヤーに日本のメーカーを紹介するなど海外進出へのサポートには力を入れています。実際、それで成功した事例もあります」

 ――拡大戦略は今後、どう進めますか。

 「低価格戦略以外で重視するのはネットスーパーです。昨年にディー・エヌ・エー(DeNA)の支援でサイトを刷新した結果、売り上げが50%伸びています。今後は店舗からの配送ではなく、日本全国にセンターから配送できる形にします。消費者の購買行動は大きく変わっています。これまで生鮮品は直接見ないと買いませんでしたが、今やネットで購入するケースが増えています」

 「新規出店は昨年の7店に対して今年は5店を予定しています。改装も昨年並みの40店で実施します。改装のモデルはリヴィン光が丘店(東京・練馬)です。テナントと自営ゾーンがコンセプト別に消費者に分かりやすく配置されているのが特徴で、売上高、利益ともに伸びています」

 ――ウォルマートは日本の事業に熱心に取り組んでいると思います。それでもM&A(合併・買収)が進まないのは、いまだに信用されていないからと思いますが。

 「M&Aについてのコメントは控えさせていただきます。我々は日本には長期的にコミットしていきます。地道な活動で顧客から信頼を得ていくことが我々の使命です。その結果、しかるべきM&Aが起きるかもしれません」

業績データから

客数の回復が課題に

 西友の2012年12月期は低価格競争が激化した昨夏以降の客数の落ち込みが響き、既存店売上高が10〜12月期まで2四半期連続で前年水準を割り込んだ。それでも通期ではプラスを確保し、4期連続の増収となった。

 同社はエブリデー・ロー・プライス(毎日安売り)と呼ぶ低価格販売が戦略の柱。昨年6月に大規模値下げを打ち出し、スーパーの値下げ合戦の口火を切った。ただ、単価は12年10〜12月が前年同期比0・3%増。客数減にも歯止めがかかっていない。12年12月に刷新したPBでは低価格に加え品質も訴求。昨年、3年ぶりに再開した新規出店や既存店の改装にも13年中は引き続き取り組む。独自の販促に加え、これら商品・店舗戦略の着実な進展で成長に弾みをつけたいところだ。

(名古屋和希)

 Steve Dacus 1960年カリフォルニア州生まれ。米サンディエゴ州立大卒。2007年にウォルマート・ストアーズ・インク入社。10年に西友の最高執行責任者(COO)に就き、11年から現職。10年以上の日本滞在歴があり、ファーストリテイリングの執行役員も務めた。趣味は読書と街の散策を兼ねたジョギング。

関連情報一覧

メニュー

同時開催の展示会+ 展示会一覧を見る