リテールテックJAPAN

リテールテックJAPAN 2020 | 2020年3月3日(火)〜6日(金) 幕張メッセ
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家電の価格、刻々と変化、ダイナミックプライシング、ビックカメラが全店に「電子棚札」、ネット通販勢に対抗。

 家電量販店大手のビックカメラは2020年度末をめどに、需給状況や競合価格などによって価格を柔軟に変える「ダイナミックプライシング」を全店舗で導入する。米アマゾン・ドット・コムなどネット勢に対抗するのが目的だ。価格をデジタル表示する電子棚札を全商品に設置し、店頭価格を本部から一括して変更できるようにする。サービス業で先行したダイナミックプライシングが、大手小売りにも広がってきた。

 ビックカメラの直営全41店舗で電子棚札を導入し、需給などに応じて価格を頻繁に動かす「ダイナミックプライシング」を始める。2月に開店した町田店(東京都町田市)で家電製品など約10万点に電子棚札を設置し、効果を検証してきた。費用対効果が見込めると判断し、21年8月期までに新店を含む全店の全商品に取り付ける方針だ。

本部で価格操作

 白・黒・赤の3色を表現できる電子ペーパーを採用し、商品名や価格を表示する。通信機能を内蔵し、本部から操作すれば店頭に並ぶ各商品の価格をいつでも変更できる。旧来の紙の値札では、価格を変更するたびに店舗従業員が印刷しなおし、1枚ずつ手作業で入れ替える必要があった。競合店の値下げなどに素早く対抗できるようになる。同社の18年8月期の連結売上高は8440億円。大手小売りが全店で導入するのは珍しい。

 電子ペーパーは液晶ディスプレーとは異なり、表示を切り替えるときのみ電力を消費するため、小型電池でも5〜7年もつ。初期費用は一般的に1枚1000円前後とされるが、長期的な競争力強化には欠かせないと判断した。ビックカメラは19年8月期にIT(情報技術)分野へ100億円以上を投じる計画だ。

 背景にあるのが、アマゾンなどの台頭だ。ネット通販サイトでは商品価格や在庫数量、直近の売れ行きなどのデータをシステムで一括管理し、柔軟に価格を変更できる。

 競合サイトの価格をプログラムで自動取得すれば「競合より常に10円安い販売価格を維持」「在庫のだぶつき解消のため不人気商品は1時間10円ずつ値下げ」といった価格の自動設定も可能。米国版アマゾンでは1日の価格変更が250万回に上るとの調査もある。日本では楽天が4月、出店事業者向けに需給予測に応じた自動値付けの機能提供を始めた。

人手で対応限界

 ビックカメラもこうした動きに追随し、価格を積極的に動かす。実店舗と連動するネット通販サイトの価格変更回数は過去1年で2倍に増えた。だが日中に複数回変わる商品もあり、「人手で対応するのは物理的に限界だ」(同社関係者)。

 現場の店員は売り場で数百〜数千点の商品をそれぞれ担当しており、「価格変更だけで作業時間の3割を費やす日もある」(同社店員)。電子棚札を導入すれば現場の負担を軽減でき、接客に集中できるようになる。

 購買行動の変化も導入を後押しする。高価な家電の場合、実物を確認した後で購入する消費者は多い。だがその場で決断せず、店頭でスマートフォンを片手にネット通販の価格と比べるケースが増えている。競合に対抗して店頭価格を機動的に変更できなければ、機会損失を招く恐れがある。

 同様の取り組みは、小売業界全体に広がる。競合のノジマは、作業の効率化を目的に電子棚札を全店の約9割の商品に設置している。ドラッグストア大手のツルハホールディングスも2月、一部店舗で電子棚札を試験導入し、食品の値下げでどれだけ需要が変動するかを検証した。

 電子棚札は店員の負荷軽減だけでなく、実店舗でダイナミックプライシングを始める際に必要な技術だ。導入企業が増えるのは間違いない。

 一方で、あらゆる商品の店頭価格がネット通販に近づくと、店員や不動産のコストを負担する大手小売りにとっては逆風だ。利益の押し下げ要因にもなりかねない。ていねいな接客など、値段以外の魅力を高める取り組みが欠かせない。

(池下祐磨、藤村広平)

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