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中高年、消費の主役――「若者市場」で存在感(シニアが拓く)

[ 2012年9月28日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

コンビニ ネット通販 海外旅行

 消費市場でシニアを中心とした中高年の存在感が高まっている。大手コンビニエンスストアでは50代以上の来店客数が近く20代以下を上回る見通し。インターネット通販やスポーツクラブなど若者が主役だった市場の利用者数も中高年層が逆転する例が目立つ。60歳以上の消費支出は2011年に100兆円を超えたとみられる。企業はマーケティングの転換を迫られている。

 セブン―イレブン・ジャパンの調査では、11年の50歳以上の来店客比率は31%と、09年比3ポイント上昇した。29歳以下は33%だが震災後にコンビニをスーパー代わりに使う中高年層が増えており、「早期に50代以上が20代以下を抜きそう」という。同社は少量の総菜や和菓子などを拡充。冷蔵和菓子の購入者の4割は50代以上で、12年の売上高は前年比2倍で推移する。

 ネット通販では中高年の注文が増加中だ。ヤフーの6月のネット通販売上高に占める50代以上の割合は14・5%で前年同月比0・9ポイント上昇。14・2%の20代を逆転した。

 サービス消費もアクティブなシニアが主役となりつつある。セントラルスポーツでは12年3月期のフィットネス会員数に占める60代以上だけでも33%。50代以上でみると、51・1%と初めて過半を占めた。海外旅行では60歳以上の割合が11年で19・1%で、5年前から3ポイント上昇。男性客でみると19・5%で29歳以下(17・7%)を上回る。

 企業の看板商品も入れ替わり始めた。ユニ・チャームは12年3月期に大人用紙おむつの売上高が前期比10%伸びて800億円強となり、乳幼児用を初めて上回ったもようだ。眼鏡大手の三城ホールディングスでは同期に老眼などに用いられる遠近両用レンズの販売額シェアが約52%に達した。

 第一生命経済研究所の試算では、約1500兆円の個人金融資産の6割は60歳以上の世代が保有。支出額は11年に101兆円と、個人消費全体の44%を占め、「今後は50%に近づく」(熊野英生首席エコノミスト)。

企業の成長力左右

 メーカーや小売りなど消費財企業のマーケティングは長らく「家族」と「若者」が二大ターゲットだった。双方の取り込みを中心に成長してきた自動車が代表例だ。だが急速な少子高齢化でシニア市場が最大の競争舞台になりつつある。

 「NHKの紅白歌合戦を見るように、家族そろって消費するのが日本経済の柱だった」。久留米大学商学部の塚崎公義教授は指摘する。ファミリーレストランや総合スーパーのように、家族需要をつかむ企業が1990年代まで国内消費を引っ張った。時代を先取りする若者向けのマーケティングも企業の成長力を裏打ちした時代があった。ソニーやパルコなど先端的なイメージでブランド力を上げてきた。

 だが人口構成は大きく変わり、家族・若者重視では成長は見えない。博報堂新しい大人文化研究所の阪本節郎所長は「既にシニア層が成長をけん引する商品分野もある」と話す。価格より質を重視するのが特徴で、プレミアムビールやハイブリッド車などがその例だ。

 消費財企業がシニアマーケティングを洗練させることは、長期的にグローバル市場で勝つ材料ともなる。アジアなどの新興市場もいずれ、高齢化する。世界食品大手、ネスレ(スイス)は日本で高齢者向けの流動食や栄養補助食品を伸ばしており、「事業を海外にフィードバックしたい」(ネスレ日本)。国の活力を維持する上で少子高齢化の歯止めは急務だが、シニア市場の特徴を商品・サービスの開発に生かすことが企業の競争力を高めるのは間違いない。(編集委員 中村直文)

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