日経メッセ > リテールテックJAPAN > ニュース > ヨドバシカメラ社長藤沢昭和さん――経営は規模より「もうけ」(トップの戦略)

日経の紙面から

ヨドバシカメラ社長藤沢昭和さん――経営は規模より「もうけ」(トップの戦略)

[ 2013年4月14日 / 日経MJ(流通新聞) ]

ネット対応、客の声聞き

 駅前に大型店を構え、きめ細かい品ぞろえとサービスで存在感を見せるヨドバシカメラ。リアル店舗志向に見えながらもインターネット販売へも素早く対応する。「売り上げより利益」を掲げ、商品の単品管理などインフラ力を磨いてきた藤沢昭和社長のぶれない経営は、家電量販店に吹く逆風を巧みにしのいでいるようだ。(聞き手は編集委員 中村直文)

少量・多品種の

高回転経営を

 ――薄型テレビの販売不振など家電量販を巡る経営環境は厳しいです。

 「本当にテレビの購入客が少なくなりましたね。新製品が出てもあっという間に値段が下がります。ですが、これも時代の流れなのでついて行かないといけません。売り場をよく見ると、時計やカメラ、ヘッドホン、携帯型の音楽機器などサイズは変わっても、なくなっているものはありません」

 「冷蔵庫は大型化し、洗濯機は多機能化しています。最近ではLGエレクトロニクス・ジャパンが四角いロボット掃除機を発売しましたが、隅々まで掃除ができ、音も静か。知恵のあるメーカーの商品は売れています。ですから一定の売り場スペースが必要なことも変わりません」

 ――米アマゾン・ドット・コムなどネットとの競合も激化しています。

 「口では(アマゾンに対抗するなど)色々言っていますが、まともにぶつかるつもりはありません。ネットでは買い物客の要望に応じた品ぞろえをするだけです。コミックや雑誌、文房具など幅広く、1日に全社で3万個以上出荷しています。できるだけ単純明快に、即日・指定日でお届けすることが強みです」

 「今や店に来て商品を選び、家でネット注文する顧客の動きを全部防ぐことなんてできません。ただ当社の場合、店内のバーコードにスマートフォン(スマホ)をかざせば、アマゾンや他社の売価が見られます。ですから価格面では即応できます」

 ――経営全体ではどのように競争力を高めていきますか。

 「少量・多品種・高回転ですよ。少ない在庫でいかに回転をあげるかが重要です。利益が10%しか取れなくても、3回転させれば利益率20%の商品が1回転するより効率がいいわけです。当社はコンピューターによる単品管理の導入が早く、何百万品目を、全部、自動発注しています。理想は年間20回転、月に約2回転ですね」

 ――国内の店舗網は完成しつつあるのですか。

 「もうちょっとですね。どうしても我々の場合、出店地は電車でも車でも来店できる駅前とか交通の要衝になります。多少、投資額は大きくなりますが、投資額が大きいほど見返りが大きいものです。投資額が小さい所で店をたくさん出しても仕方ありません」

 ――土地取得に1010億円を投じた大阪・梅田への出店はインパクトが大きかったです。

 「当時(出店が決まった1997年)の大阪は梅田より南に位置する心斎橋や難波、日本橋の方が中心でした。しかし将来は交通の要衝である梅田に買い物客が集中する可能性が強いと判断しました。ちょうど国鉄清算事業団がJR大阪駅前の一等地を売却するというので、思い切って入札に参加しました」

 ――三越やセゾングループの入札額は700億円台。圧倒しました。

 「当時、上新電機にカメラを供給しており、大阪の市場の深さは分かっていました。多少割高になりましたが、将来の布石にもなるとの思いがありました。本当は900億円台だったのですが、9は(苦なので)縁起が良くない。そこで1000億円にしようと決めたのですが、開発担当者が『社長、それじゃ面白くない。会社の電話番号(1010)と同じにしましょう』と言うので、10億円乗せて1010億円にしたのです」

 「それ以来、清算事業団の売却案件は仙台市、東京・秋葉原と相次ぎ手に入れました。駅近くの一等地というのは希少性があり、入札なら高い値段を付ければ買えますから」

あと2・3年で

次世代に接ぎ木

 ――来年春の消費増税の影響はどう見ていますか。

 「今年の年末商戦から駆け込み需要が出てくるでしょうね。エアコンなどは買い替え需要もあり、相当動きそうです。日本の将来をみると、消費税が15%ぐらいになっても仕方ないでしょう。ただしその見返りとして、所得税減税とか法人税減税とかもやっていただきたい。頑張った人は頑張っただけのメリットがある社会にしていかないとおかしくなります」

 ――ヨドバシカメラの未来像をどう描いていますか。

 「自分も77歳。一線でやるのはあと2、3年ですかね。木で言うと、次の代に向け根っこが張れるように接ぎ木をうまくしたいです。後は引き継いだ人がそれをどうするかです。ただ自分なりの方向性とか考え方は、子育てのように言い続けなければいけない」

 「特に経営は付加価値経営をしっかりやっていくように口やかましく伝えています。売り上げじゃおまんま食えないんだと。いくらもうかったかが会社の価値という考えは不動です」

業績データから

減益でも利益率高く

 ヨドバシカメラの2012年3月期の売上高は前期比4・1%減の6714億円、経常利益は12・9%減の531億円だった。家電エコポイント制度の終了や地上デジタル放送移行に伴う特需の反動にさらされたが、7・9%の経常利益率は家電量販大手では群を抜く。新店は10年秋のマルチメディア京都(京都市)が最後で、現在の店舗数は21。規模拡大より利益重視の姿勢を貫く。

 平均で年商300億円を超す駅前巨艦店が力の源泉。原則、所有物件のため、初期投資はかさむが賃料に悩むことはない。「世界に例がない都市型大型店のビジネスモデル」(ヤマダ電機の山田昇会長)とも評される土台に、400億円を超える規模に育ったネット通販をどう根づかせるか。上場せず独自路線を歩むヨドバシ流経営の進化が試される。

(天野豊文)

 ふじさわ・てるかず 1935年(昭10年)長野県生まれ。60年に東京・渋谷で藤沢写真商会を創業。67年に東京・新宿に淀橋写真商会を設立し、74年に現社名に変更。カメラを手に夫人同伴で散歩や旅行に出るのが楽しみ。名前の読みの由来については「出生を届けた祖父が『照』の字の点を打ち忘れ、フリガナはきちんと書いた」。

ニュースの最新記事

PAGE TOP