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「後追い」逆転も得意技――焦らず、外部と作り込み(セブンイレブン40年)

[ 2013年11月13日 / 日経MJ(流通新聞) ]

コーヒー 抽出機2年かけ

カット野菜 低温ライン新設

「客の変化」掘り下げ

 セブン―イレブン・ジャパンが20日、設立40周年を迎える。常にコンビニエンスストア業界のトップを走り続けているように見えるが、実はライバルを「後追い」した商品・サービスも少なくない。いったん後手に回った企業が巻き返すのは容易ではないが、外部企業とも連携して一気に抜き去る。社内外に行き渡るチーム力が強さの源泉だ。(関連記事11面に)

 1杯100円のいれたてコーヒー「セブンカフェ」。今年1月の本格導入からわずか8カ月で全1万6千店への導入が完了した。2013年度の販売見込みは4億5千万杯。並み居るカフェチェーンはもちろん、これまでトップだった日本マクドナルドの約3億杯をも上回り、日本で最もコーヒーを売る企業になる。

 コンビニ各社がカフェブームなどを受けて相次いでいれたてコーヒーの販売を始めるなか、セブンイレブンは出遅れ、大手の中で「最後発組」とも言える存在だった。

 ただ、鎌田靖取締役・商品本部長は「他社の後ろ姿は目に入ったが、焦りはなかった」と振り返る。出遅れた分野であっても、メーカーなどと組んだチームマーチャンダイジング(MD)で巻き返してきた経験があったからだ。

200社の味を分析

 まず声をかけたのは味の素ゼネラルフーヅ(AGF)。外食など200社のコーヒーの味を徹底分析。飲みやすさと飲み応えの最適なバランスを見つけた。AGFからはそれまでセブンイレブンが一部店舗で扱ってきたエスプレッソ式ではなく、ドリップ式の方が日本人には好まれるという示唆も受けた。

 次はマシン。いれたてコーヒー自販機などで実績を持つ富士電機とタッグを組んだ。店頭で邪魔にならない大きさで一杯ずつ45秒で抽出。従来は1時間かかったメンテナンスは5分でできる。導入費用も1台数十万円程度と4分の1にするなど多くの目標を掲げ、完成までに2年をかけた。

 満を持して本格導入すると、先行する他社を一気に抜き去った。いまでは導入店舗数だけでなく、1日1店舗当たりの平均販売数も約90杯とローソンの約60杯、サークルKサンクスの約40杯を上回る。

 導入が急速に進んだのは低廉な費用やメンテナンスの容易さが大きい。緊急時に調達しやすいように、部品はすべて国産。故障時には富士電機の技術者が直ちに駆けつけるバックアップ体制も敷く。機会ロスに加えて、来店客からのクレームなどを懸念するフランチャイズチェーン(FC)オーナーらの「安心感」にもつながっている。

 「家庭で母親がにぎるもの」だったおにぎりの販売。公共料金の受け取り代行など今やコンビニで当たり前になった商品やサービスを先駆けて提供してきたセブンイレブン。だが、コーヒーのように「後追い」となったケースも少なくない。

 グループで販売するプライベートブランド(PB=自主企画)「セブンプレミアム」の発売は07年と、イオンより30年以上遅い。

 ATMも1999年に当時のエーエム・ピーエム・ジャパンが業界に先駆けて導入した。セブンは2年後に銀行業そのものに参入。今ではほぼ全店に備えるうえ、複数台設置する店もあり、最も身近なATMの一つになっている。

「他社を見るな」

 「ニーズの変化を受け止め、徹底的に対応する。『他社を見るな。お客の変化だけを見ろ』と言っている」。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は話す。言葉通り、ひとたびチャンスと見れば徹底的に掘り下げるチーム力が大きな強みだ。

 各社が力を入れるチケット販売。ここでもローソンが先行していた。セブンイレブンは02年に店頭情報端末「セブンナビ」を撤去。06年にはぴあと提携を解消するなど苦戦が続いた。

 ブレークスルーは富士ゼロックスと開発したマルチコピー機。住民票の写しなども提供できる機械でチケットを販売。ぴあとも09年12月に2割出資して復縁し、新たな「チーム」を作った。

 その後は音楽系チケットの販売が伸びてきたことなどをとらえて、興行に関連した弁当を開発するといった新たな取り組みも進めて猛追。13年度のチケット取扱額(発券のみを含む)は1400億円と、1200億円程度のローソンを上回る見通しだ。

 いまから巻き返しを狙うのはローソンなどに先行を許しているカット野菜。11月下旬にPB「セブンプレミアム」として新商品を発売する。メーカー4社の計7工場に専用ラインを新たに設け、鮮度が落ちないよう工場内の温度をセ氏4度以下に保つ。「インフラにこだわった分だけ出遅れた」(鎌田取締役)ものの、一気に追い上げようとしている。

(小泉裕之)

スマホで注文 出先でゲット

ネット・店融合、先駆けへ

新事業モデル

 「インターネットの時代だからこそ、リアルで圧倒的な店舗網を持つ我々が成功する。その事業モデルをつくる」。セブン&アイ・ホールディングスの鈴木敏文会長は「次の10年」の新たな成長軸を、ネットとリアルの融合に据える。

 この40年間でコンビニエンスストアは消費者の「生活インフラ」とも言える存在になった。高齢化やネットの普及など環境が大きく変わるなか、セブンイレブンは圧倒的な店舗網を生かし、先頭に立って新たなビジネスモデルを切り開こうとしている。

 その一つがネットとリアルを組み合わせた「オムニチャネル」だ。グループ店舗で売る商品もネットのみで扱う商品も、スマートフォン(スマホ)でまとめて在庫情報を確認し、自宅や勤務先の近くといった都合の良いセブンイレブンで受け取る。欲しい弁当や飲料なども一緒に届ける。

 「実験」は始まっている。西武池袋本店(東京・豊島)の化粧品売り場「イケセイキレイステーション」。客の肌の状態を解析して最適な化粧品を薦める。事前予約の6割がネット経由。うち8割が同店で購入するが、2回目に買う人の65%はセブンイレブンでの受け取りを選ぶという。

 もちろん、オムニチャネルを本当に実現するためのハードルは高い。リアルとネットの在庫情報を一元化するための膨大なシステム投資や、顧客の購買動向の精緻な分析などが必要だ。フランチャイズチェーン(FC)ビジネスとして、ネット経由の収益を加盟店とどう分配するかなども大きな課題だ。

 それでも鈴木会長は「1万6千店でグループ内の商品を受け取ったり、配達したりする。この仕組みができれば、コンビニが飽和になることはありえない」と言い切る。

 アジアなど海外シフトを鮮明にするコンビニが多いなか、あくまで国内にこだわるセブンイレブン。50周年に向けて新たな挑戦が始まる。

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