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新米店長POSが支える、ヴィレッジヴァンガード、脱「感性頼み」(ケーススタディー)

[ 2015年9月16日 / 日経産業新聞 ]

本や雑貨を取り扱うヴィレッジヴァンガードコーポレーションが
販売戦略を変え始めている。

従来は品ぞろえなど店長に100%権限を持たせていたが、
多店舗展開による人材不足などから売れ残りが目立つようになった。

その反省からPOS(販売時点情報管理)レジを導入し、
売れ筋を分析するようにした結果、
2015年5月期は既存店売上高が6年ぶりに前年を超えた。

 「200店を超えたあたりから、今までのやり方が機能しなくなった」。白川篤典社長は主力の雑貨店「ヴィレッジヴァンガード」の変調についてこう振り返る。

 ヴィレッジヴァンガードの最大の特長は、店ごとに大きく異なる商品の陳列や品ぞろえにある。店内には従業員による手書きの商品説明(ポップ)がふんだんに盛り込まれている。商品の仕入れや陳列は、各店長に100%権限を持たせていた。

経験足りず悪循環
商品の投入に遅れ

 しかし、店舗数が増えるにつれて起きたのが、経験の浅い店長の増加という問題だ。かつては各店長が強いこだわりを持って「他と同じ店にしたくない」という一心を持てていたからこそ、品ぞろえが良い意味でばらついた。その結果としてリスク分散や店舗の差異化につながっていた。しかし、経験の浅い人が増えてくると、自身の経験不足を補おうと「リスクをとって新しい商品を入れる傾向が薄れた」(白川社長)。他店と品ぞろえが似てしまい、個性が薄れてしまった。

 さらに経験の浅い店長は、過去に実績があったものを積極的に仕入れるようになった。しかし、こうした商品は、売れた当時がピークだった事例ばかりで、大量に仕入れたタイミングで売り上げが減少していく傾向になりがちだった。結果として、収益を上げられない店長がリスクをとりづらくなるという、悪循環が起こっていた。

 打開策として見いだしたのが、POSレジの導入による新しい販売体制の構築だ。各店舗で何が売れているかをデータとして蓄積し、本社で分析することで、将来の売り上げ予測を立てて仕入れを行う。自分の経験と勘を元に仕入れて販売してきたヴィレッジヴァンガードにとって、正反対のやり方といえる。

 導入にあたり、白川社長は「伝統として店長は1%でも権限を奪われようものなら嫌がるかと思った」というが、フタをあけてみると反対は想定ほど出なかったという。13年6月からPOSを使いはじめ、15年5月期には本格的にPOSに基づいた仕入れを始めた。

 それでも、POSを全面的に導入すれば、これまでの強みであった個性ある、飽きのこない売り場がなくなることを白川社長は懸念していた。むやみにPOSデータを駆使することのないよう、工夫したのが、店舗の区分けに基づいたPOSの活用だ。

 まず、全店舗について上から(1)路面店(2)ファッションビル店(3)大型ショッピングセンター(SC)店(4)小型SC・地方店に区分した。(1)〜(2)の店舗は最先端の流行に対する感度が高く、他の店舗に置いていないような商品を求める人が訪れるため、「多品種少量」の品ぞろえが求められる。一方、(3)〜(4)は家族連れなどが訪れて「ヴィレッジヴァンガードならではの定番品を求めるお客さんが多い」(井上博水・経営企画部部長)。

定番品の需要予測
相性の良さを発揮

 POSとの相性を発揮するのは、(3)〜(4)の店舗だ。「定番品」を求める傾向が強いため、需要予測がある程度立てやすい。加えて店長には経験の浅い人が就く例が多い。実際、ここにきて大きく復調したのは(3)〜(4)の店舗といい、相性の良さが証明された。

 一方で、(1)〜(2)の店舗では新鮮な商品を求める人が多く訪れるため、POSを生かした仕入れ販売は効果が見込みづらい。このため、次のヒット商品を探る、一種のアンテナショップとして、POSデータはむやみに生かさないようにした。(1)に近い店舗ほど、店長の権限は大部分残すようにした。

 現在、POSデータに基づいて仕入れ販売している商品は、アイテム数で1割ほどを占めている。「本部だけで需要予測するのは危険で、トレンドをしっかり把握できるのは売り場」(白川社長)との考え方を崩すことはない。当面はこのバランス感覚を保つ方針だ。全商品でPOSデータの蓄積を終え、初めて本格的に反映させた2015年5月期は、既存店売上高が3%増と上々の立ち上がりとなった。16年5月期も、既存店売上高は前年超えを見込む。

不振業態はテコ入れ

 白川篤典社長はPOSを生かした本や雑貨の販売事業の回復に手応えを感じている。「近いうちに安定した利益をあげられるようになる」と見通しを語るが、そのためには、エスニック衣料販売など、その他の事業の収益力向上が不可欠だ。

 2016年5月期は連結最終損益が7億4700万円の赤字に転落する見通しだ。不振が続くエスニック衣料業態「チチカカ」で今までにない規模での不採算店の閉鎖を実施し、固定資産除却損がかさむほか、減損損失を計上するためだ。実際、円安で仕入れコストが上昇するなどして、同業態の採算は年々悪化していた。

 主力の本や雑貨販売事業が回復してきた今のうちから不振業態をなくせるか。同社の大胆な改革は続きそうだ。(名古屋支社 竹内宏介)

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