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日経の紙面から

アークス社長横山清さん――「引き分け組」とも組む、1兆円へ、リスクいとわず(トップに聞く)

[ 2016年4月4日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 増税延期論が出てくるほど個人消費がぱっとしない。地方スーパーの大同団結を掲げ、イオンなどに対抗してきたアークスの横山清社長は「勝ち組だけでなく、引き分け組も声をかけたい」と老いてますます盛んだ。

(聞き手は日経MJ編集長 中村直文)

現状踏まえて
新たな知恵を

 ――量販品の消費不振は深刻。ダイエーの流通革命時代に比べ、変化が激しいです。

 「革命というのは大きな体制が崩壊して変化が起きることを言うけど、今のように毎日革命なら革命じゃない。偶然にも先日、50年以上前にベストセラーになった『流通革命』の著者、林周二先生を訪ねました」

 「先生に『流通革命について、今はどう思われているのですか』と質問したところ、『これは半世紀以上も前に書いたもの。今ごろそんなことを言うなんて、あなた方も古いね。今は混とんの中に色々な発見があるのだから、もう少し頭使いなさい』と怒られました」

 「先生は商売はどんなところに着眼するかっていうのが大事だと言っていました。それで私も気づきました。年齢格差や所得格差、地域格差が強まったと言われますが、これは被害者意識みたいなもの。流通革命なんて終わったんだから、現状を踏まえ、知恵を働かせないといけません」

 ――今の着眼点とは。

 「子会社の道北アークス(旭川市)が2015年5月から北海道北部に、人口3千〜4千人の小商圏向け小型食品スーパー『ダ*マルシェ』を始めました。人口が少なくても運営できるよう、売り場面積は400平方メートル規模とスーパーより小さい。ですが、コンビニエンスストアの約2倍で、品ぞろえも生鮮品や総菜を中心に約8千とコンビニの約2倍です」

 ――囲碁でコンピューターに負けた棋士が『囲碁には機械にはない美学がある』と言いました。小売業も美学とか情緒の世界に入りますか。

 「絶対そういう世界に入っていくんですよ。『下山の思想』で、登山はひたすら上を目指すけど、下山は上から見ながら慎重にやっていかなければならない。もう登山のような右肩上がりは望めない。収益や成長ばかり言っていたら、世の中終わりです。情緒を大切しながら戦うことです」

地方スーパー
団結して勝つ

 ――増税延期論が出てきましたね。

 「前の延期と同じように、今回も選挙に勝つために延期するなら問題だと思います。私自身、増税も軽減税率も反対ですが、財政面では増税せざるを得ない。増税も軽減税率も決まったことなんだから、対応するしかない。ただ軽減税率導入のためのシステム投資をいきなりやれと言われても、余裕のない企業には無理。増税をきっかけに、業界再編に拍車がかかるでしょう。多少リスクがあっても積極的に声をかけていきたい」

 ――M&A(合併・買収)は加速しますか。

 「『高い志を持った盟友と結ぶ新幹線』というのを、年頭所感の一部に入れました。これまでは勝ち組としか手を組まないという方針でしたが、社内から『このままだとイオンなどにすべて持っていかれる。負け組はだめでも、引き分け組なら手を組みましょう』という声も出てきました」

 「売上高5000億円を16年2月期に達成したので、これから目指すのは1兆円です。そのためにも新幹線のようにスピードアップして、企業連携を進めていく考えです。我々には外資や国内の巨大資本など仮想敵があって、それに対してCGCで団結するのが中堅スーパーの生きる道だ。北関東以北で我々のグループを1兆円とすれば、首都圏で1兆円、西日本で1兆円、合計3兆円の食品スーパーの市場で競い合うことになる」

 ――八ケ岳連峰をさらに磨くわけですね。

 「1月に小樽・余市地区を中心にスーパーチェーン シガを展開する会社から食品スーパー事業を買収しました。ほぼ未出店だった同地区で店舗網を強化しました。ただ、やっかいなのはバーチャルとリアルの問題です。アマゾンが食品を売るとか、ドラッグストアが食品を売るとか、新たな勢力とも対抗していかなければならない」

 ――3月26日に北海道新幹線が開業しました。影響はどうですか。

 「15年11月に新函館北斗駅に近い七飯町の店舗を移転拡大しました。大都市でも通用する大型店に転換し、売り場面積を3倍の約2180平方メートルに広げました。七飯町には新幹線の函館総合車両基地ができ、函館のベッドタウンとして人口も増えています。新幹線開業に伴い10億円規模の投資をした企業はあまりありませんが、ニュータウンの拡大をにらみ、今から手を打ちました」

 ――後継者についてはどうお考えですか。

 「スーパーの事業会社だけで8社あり、後継者は育っています。強い個性をもって、下を抑えるといった我々の時代の経営はもう通用しないかもしれない。次の世代は事業会社の結束をさらに強めるような経営者が必要でしょう」

業績データから
合併重ね地盤強固に

 アークスの2016年2月期の連結売上高は前期比7%増の5030億円と初めて5000億円を突破したようだ。営業利益は10%増の140億円になったようで、14年9月に買収したベルプラス(盛岡市)が利益貢献した。同社は3月に同じ盛岡市の傘下スーパー、ジョイスと合併してベルジョイスに。北海道東部でも傘下スーパーが合併し、10社から8社に再編した。文字通りの「八ケ岳連峰経営」で、北海道と北東北の地盤は盤石に見える。

 見方を変えると、両地域ともアークスを中心に寡占化が進み、新たな買収を仕掛ける余地は乏しい。南東北以南ではアークスの傘下に入ることに利点を感じるスーパーは少なく、有力な買収候補がなかなか上がってこない。勝ち組と手を組む路線を修正し、広く声をかけていく。(横山雄太郎)

 よこやま・きよし

 1960年(昭35年)北海道大学水産卒、海産物商社の野原産業入社。61年同社小売部門のダイマルスーパーに移り、85年社長。合併や買収で社名を89年にラルズ、2002年にアークスに変更。一貫して社長を務める。趣味は読書。北海道出身。80歳。

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