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「デジタル」ユニクロ、セール頼み、脱却挑む、過去の成功体験が壁、秋にも通販刷新、翌日お届け、セミオーダー目玉。

[ 2016年6月22日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 ユニクロを運営するファーストリテイリングが、インターネットで注文した商品の翌日配送を全国で今秋にも始める。「ネット通販比率30%以上」の目標に向け、様々な策を打つが、これまで人気を支えたのは「機能性の高い商品を安く買える」こと。飽和感のある国内で「セール頼み」が強まった販売形態から脱却し、消費者が「自分に合った商品を選べる」ような「デジタルユニクロ」を目指す。

 東京都江東区有明。レインボーブリッジを台場側に渡ると、左手に敷地面積3万6千平方メートル強の巨大な倉庫が現れる。建物上部にはユニクロと大和ハウス工業のロゴマーク。両社で建てる新しい物流倉庫だ。2017年にも本格稼働する。

 この倉庫こそファストリが進める「デジタル化」の象徴的存在だ。首都圏で当日配送するための拠点となる。この倉庫のために米コンサルティング大手、アクセンチュアと編み出したシステムを既存の拠点に前倒しで応用し、今秋にも従来は2〜5日程度かかった配送を全国規模で最短翌日に短縮する見通しだ。

 「対応したコンテンツをつくらなければならない」。柳井正会長兼社長は強調する。器や仕組みができても、売るモノがなければ消費者は振り向かない。「その対応が、秋になる」(柳井氏)。秋に予定しているのはネット通販の大型刷新だ。詳細は明らかになっていないが、柳井氏の発言から方向性は見えてきた。

 「全商品がセミオーダーシャツのような感覚になる」(柳井氏)。ユニクロは15年8月、セミオーダー感覚で選べるシャツの販売を始めた。首丈や襟丈など1183通りの商品から自分に合ったものを選ぶ仕組みで、発売4カ月ほどで計画比2倍の売り上げを記録した。「以前は微妙に長さが気になったが、今はぴったりのものが買える」(30代男性)と好評だ。

 1月にはジャケットも2112通りから選べるようにした。同素材のパンツと組み合わせてスーツとして使えると売り込み、2月から全国118店舗で採寸を始めた。いずれの商品も膨大な在庫を必要とするため、実店舗すべてに物理的に並べるのは不可能。注文はネットで受け、倉庫でまとめて在庫を管理することで全国販売が可能になった。ジャケットの袖直しも倉庫で手掛ける。

 有明の「倉庫」ではワンフロア5千坪(1万6500平方メートル)に商品開発や情報発信・収集の担当部署も入る。「伝わらない情報は購買につながらない」(柳井氏)。社内の壁を崩し、顧客に個別対応できる仕組みと情報発信のあり方を探る。

 手間をかけても消費者一人ひとりが自分に合った商品を選べる「利便性」を優先する――。ファストリが目指す「デジタルユニクロ」は同一商品を大量に生産・販売する「機能性×低価格」の従来のユニクロと異なる。

 ユニクロは従来、素材まで踏み込んで商品を開発し、消費者をつかんできた。フリースや機能性肌着「ヒートテック」など高い機能の商品がけん引。「欧州などで評価が高いのも機能性商品」(コンサルティング会社)だ。なぜ手間をかけて違う道を探るのか。

 まず機能でリードできる時間が短くなった。ヒートテック同様に発熱・保温をうたう商品を総合スーパー(GMS)大手やカジュアル大手が投入。ユニクロより安い商品も出てきた。「着てみたら同じ感じだった。昨年冬から他社で買っている」(30代女性)との声も上がる。

 今後も機能性を追い求めていくが、09年の軽くて暖かい「ウルトラライトダウン」以降、大ヒットした機能性の高い商品は登場していない。

 販売力を支えた800店を超えた国内店舗数もここ数年は横ばいだ。「機能性で断トツ」というイメージが薄れ、売り上げを伸ばそうとすれば価格競争になる。週4日間と半分以上も割引販売をするなど「セール頼み」に陥った。

 「ニュース性のあるものは全く問題なかった。代わり映えのないものでは影響があった」。15年秋冬物で2年連続で実施した値上げが販売に与えた影響についてファストリの岡崎健最高財務責任者(CFO)は今年1月、こう答えた。機能で新しさを打ち出せなかった結果、一部商品の値下げを迫られた。

 過度な価格競争と一線を画すため、「ファッション性」を追求し、ブランド力を高める取り組みも続けている。昨年秋、元エルメスのデザイナーであるクリストフ・ルメール氏とコラボした商品は高いファッション性が評価され、欧州では売り切れとなった。ただ、ブランド全体を押し上げるには至っていない。

 「価格と品質、ファッション性すべてが両立しないといけない時代」(柳井氏)。ファストリはこのほど、ルメール氏をパリの研究開発(R&D)拠点幹部として迎え入れた。「ユニクロ ユー」という新ブランドを秋に立ち上げる。

 有明の大和ハウス、IT(情報技術)分野でのアクセンチュア、商品受け取りでのセブンイレブン。受け取りやすさや物流スピードなどの「利便性」を追い、新しい柱を打ち立てて、店舗とネットを超えた「デジタルユニクロ」で消費者をがっちりつかむ――。

 翌日配送はその一策だが、消費者からは「そんなにすぐに服が必要になることはない」(30代女性)と冷めた声も上がる。ユニクロの成功の歴史が、デジタルユニクロへの最大の壁として立ちはだかっている。

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