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日経の紙面から

J・フロントリテイリング社長山本良一さん――「SIX」が銀座を面白く、百貨店の枠超え革新創る(トップに聞く)

[ 2017年2月12日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 J・フロントリテイリングと森ビル、住友商事、モエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)グループが運営する複合商業施設「GINZA SIX」が4月20日にオープンする。Jフロントの山本良一社長は様々な企業の知見が集まったことで「百貨店を超え、10年、20年先を読んだチャレンジの結集」と意気込む。

(聞き手は日経MJ編集長 中村直文)

 ――建物が完成しましたね。

 「115メートル、90メートルと大きく、形がいい建物です。一方で銀座にはたくさんの小規模な店があります。その良さを殺さないように、のれんが垂れ下がったような外観になっています」

ブランド企業
初出店も多く

 ――旧・松坂屋銀座店はJフロントが運営しても売り上げは伸びませんでした。理由は。

 「開業時は土足で入店できるなど斬新な店だったのです。それが80年たち、革新性が忘れられてしまったのでしょう。(大丸と松坂屋が)合併して色々なことに挑戦したけど、成果は出なかった。銀座はチャレンジしていく街。豊かな暮らしを提案していく環境や雰囲気、ブランドを考えており、百貨店の分類は全く意識していません」

 「ブランドでは240のうち、日本初が11、銀座初が81です。業態を変えているのも65。ブランド企業もこのままではいけないという危機感があるのでしょう。ディオールの場合、地下から4階まで5層も使います」

 ――店作りの中心はJフロントですか。

 「みんなです。運営委員会を発足し、各社がそれぞれのアイデアを持ち込んで話していました。うちが百貨店をやっていたら大して面白くなかったですよ(笑)。例えば森ビルはアートに強く、オープニングで草間弥生さんの作品を吹き抜けから飾ろうというアイデアが出てきました」

 ――Jフロントは巨艦店が少ないです。その弱みが強みになりますか。

 「確かに中規模店が多く、どう生き残ろうかと真剣に考えてきました。逆に松坂屋名古屋店は8万6000平方メートルあるわけです。するとブランドは十分に入っているので南館はヨドバシカメラに貸すという発想が簡単に生まれます」

 ――旧松坂屋の社員は嫌だったでしょうね。

 「そうかもしれませんが、服はいくらでもある。地域にない家電量販店やH&Mを提供した方がいいのではないかと。かつて百貨店は高度成長時代にどんどん婦人服や紳士服が売れ、拡大していった。しかし価値観は変わり、放り出した家電を再び入れてもいいと思います。地域一番店の基準は利益ですよ」

 ――百貨店も時代の先端に行くため、今のような形になったのですが。

 「変化しきれなかった。Jフロントは『くらしのあたらしい幸せを発明する』という方向に進もうとしています。発見や提案と言われても社員の反応は弱いですが、発明というと驚きますから。百貨店の成長期間は50年ですがその延長に成長はない。非連続な成長を描いていかないと次の50年には達しません。そのスタートが銀座です」

 「顧客の多様化は速い。ファッションを決めて外出するとか、車で遊ぼうとかいう人は少なくなっています。それでも、リアルでなければ体験できないことも絶対にあります。それから、人口は減っていきます。それでも増えるものは何かというと不安や不満です。子育ての悩みなどがどんどん増えます。(有料で)顧客に合う色の服を選ぶファッションナビは何カ月先も予約が入っているそうです」

資本利益率は
8%を目指す

 ――Jフロントは新しさと利益を追求するわけですね。

 「やはり投資家は資本効率と資産効率にシビアですよね。少なくとも資本利益率は8%を目指さないとダメです。そこで今年から1店舗ずつの貸借対照表を作ります。賃借物件と自社物件では違いますが、店長には店舗の自己資本利益率(ROE)を上げるために何をするのか求めています」

 「改装時の廃棄物の圧縮や在庫効率、外商の資金回収などが課題になります。従来の売り上げ表示は継続しますが、国際会計基準(IFRS)での業績も示します。同時にガバナンスを強化するため、来年度から指名委員会等設置会社に移行します」

 ――パルコの子会社化から5年です。

 「商品での相乗効果は薄かったですが、開発面では他の百貨店には強みだと思います。例えば開発中の松坂屋上野店についてもすべて百貨店でやれるわけではないですから。心斎橋の案件でもパルコをどう活用するか考えないといけないし。買収時の営業利益は90億円ぐらいでしたが、今は130億円になるので、本来の力を発揮できるようになったと思います」

 ――ニコニコ動画の店とか、理解が難しいでしょう。

 「見に行っていますよ。最近は『君の名は。』カフェも。映画も見ましたよ。1回じゃ分からなかったけど」

 ――あれは10代が最大のターゲットですから。

 「そら、無理や(笑)」

業績データから
訪日客消費の減少響く

 J・フロントリテイリングの2017年2月期の連結売上高は前期比4%減の1兆1170億円、連結営業利益は6%減の450億円になる見通しだ。期初には営業増益と予想していたが、訪日客の落ち込みが想定以上だったことが響く。

 足元では徐々に回復の兆しが見え始めた。訪日客の買い上げ単価下落が一服しつつあることに加え、株価が堅調に推移し、高額品の売り上げが伸びているからだ。

 ただ、懸念材料も多い。中間層の節約志向の高まりと販売チャネルの拡大から主力の衣料品の売り上げが振るわず、先行きも不透明感が強い。Jフロントは「新百貨店モデル」として百貨店事業を軸としながらも、パルコや「プラザ」を傘下に収めてきた。事業会社間の相乗効果をいかに高めるかが重要になる。(豊田健一郎)

 やまもと・りょういち 1973年(昭48年)明大商卒、大丸(現大丸松坂屋百貨店)入社。2003年大丸社長、07年Jフロント取締役、10年大丸松坂屋百貨店社長。13年より現職。神奈川県出身。65歳。

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