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共通ポイント、消える境界、ブロックチェーンで即時交換、デジタルガレージ、安く構築+安全性維持。

[ 2017年3月15日 / 日経産業新聞 ]

 「支払い方法はどうしますか」「TポイントをPonta(ポンタ)に換えますので、それでお願いします」。近い将来、コンビニエンスストアのローソンのレジでこんな会話が交わされるかもしれない。共通ポイント同士をすぐに交換できるサービスを来年にも始めようとする動きがあるのだ。それを生み出すのが仮想通貨の中核技術「ブロックチェーン」だ。

 2月、あるプロジェクトが米サンフランシスコで始まった。異なった種類のポイントなどを即時交換できるサービスの開発だ。1年以内に試作版を投入し、試しに使ってもらいながら改善を重ねる。収益モデルはまだ決まっていないが、交換時に利用者から手数料を徴収して収益を得るといった方法が考えられる。

 このサービスはポイントだけでなく、地方自治体が発行している地域通貨にも応用できるとみている。地域通貨とポイントを交換できるようになれば、地域通貨の使い勝手がよくなり、経済に与える波及効果も大きくなる可能性がある。

現在は数週間

 プロジェクトの中核を担うのがデジタルガレージだ。同社はIT(情報技術)スタートアップ(ベンチャー企業)支援やインターネット広告、オンライン決済などを手掛ける。同社と価格比較サイトのカカクコム、クレジットカードのクレディセゾンの3社が共同研究組織「DG Lab」を立ち上げた。これにデジタルガレージの子会社が出資しているカナダのベンチャー企業、ブロックストリームが加わる。

 すでに共通ポイント同士をネットを通じて交換できるようにはなっている。だが、面倒な手続きが必要なうえ、実際にポイントを交換できるまで数週間かかっていた。消費者の「今すぐ換えたい」というニーズに応えられなかった。

 デジタルガレージはブロックチェーンが問題解決のカギになるとみている。共通ポイント同士をリアルタイムで交換するという複雑なシステムであっても、ブロックチェーンなら安価に構築できる可能性があるからだ。

 ブロックチェーンはネットワークでつながった複数の参加者で取引記録を共有して蓄積する仕組みだ。取引記録をサーバーで一括管理する従来の仕組みでは、システムを構築するのに多額の資金と時間が必要だった。

 ブロックチェーンを使ったシステムでは、サーバーで一括管理する代わりに、すべての参加者のコンピューターが取引記録を共有する。

 コンピューター同士がポイントの増減を記録しあうので、もし、コンピューターの1つがダウンしても、他のコンピューターに同じ記録が残っているため、問題は起きない。サーバーで一括管理するシステムでは、サーバーがダウンしてしまうと、システム全体が稼働しなくなる。ブロックチェーンはセキュリティーの水準を保ちながら、コストを劇的に下げられる可能性がある。

 デジタルガレージの踊契三取締役は「これまで大手のシステム会社に発注すると莫大なコストがかかっていた」としたうえで、「(ブロックチェーンで)この壁を突破できれば、その分を消費者に還元できる」と話す。

 プロジェクトの開発の場所をサンフランシスコに選んだ理由もブロックチェーンにある。

 ブロックストリームはブロックチェーンと関係の深い仮想通貨に関する技術に通じたエンジニアを抱えており、彼らの多くはサンフランシスコにある同社の研究開発拠点にいる。サンフランシスコの近くのシリコンバレーでは、ファイナンス(金融)とテクノロジー(技術)を融合した「フィンテック」の研究開発が盛んだ。

貨幣に近づく

 共通ポイント業界は群雄割拠の時代を迎えている。カルチュア・コンビニエンス・クラブ(CCC)のTポイントと三菱商事系でロイヤリティマーケティング(東京・渋谷)が運営するポンタ、楽天の「楽天スーパーポイント」の3陣営がしのぎを削る構図だった。2015年12月にNTTドコモが「dポイント」を開始、イオンも16年6月に「WAONポイント」で加わった。

 野村総合研究所によると、家電量販店や携帯電話といった国内11業界の主要企業が発行したポイントとマイレージの発行額は14年度に約8500億円に達した。クレジットカードやネット通販、コンビニ業界などでポイント発行が増えるとみており、20年度には1兆円を超えると予測する。

 だが、デジタルガレージなどがもくろむ仕組みが現実になれば、共通ポイントのビジネスモデルが揺らぎかねない。

 スマートフォンのアプリなどを使ってポイント同士を瞬時に交換できるようになると、企業が共通ポイントを採用する利点といえる「顧客の囲い込み」の効果が弱まるためだ。共通ポイントの主要5陣営すべてが生き残るのは難しくなることも予想される。

 共通ポイント同士の交換が容易になれば、ポイントがどこでも使えるようになる。それは「ポイントが貨幣により近づくことを意味する」(野村総合研究所の冨田勝己上級コンサルタント)。

 そうなると、日銀の金融政策と無関係に共通ポイントを発行してもよいのかという議論が起きるかもしれない。ポイントの信用を維持するための仕組みが求められる可能性もある。(山端宏実)

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