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マーケットエンタープライズ小林泰士社長――中古品「がっかり」なくす、発展の種見つけ事業転換(成長の起点)

[ 2017年3月15日 / 日経産業新聞 ]

 インターネットを介して多種多様な中古品を買い取り・販売するマーケットエンタープライズが取扱数を増やしている。2016年6月期には月間約3万件の買い取り依頼を受け、月間約1万7000品を販売した。創業者の小林泰士社長(36)は「ウィンウィンの関係を築ける商売をしたい」と立ち上げた複数の事業の経験を成長につなげている。

 小林氏が「ネット型リユース事業」と呼ぶ現在のビジネスを始めたのは07年。16年6月期の売り上げは48億円に達した。

 事業の立ち上げ当初から「中古品につきまとう不信感の払拭に注力してきた」。査定するまで分からなかった買い取り価格を、電話やネットでの問い合わせの段階でおおまかに提示するシステムを考案。査定後のキャンセルは10%未満になっている。

 寄せられたクレームも信頼作りの糧とした。クレームを基に査定のポイントなどをまとめた800ページのマニュアルを作成するといった地道な努力を続けてきた。

 14年には中古品を安心して購入できるように、動作保証や延長保証などの新制度を始めた。こうした取り組みによって「顧客のがっかり体験をなくす」ことに成功した。

 東京だけだった物流センターを大阪や名古屋、仙台など8拠点まで増やすとともに、買い取り分野を毎年のように増やしてきた。それに合わせて売り上げが伸び、15年6月に東証マザーズへの上場を果たした。

 しかしここまで来るのに2度の事業転換を繰り返してきた。それまでの事業の経験から成長できそうな新たな事業の種を見つけ、事業転換をきっかけに規模を拡大していくのが小林流だ。「変化しないと成長しない」と考えている。

 04年に23歳の若さで初めて起業したのは電池のリユース事業だった。使い切りカメラの利用後に残った電池がまだ使える状態にあることに目を付けた。電気製品の修理を手掛ける企業などに販売して順調に売り上げを伸ばしていった。しかし小林氏は使い切りカメラの市場はいずれ縮小すると考えた。

 そこで売れ残った電池の販売で出店していた伸び盛りのフリーマーケット(フリマ)の運営に乗り出すことを決めた。フリマの誘致で集客を狙うスーパーや住宅展示場から料金を徴収し、出店料を無料にする仕組みを考案して人気を博した。全国で800以上のフリマを開催したという。

 しかしまたしても小林氏は「フリマではさらなる成長は見込めない」として次の事業の模索を始める。ヒントはフリマにあった。「フリマには高額品や大型品が出品されていない」ことに着目。ネットを通じて多種多様な中古品を扱う現在の事業にたどり着いた。

 現在、取り扱う中古品は家電や楽器、釣り具、農機具など27分野に及ぶ。電動工具やフィギュアから始め徐々に分野を増やしていった。顧客からネットや電話で中古品の買い取り依頼を受け、買い取った中古品を「ヤフオク!」や「楽天市場」などのネット通販サイトや自社サイトで販売する。販売店舗は持たない。

 小林氏は新たなサービスの開発に余念がない。16年8月には富裕層専門の買い取りサービス「プライベートバイヤー」を開始。経験豊富な担当者を全国に派遣する。さらなる成長に向けて「数年後にはネット型リユース事業の海外進出も果たしたい」と意欲を示す。(河合基伸)

トップは語る
「オンリーワン」に挑戦

 23歳のときに100万円を握りしめて3LDKの住居兼事務所に住み込み仲間と3人で起業しました。しかし経験もない若者がすぐに成功するのは簡単ではありません。これまで2度の事業転換を経験しました。

 それまで苦労して事業を立ち上げてきた社員にとって、事業転換は複雑な思いだったでしょう。若かったこともあり皆で泣きながら話し合いましたよ。最後には「絶対に後悔させない」と説得しました。

 チャレンジし続ければ道が開けると考えています。ダメだったら次へ、またダメだったらさらに次へと繰り返していくしかありません。失敗したとしてもチャレンジする前に比べて経験や人脈は確実に増えています。

 経験や人脈が少ない段階で成功の確率を上げるには、人がやっていない「オンリーワン」の事業を手掛けることが重要です。私もオンリーワンの事業を育て上げてきました。電池のリユースや出店料無料のフリマ、ネット型リユースは誰もやっていませんでした。珍しがって多くのメディアが取り上げてくれました。

《小林社長の歩み》
2003年 東洋大学工学部(現理工学部)卒、ベンチャー企業に入社
  04年 独立して起業。電池のリユース事業を開始。フリーマーケット事業開始
  06年 マーケットエンタープライズ設立
  07年 ネット型リユース事業を開始
  10年 東京リユースセンター開設
  12年 大阪リユースセンター開設
  15年 東証マザーズ上場

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