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日経の紙面から

はるやまホールディングス社長治山正史さん――健康スーツ、社会を元気に、新機能、アイデア尽きない(トップに聞く)

[ 2017年7月10日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 スーツ業界4位のはるやまホールディングスは競合他社のように外食やサービスなど多角化には走らない。日本のスーツ文化は根強いとみているからだ。創業2代目となる治山正史社長は健康宣言を発布。健康を切り口としたスーツ開発と店作り、そして社員の健康増進で会社の成長を目指す。

(聞き手は日経MJ編集長 中村直文)

 ――20年前に常務の時にお会いして以来です。お堅い「はるやま」にしてはずいぶんライトな雰囲気で。先行きを懸念していましたが(笑)。

 「何とか続いています(笑)。当時は商社から帰ってきたばかりで、今も変わらない雰囲気でしょう」

 ――会社の体質は変わりましたか。

 「数年前に(京セラ創業者の)稲盛和夫さんの影響で『はるやま哲学』を創りました。インフラ企業として世の中になくてはならない存在になると。ここを起点にビジネスを作ろうとしています。割と生真面目です」

残業減らして
暮らしを充実

 ――ここ20年でスーツ市場は様変わり。どう総括していますか。

 「3つの視点があります。1つは衣食住全体でのカジュアル化です。住はニトリやイケアが進め、食もイタリアン、ファストフードと。衣だけが進まないわけがない。特にクールビスの流れは大きかった。それでも日本はスーツ文化が根強く、米国みたいに急激に落ち込まないでしょう」

 「2つ目が二極化。百貨店が弱くなり、郊外型の紳士服専門店に顧客が流れてきました。この結果、価格の二極化が鮮明です。3つ目は脱・ビジネスウエアの流れでしょう。スーツも何もしないと黒電話のように絶滅してしまいます。そこで健康とスーツを結びつけ、従来と違った市場を作れないか、考えています」

 ――店舗に健康チェックの機器を導入していますね。

 「会社として健康宣言をしています。健康になる商品開発、店を健康ステーションにすること、そして社員の健康を守ることです。そこでノー残業手当を導入しました。残業しても予算を達成できない店もあります。そうすると実績を上げなくても給料が増え、残業なしで予算を達成した社員には不公平に映ります」

 「長く働くことが美徳と考える店長やマネジャークラスがまだ多く、下の社員は疲弊してしまいます。この手当は残業ゼロでも10時間分出しますし、もちろんそれを超えた分も払います」

 ――残業と人件費はどうなりましたか。

 「スタートした3月は繁忙期ですが、残業は2割ぐらい減りました。その後もずっと少なくなっています。社員も家族と食事ができる時間が増えて喜んでいます。人件費は1億円くらい増える計算です」

 ――健康スーツの手応えはどうですか。

 「寝間着を除いて長い時間着るウエアはワイシャツやスーツです。圧迫感、重さ、ムレた感じで人はストレスを覚えます。第1弾のストレス対策スーツでは重さや窮屈感を3分の1に軽減したら、脳波のテストでも好結果が出て、売れました」

 「それから『スラテクノ』。薬事法の関係で銘打つことはできませんが、やせることを狙っています。大阪府立大学の先生と開発し、臨床実験で基礎代謝を引き上げる効果が認められました。加えて3次喫煙を防ぐスーツです。服に付着したニコチンは子供に悪影響があるとのリポートが米国で発表されていました。光触媒を使うことでインフルエンザウイルスも除去できるスーツです。テーマを絞ると色々なアイデアが生まれます」

購買履歴分析
スタイル提案

 ――洗えるスーツなど機能性商品は年々増えています。

 「あと仕事以外でもスーツを着て欲しい。リタイア後でもスーツを着るとシャキッとする方は多いです。年配の夫婦の旅行者を見ると、奥様はおめかししてもご主人は余り気にされない。シニアの男女のファッション格差は大きい」

 「何とかシニア男性にファッションに関心を持ってもらおうとカラフル・ボード(東京・渋谷)というAI(人工知能)の会社に出資しました。顧客の購買履歴を分析して、個人の好みに応じた提案をします。実際に分析に応じて、ダイレクトメールを送ったらレスポンスが跳ね上がりました。個人的なスタイリストがついているイメージでファッション提案し、おしゃれのレベルアップに貢献したいなと」

 ――年配の方は他人からの視線を気にしなくなります。一方で若い方は気にしすぎてリクルートスーツが同じように見えます。

 「景気が悪いと堅めの黒いスーツが売れます。バブル期とかはリクルートでも羽目をはずしていました。今も売り手市場ですけど、周囲から浮きたくないという心理が働いているのでしょう。当社ではエントリーシートはスーツ写真をNGにしています。好きな格好でスナップ写真を送って欲しいと。その方が個性が分かりますし、誰に写してもらったかで周囲との関係性が分かります」

業績データから
高機能品ヒットし堅調

 はるやまホールディングスの2017年3月期の売上高は559億円と前の期比3%増だったが、営業利益は27億円と17%増えた。消費増税の影響で15年3月期にいったん減収減益になったが、機能性をうたった商品がヒットし足元の業績は堅調だ。

 4月には紳士服店「はるやま」内に体組成計などを置き、来店客が自分の健康状態をチェックできる専用コーナーを設けた。3年以内に180店に広げる。紳士服専門店は他社との違いを出すのが難しく値下げ競争に走りがちだった。健康を軸にした店づくりで一線を画す戦略だ。(鈴木慶太)

 はるやま・まさし

 1989年(平元年)立教大経卒、伊藤忠商事入社。94年はるやま商事(現はるやまホールディングス)入社。95年常務。2003年社長、17年はるやまホールディングス社長(現任)。15年に自社のスーツを着てフルマラソンを完走。岡山県出身。52歳。

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