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QRペイ→レジ素通り、オリガミペイ、訪日客の「爆買い」誘う、ペイモ、注文・支払い同時(FinTech広がる裾野)

[ 2017年7月31日 / 日経産業新聞 ]

 金融とIT(情報技術)を融合した「フィンテック」が日常生活にも入ってきた。スマートフォン(スマホ)でQRコードを読み取ると、代金を支払えるサービスが相次いで登場している。スマホをかざすだけで注文と決済を同時にできるなど、ITベンチャーがユニークな仕組みを開発している。スマホに慣れ親しんだ若い世代の支持を集める。

 金曜日の夜8時。駅前にある居酒屋は仕事終わりの会社員らであふれかえっている。ありふれた光景に見えるが、店内にレジはない。また、顧客は何度もスマートフォン(スマホ)をメニューにかざしている。店員は注文をとっていないにもかかわらず、しばらくするとビールや料理を運んできた。食べ終えると、会社員らは店員に話しかけることなく帰宅した。

 8月にエニーペイ(東京・港)が始める決済サービス「paymo(ペイモ)QR支払い」が普及すると、こんな光景が当たり前になるかもしれない。ペイモQR支払いはQRコードを読み取ることで、注文と決済が同時にできる。

商品別にコード

 事業者はエニーペイの決済サービスの管理画面で商品名や価格などの情報を入力し、商品ごとのQRコードを発行。商品カタログやメニューにQRコードを載せる。顧客はアプリを起動して購入する商品のQRコードを読み取れば、登録しておいたクレジットカードなどで料金を支払える。

 顧客は店員に注文内容を告げなくてもよく、会計の順番を待つことなくレジを素通りできる。事業者にとっても店員の注文や会計の作業量を減らせる。現在よりも少ない人数で運営できる可能性がある。

 すべての商品ではなくても、ビールなど頻繁に購入される商品のQRコードをレジ横やメニューに貼り付けるだけでもメリットはある。導入する予定のカフェ運営のワット(東京・目黒)の庄司真帆プロジェクト・マネジャーは「最も注文の多い『本日のコーヒー』のQRコードを発行してオペレーションの簡略化につなげたい」と語る。

 庄司氏は「急いでいる顧客は多い。会計時間が短くなれば利便性の向上につながる」と、店舗と顧客の双方にメリットがあると指摘する。会計にかかる作業量が減れば、商品をより早く提供できる。座席の回転率の上昇や、混雑を嫌って来店しなかった消費者の獲得にもつながりそうだ。

 「Origami Pay(オリガミペイ)で」。カナダ出身で東京都港区に住む会社員、ザン・ジムさん(26)は半年前から、タクシー料金を支払うときにこう伝えている。ザンさんが使っているのは、オリガミ(東京・港)が提供するQRコードを使った決済サービスだ。

 助手席の背面にあるタブレットに金額とQRコードが表示される。金額が料金メーターとあっているか確認し、QRコードをスマホで読み取ると支払いが完了する。かかった時間は4〜5秒だ。ザンさんを見て、同世代の友人らもオリガミペイを使うようになった。オリガミペイの利用者は、ザンさんのような20〜30歳代が約5割を占める。

アリペイと連携

 オリガミは康井義貴社長が2012年に立ちあげた。前職のベンチャーキャピタル勤務時代、米国や中国でフィンテック分野のサービスが続々と生まれる様子に衝撃を受けた。「資金移動のビジネスモデルは根本から変わる」。起業を決め、16年5月にオリガミペイのサービスを始めた。

 利用者はオリガミペイのアプリにクレジットカードを登録しておく。QRコードを読み取って決済すると、カードの口座に代金が請求される。カードを事業者に手渡さないため、カード番号の漏洩リスクを抑えられる。前払い方式の電子マネーと違い、チャージ不足と分かってレジ前で慌てることもない。

 事業者が用意するのはタブレットと通信環境だけでいい。専用の読み取り機器は不要。初期費用や毎月の利用料金もかからず、3・25%の決済手数料をオリガミに支払うだけだ。中国アントフィナンシャルサービスグループのモバイル決済サービス「アリペイ」とも連携できる。

 カジュアル衣料専門店のジーンズメイトは49店に導入した。アリペイのユーザーである訪日中国人を呼びこみ、「客単価が通常の1・5倍になった。18万円分を購入した顧客もいる」(ジーンズメイトの三好秀樹執行役員)。ほかにロフトやAOKIなど約1500社が2万店で導入している。康井社長は2年後をメドに20万店まで増やす狙いだ。

 フィンテックは既存の決済手段であるクレジットカードの利用の裾野も広げている。「クレジットカード決済できるかどうかでホステルの予約率は変わる。『コイニー』があって良かった」。訪日外国人が安価に泊まれるホステルを運営するワイズアウル(東京・港)の中島明日香マネージャーはほっとした表情を見せる。同社は1年前、コイニー(東京・渋谷)のシステムを導入した。

 コイニーは専用回線を引かなくても、小型の読み取り機器とタブレットでカード決済できる中小企業向けシステムを提供する。利用審査などを電子化し、導入までにかかる期間を最短3日と従来方式の1〜2カ月から大幅に短縮。入金は最大で月6回と、従来方式の1回より多い。中小企業の資金繰りの悪化を防ぐ。

 日本は銀行のほか、コンビニエンスストアなどにATMが設置され、現金の引き出しに苦労しない。依然として現金が決済の主流であることに加え、「Suica(スイカ)」に代表される電子マネーの発達もあり、QRコードなどを使った新しいモバイル決済の普及は道半ばだ。

 一方、米調査会社のフロスト&サリバンは、日本を含むアジア太平洋10カ国の21年のモバイル決済市場が、16年比3・8倍の2700億ドル(約30兆円)まで成長すると予測する。訪日外国人は増加傾向にあり、東京五輪の開催も控える。外国人の消費をより多く呼びこむには、安全性や利便性の高い決済インフラが欠かせない。フィンテック分野のベンチャーの役割は大きくなりそうだ。

(毛芝雄己、吉田楓)

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