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流通系電子マネー2強誕生10年、家計節約「マイル」も吸収、暮らし密着、広がる提携、マネー交換、年200~300億円規模。

[ 2017年8月9日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 日本航空のマイルをイオンの電子マネー「WAON(ワオン)」に交換した額は5年で3倍――。他社のポイント・マイレージを電子マネーに交換する消費者が急増している。セブン&アイ・ホールディングスの「nanaco(ナナコ)」と合わせた、総額は年200億〜300億円にのぼる。節約志向を受け、レジャーより日々の家計を優先する動きだ。誕生から10年、流通系電子マネー2強の存在感が一段と高まっている。

 「4〜6月に3万〜4万円は航空マイルをナナコに替えた。固定資産税を払ったり、買い物に使ったり、ナナコにするといろいろな支払いに充てられて便利」。横浜市に住む中山雄高さん(33)は数年前の結婚を機に、全日本空輸のマイルを電子マネーに交換することが増えたという。独身時代はマイルをためて特典航空券に交換して頻繁に海外旅行に行っていた。「マイルは放っておけば失効してしまう。ナナコに替えれば日々の買い物に使えて、家計の助けになる」

 中山さんのように、ためたマイルを電子マネーに交換する人が最近、増えている。交換比率はおおむね1万マイルが1万円分になる。申請後、数日で電子マネーとして使えるようになる。

 イオンのワオンは三菱UFJ銀行や三井住友カードなど48種のポイントサービスと連携するが、最も多く交換されるのは日航のマイレージだ。日航では特典航空券を含めたマイルの交換先の約1割をワオンが占める。

 日航は2010年の経営破綻後に策定した中期経営計画で「ためやすく使いやすいマイル」を標榜。かつてはマイルの失効時期が迫っても顧客に通知しなかったが、現在は失効2カ月前にメールなどで知らせる。日航の西田真吾マイレージ事業部部長は「ポイントやマイルを広い用途に使いたいという消費者の要望は強まっている」と話す。

 セブン&アイのナナコもワオンと同様、47社とポイント連携しており、各社のマイレージやポイントをいったんナナコのポイントに交換したうえで、電子マネーとして使えるようにしている。具体的な手続き方法は企業によって異なるが、専用サイトで申請するのが主流だ。

 ナナコと連携する企業の1つ、JCB。同社はクレジットカードの利用額に応じて、独自の「OkiDokiポイント」をつけている。近年、そのポイントを他社のポイントに交換する顧客が増えており、中でも「ナナコは断トツ」(カード事業統括部門の佐々木雄太次長)だ。期間限定で交換比率を高めるなど「ナナコだけ特別にプロモーション計画を立てている」と明かす。

 ポイントが使われたり交換されたりしたときに発生する費用は、ポイントの発行企業が負担する。それでもJCBは「満足度を考えれば、より使いやすい電子マネーになった方がいい」(佐々木次長)という。

 15年12月には、500ポイント以上からだった交換条件を200ポイント以上からとするなど、交換しやすくしている。その結果、JCBのポイント失効はこの5年で5%ほど減少した。

 消費者のポイント意識を変えたのは、カルチュア・コンビニエンス・ストア(CCC)の「Tポイント」や三菱商事系の「Ponta(ポンタ)」といった共通ポイントの普及だ。個別企業のポイントと異なり、幅広い加盟店でためて、使える。Tポイントは6341万人、ポンタものべ8295万人の会員を抱える。楽天やNTTドコモなども共通ポイントに参入してきた。消費者にとって、ポイントはもはや、様々な店で使えるのが当たり前だ。

 もともとマイルやポイントは自社の店舗やサービスを再利用してもらうための手段。だが、大量のポイントカードを持つ消費者には、1つの店でしか使えないポイントの魅力は薄れている。

 消費者が日常よく使う店の電子マネーであるワオン、ナナコと連携する企業は、「使える」ポイントとして存在感を高めようとしている。

 他社が発行したポイントが電子マネーに交換された額は、イオンもセブン&アイも開示していない。だが日経MJの取材によると16年度、2社合計で200億〜300億円分に達したようだ。これは百貨店主要7社の年間発行ポイント額に匹敵する。

 イオンによると、ワオンが使われる場所はイオングループ内の店舗が大半を占める。つまり他の企業が自らの原資で発行したポイントを元手に、イオンはグループの店で買い物をしてもらっていることになる。

 ナナコを発行するセブン・カードサービスの山根章取締役は「07年の開始当初は、小銭を使わずに簡単に支払いができる利便性と格好良さが電子マネーの強みだった」と話す。加えて今は「死滅しかねないポイントの受け皿となり、家庭が潜在的な資産を有効活用する手段になった」という。

 日経MJの調査では、イオンの中核企業、イオンリテールは16年度のスーパー市場でのシェアが12・1%と06年度比0・9ポイント上昇(持ち株会社移行前のイオンとの比較)、セブン―イレブン・ジャパンもコンビニでのシェアは40・4%と7・4ポイント高まった。電子マネーはプライベートブランド(PB=自主企画)と並んで、両社の市場シェア拡大の武器となった。

 ポイントの動向に詳しい野村総合研究所の冨田勝己上級コンサルタントは「使い道の限られたポイントが、電子マネーに交換されていく傾向は今後も続く」とみている。

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