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「それ欲しい!」の作り方――ジャパネットたかた高田氏、ほぼ日糸井氏対談。

[ 2017年8月7日 / 日経MJ(流通新聞) ]

ジャパネットたかた 高田氏 あと50年生きる気で挑戦
ほぼ日 糸井氏 モノが持つ謎 所有欲生む

 まだまだ終わらない達人トーク。このライフスタイル面も、ほぼ2人の対談でお送りします。

 ――昔は「モノのあること」が豊かさでした。世代が下がるにつれモノそのものへの関心が低下しているようです。

 糸井 かつてはモノがもっと謎だったんですよ。自動車がどう走るかも知らなかったし、なぜ外車が金髪の女の子を乗せて走ってるかも知らなかった。それを持てば魔法の力が得られると思ったんです。その時代にはモノへの興味も所有欲もあったと思う。今は鉄を溶かしてこういう部品ができてって全部分かってるんで、魔法が解けちゃったんです。

 僕が今、機嫌良く触ってるのが、買ったばかりの古いフィルムのカメラ。自分の年齢と同じくらいで、戦争に負けて大変だったのにこんなもの作って偉いなと。謎だらけなんです。写ってないかもしれないし、ピンぼけもします。そういうのが全部楽しい。モノに対して妄想とスケベな心が取り戻せたんです。

 ――それは糸井さん世代だからと思いますか?

 糸井 世代もあると思います。でも若くてもこの話をすると「俺も買おうかな」って顔して聞いてますよね。何で買ったのっていう「何で」のところが一番楽しい。動機のある商品というのを売ってるお店はやはりすてきに見えますよね。

 ――高田さんはそういうモノへの執着ってないんですか。

 高田 僕はあまり言えないんですけど、モノ買わないんです(一同笑)。ドイツでたまたま30万円くらいするジーンズをクレジットカードで買ったら、日本から電話があったんです。カード会社から「社長のカードが盗まれて使われてますよ」って。それくらいモノ買わないんですよ。

 僕は今の時代、あまりにモノも進化しすぎたと思うんです。何でAI(人工知能)と将棋しないといけないの。今の若い人はかわいそう。100人と瞬時に映像をやりとりできるなんて、そんな世界はいらないです。まあ使ってるんですけど。

 ポケベルもない時代、そんなに不便さは感じなかった。人間のつながりがあって、SNS(交流サイト)じゃなくても人と会って話ができていた。モノが生み出してるものは決して幸せだけじゃないなと。便利になりすぎて、人間の本質的なものがなくなってる。

 糸井 進化しすぎたものが出たおかげで、進化してないときのことを選び直せる面もありますね。この前、中年のおやじ同士で「ディズニーランドに6人で行ってスマホ使わないで会えたら会う」っていう企画をしてみたいって話したんです。会えなかったりした経験を嫌だな、と思ったから便利なものが発達したんだけど、今度は選び取る面白さが出てきた。

 ――ジャパネットで売ってるモノはどんどん進化してますよね。

 高田 スマホばかりで子供が言葉を出さなかったら、表情も失われてしまう。「じゃなんでジャパネットはスマホ売ってるの」って皆さんに言われますが、「必ずその問題を解決しなきゃいけない時が世界に来ます」と僕は言ってます。便利さを求めたときに、これはちょっと変えなきゃいけないなっていう知恵を発揮してきた歴史が人間にはあるので。「それまではスマホ売りますよ」って(一同笑)

 糸井 だって矛盾が人生でしょう。

 ――古希間近とは思えないほど、おふたりともエネルギッシュです。

 高田 僕はジャパネットを引退した時「あと50年、117歳まで生きる」と言いました。「平均寿命は81歳」って考え方をしていたら、やりたいことは何もできない。

 今年、サッカーの社長(J2のV・ファーレン長崎)になりました。「2年社長をやってもあと47年残ってるな」と思ったら楽にやってみよう、となりますよね。これが「あと10年」だと「いやおまえ、何か別のことした方がいいぞ」ってなってしまう。

 糸井 欲望はかきたてないと無いですよ。自分より、誰かに食べさせて本当においしそうだと、その方が「うまい」んですよね。で、それをじゃんじゃんやりたくなっています。

糸井氏 会社は人「感じる」大事
高田氏 「つもり」では成長せず

 ――社長としての仕事観を教えてください。

 糸井 会社って僕は「人」だと思ってるんです。もうかることだけをやってる人って嫌われますよね。文句言われてもすべきこともある。いくら利益をあげるかだけが会社だったら、会社である必要もない気がする。

 分かりやすいのは、震災後の行動です。これまた会社の個性が出ますよね。僕らは小さい会社だし、巨額の寄付なんてできない。そうじゃなくて(被災地に支社を設けての支援活動などを)長くやるために、約束を守り続けられるようなルールを作るとか。もう6年ずっとやってます。

 高田 企業ってそういうのを持たないと、100年とか続くのは無理ですね。モノだけを売っていくのでは。

 糸井 いろんな人の手帳を見せてもらいに行くキャンペーンの旅があるんです。学校の若い先生が「人はまず『感じる』から始まって『思う』『考える』『行動する』っていう順番だと思う」って、手帳にそう書いていたんです。

 その順番がものすごくうれしかった。生き馬の目を抜く都会では「感情を捨てればうまくいく」って案外人は思ってるんだけど、そんなことはなくて。

 大分で水害があったときに大変だって「感じる」。それが「思い」になり、じゃあうちはこれからどうしていくんだというのを「考える」。やっぱり会社の中でもダメになっちゃってるときって「感じる」が足りなくなってるんですよ。

 ――相談役や顧問の存在意義が問われていますが、高田さんは会長にもならず引退されました。

 糸井 息子さんが継がれて、自分がいなくなったら大変じゃないか、と思いがちなところを「いや、できるはずだ」と。信じる力がすごいですよね。

 高田 不安なしで事業を承継する人は1人もいないですよ。でも息子にとって何が経験として一番重要かというと、自己判断することです。僕が会長でいたら僕が判断しますからね。それでは多分、一流になれないでしょう。だから間違いはいっぱいしてると思うんですけど、最終判断するなかで一流になってもらえたらと。

 糸井 社長のアイデアがなんで通るかっていうと、勝つまでやるからですよね。野球でいえば9回で負けてたときに、社長は「12回までやるぞ」って言える。そういうずるを生かしてない社長は、多分ダメなんです。

 ――MJの読者に一言、ビジネスがうまくいくアドバイスを下さい。

 糸井 死ぬほど考えないとダメなことがやっぱりある。で、大体「考えた」という人は死ぬほど考えちゃいないんです。「なんかコツがあるんですか」ってすぐ人は聞くんですが、聞かない方がいい。いま平気な顔して言ってますけど、死ぬほど考えたんですよ僕も。

 高田 陥りがちなのは「伝えたつもり」になること。僕も商品が売れないことがあった。なんでだろうって考えると、お客さんに伝わってないんですよ。それで何度も10回20回と伝え方を変えていったのが、30年の経験ですから。人としても「頑張ってるつもり」では、10年20年たっても成長しないですね。

 ほぼ日 サイト「ほぼ日刊イトイ新聞」は1998年に糸井重里さんが立ち上げた。インターネットが日本で広まり始めたころで、クリエーターが発信する新たなメディアを目指した。糸井さんのエッセー「今日のダーリン」をはじめ、著名人との対談、読者からの投稿など様々なコンテンツがある。

 運営会社のほぼ日は今年3月にジャスダック市場に上場し、話題を呼んだ。広告は載せず、収益はほぼ、雑貨や衣料品など独自企画の物販であげている。

 なかでも2002年から売り出した「ほぼ日手帳」は大ヒット。17年版は66万部を売り上げる見込みで、会社の売上高の6割超を占める。

 ジャパネットたかた 1986年、高田明さんがカメラ店として創業した。本社は長崎県佐世保市。90年にラジオ通販、94年からはテレビ通販に本格的に参入した。高田さんのテンションの高いセールストークが人気で急成長していく。

 テレビの地上デジタル放送移行の特需などで、2010年度には売上高が1700億円を突破。ただ、その後2期は反動でテレビが売れず、大幅な減収に陥る。

 高田さんは12年末「来期に最高益を達成できなければ社長を辞める」と宣言。布団掃除機のレイコップなどの大ヒットも生み出して再び成長軌道に乗り、最高益を実現した。16年度には売上高も過去最高を更新している。

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