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日経の紙面から

16年度百貨店調査、2年ぶり減収、高額品不振響く、百貨店、主役は美・食・遊、選ぶ「楽しさ」消費者を刺激。

[ 2017年8月16日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 日経MJが実施した2016年度の百貨店調査は全国の百貨店売上高が既存店ベースで15年度を3・2%下回り、2年ぶりのマイナスとなった。衣料品の落ち込みに加え、訪日外国人の消費の変調や株価低迷による高額品の不振が響いた。もはや衣料品に依存できない。「百貨店は何のために存在しているのか」。美・食・遊を柱とした作り直しが始まった。(調査の詳細を2、3面に)

 既存店の9割が減収となった16年度の百貨店業界。商品分野ごとの販売動向をみると、16年度の販売額が15年度より「増加」したと回答した割合が「減少」を上回ったのは化粧品だけだった。17年度もこの傾向は続き、半数以上の百貨店が化粧品では売上高の増加を見込む。

 高島屋は16年度、化粧品の売上高が15年度比で15%以上伸びたと回答した。けん引役となったのは店舗の売上高が3年連続の増収となった大阪店(大阪市)と新宿店(東京・渋谷)だ。

 1・8%増収の大阪店を訪ねると、1階の化粧品売り場には中国や東南アジアからの訪日客の姿が目立つ。中国人に人気のブランドの前には「化粧水(清爽) 口紅 断貨」(さっぱりタイプの化粧水 口紅 品切れです)という看板も立つ。

 高島屋大阪店の好調はまさに地の利を得た格好だ。「爆買い」に代表される訪日客の消費は高額品から化粧品などの日用品に移り、1人当たりの購入金額は下がったものの、訪日客の入店客数の増加がそんなマイナスを帳消しにした。直結する南海なんば駅と関西国際空港は特急で1本。その関空に1月、格安航空会社(LCC)専用ターミナルが開業したことが入店客数の底上げにつながった。

 「成田空港から東京に入って、その後に大阪というのが従来の訪日客の『ゴールデンルート』。LCCの利用客を中心に入国も出国も大阪という訪日客が大幅に増えた」(高島屋大阪店)

 スーツケースを持ったままの訪日客向けに預かり所を設置。中国アリババ集団傘下の「支付宝(アリペイ)」や騰訊控股(テンセント)の「微信支付(ウィーチャットペイ)」といった中国人の利用が多い決済サービスも次々と導入した。

 さらに17年度も中国の動画サイトを通じて、商品紹介映像の配信も続けている。高島屋大阪店での買い物を訪日の「楽しみ」「遊び」にする試みだ。一連の施策が奏功して、7月の訪日客向けの化粧品の売上高は前年同月比で倍増したという。

 大阪市内では阪急うめだ本店も化粧品の販売が好調だ。運営する阪急阪神百貨店の荒木直也社長は「化粧品はデフレ時代の衣料品の代用品」と言い切る。訪日客による押し上げ効果に加え、従来の顧客にも「中間層の所得が増えないなか、気晴らしやちょっとしたぜいたくの対象として化粧品が選ばれている」(荒木社長)という。

 消費者の遊び心をくすぐるため、7月、化粧品売り場に導入したのは3台のタブレットだ。画面上に映し出した自身の顔にメークのお試しができる。1日の利用者は100〜150人。「ブランドごとに置かれたテスターを全部試すことはできない。デジタルで試して、さらに販売員の話を聞く人が20〜30歳代に多い」(ビューティー営業統括部の井上政彦部長)

 阪急うめだ本店も訪日客は多い。売り場に訪日客がさらに増えれば、従来の顧客からは「買い物が楽しめなくなった」という不満の声が漏れる懸念もある。対策として、メインの2階のほかに10〜20歳代向けを3階、高級ブランドを6階と化粧品の売り場を分散した。比較的堅調に推移している阪急うめだ本店の婦人衣料の販売はこうした化粧品の売り方との相乗効果も大きい。

 商品分野ごとの販売動向をみると、17年度の見通しでは食品も「増加」と答えた割合が「減少」を上回る。集客力の底上げにもつながる食品売り場について、改装に取り組む百貨店は多い。

 11月、東武百貨店池袋本店(東京・豊島)は洋菓子100社の商品を一同に集める全国でも珍しい「おやつテーブル」と呼ぶ売り場を新設する。選ぶ「楽しさ」を求める消費者に応える。一連の大規模改装により、てこ入れした売り場では売上高を2・6倍に伸ばす目標を掲げる。

 4年ぶりの改装となった16年7月には6つの菓子ブランドを2週間ごとに入れ替える「ハナサンテラス」を導入した。導入から1年を経た現在も売上高は前年実績比5割増で推移するという。

 ショッピングセンター(SC)との競合も激しい郊外店舗の立て直し策として、「デパ地下」の食品売り場を百貨店の顔ともいえる1階に広げたのは西武所沢店(埼玉県所沢市)だ。16年11月からの改装を通じ、食品を扱う売り場は6割増の5000平方メートルとなった。

 従来、1階の売り場は婦人衣料を扱ってきた。しかし、東京都心の百貨店との競合に加え、近隣にSCが相次ぎ開業し、販売は振るわなかった。「婦人衣料に多くの売り場を割いているにもかかわらず、売上高の3割は食品。顧客の需要に応えられていなかった」(加納澄子店長)

 1階には菓子コーナーに加え、地元のベーカリーを導入。店内に醸造設備を備えたクラフトビールレストラン「ビール工房所沢」もあり、若い女性客を集める。地下1階にも新たにお酒の量り売りコーナーなどを新設。改装後の食品の売上高は3割伸びた。

 一方、売り場を3割程度縮小した婦人衣料も3〜4階に集約したことで買い回りの利便性が高まり、改装前の9割程度の売上高は維持。全館ベースでみれば、客数で15%プラス、売上高も1割伸びた改装について、「都心と同じ売り場づくりでは生き残れない。わざわざ来てもらうための仕掛けを考えたい」と加納店長は意気込む。

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