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日本調剤――薬局発、健康応援アプリ、お薬手帳、会員19万人に、薬代削減もひと目で(ザチーム)

[ 2017年8月22日 / 日経産業新聞 ]

 調剤薬局大手の日本調剤は2014年10月から薬の服用履歴を管理するアプリ「お薬手帳+プラス」を提供している。IT(情報技術)系企業がアプリを配信するなか、「薬局ならではの内容に」と初めて自前でアプリを開発した。日々の健康管理にも使えるように、名称どおり機能をプラスすべく改善を続けている。

 「薬局が自前で作るからこそ提供できることがある」。社内や薬局で使う情報システムを開発するシステム第二部の田中秀樹さん(37)は14年、こんな思いで「電子お薬手帳」の開発を始めた。

 電子お薬手帳は処方した薬の種類や量などを記して患者に渡す紙の冊子「お薬手帳」をクラウドコンピューティングで管理・更新し、スマートフォン(スマホ)などから確認できるようにする。ベンチャー企業のほかソニーやNTTドコモなどもサービスを提供しているが、大手の調剤薬局が作ったものはなかった。

薬を自動で記録

 14年6月、まず田中さんら開発メンバーを中心に5人でチームが発足。薬の処方履歴を管理したり、処方箋を薬局に送信したりする競合サービスの主要な機能を備えた。

 開発に要した期間は4カ月。14年10月に提供を始めた。日本調剤が運営する560カ所超の薬局で受け取った薬は会計後に自動でアプリに反映され、他の調剤薬局で受け取った薬も処方箋のQRコードを読み込むなどすれば反映できる。会員数は伸び続け、8月時点で19万人になる。

 薬局には処方薬や医療保険の情報が手元にあるため患者の声をすぐにサービスに反映できる。広報部の越川綾乃さん(31)と薬剤管理部の郡司奈津美さん(30)が利用者や店頭にいる薬剤師からの問い合わせの窓口を務めた。

 「いくら節約できるのかわからない」。15年末、ある利用者からこんな注文があった。処方薬の名称や用法・用量が確認できる画面には後発医薬品も載せていた。後発薬に切り替えるとどの程度の医療費や自己負担が減らせるか知りたいとの要望だった。

 越川さんがこの要望を田中さんに伝えると開発メンバーは画面を更新。16年1月に「ジェネリック医薬品のご使用で抑えられたお薬代」として、医療費や自己負担がいくら削減できるかを一目で分かるようにした。

 今も月に150件超の問い合わせが寄せられる。15年12月から問い合わせ担当を越川さんから引き継いだ郡司さんは薬剤師らにアプリの使い方の研修も始めた。毎週の会議では利用者の声を一覧表にしてチームに伝えている。

東大院とコラボ

 今年1月、新規事業を手掛ける事業開発部に所属する木村慶彦さん(34)がチームに加わった。患者向けの機能は充実させてきたが、「健康管理のために日々利用されるアプリに育てたい」。日ごろ薬局を利用しない人にも使ってもらえるアプリへの改善を目指す。2月、全国で流行中のインフルエンザなどの感染症の情報と薬剤師によるワンポイントアドバイスを配信する「気になる流行ナビ」を立ち上げた。

 7月には「知っ得!薬剤師コラム」も始めた。月1度の頻度で薬剤師が薬に関する情報を発信する。1回目のテーマは授乳中の女性が飲んでも問題ない薬を取り上げた。インターネットでは多くの情報が出回るが、「薬剤師の知見を生かした正しい情報を発信したい」。7日には第2回として「食物アレルギー」を配信した。

 16年末、東京大学大学院の医学系研究室とアプリの共同研究を始めることが決まった。研究室が糖尿病患者向けに開発したアプリ「グルコノート」と連携する。東大のアプリは料理の写真を撮ると摂取するカロリーを推計する機能などを備え、日ごろの健康管理に利用してもらう方法はないか、木村さんが窓口となって年明けから東大と議論している。

 配信を始めてから間もなく3年。チームは週に1回の会議を欠かさない。健康管理に欠かせないアプリを目指すこのチームの使命に終わりはない。(今井拓也)

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