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日経の紙面から

ネット価格、店より1割安、日本、10ヵ国で突出、米大調査、小売りに値下げ圧力。

[ 2017年9月2日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 「他店の価格に対抗します」。家電などの安売り競争ではこんなキャッチフレーズが常だが、小売業者が頭を悩ますのは対ライバル社だけとは限らない。米国の大学の調査で日本では自社の中でもネット販売と店頭との価格差が突出して大きいことがわかった。ネットにさや寄せするように値段の下落圧力が強まっており、デジタル時代の価格戦略はいっそう難しさを増している。

 「ネットのほうが1万円も安いんですが……」。都内の家電量販店では、「スマホを片手にネット価格を提示して値切る姿が2〜3年前から目立つようになった」という。生産過剰で余った商品が流通し、ネット発で値崩れが激しくなっている。

 米マサチューセッツ工科大学のロベルト・カバロ准教授は2014年から16年にかけて、日米中など10カ国を対象にネット価格と実店舗との価格差を調査した。日本はネットで買った方が安い商品の割合が45%と最も多く、価格は平均でネットが13%安かった。

 10カ国の価格差の平均は4%安で、ネット価格が店舗よりも平均で1割以上安いのは日本だけだ。

店で買う中高年

 同一企業で大きな価格差がつく背景について、野村総合研究所の木内登英氏は「ネットを使う層と不慣れな中高年層の分断が大きく、店頭価格が高止まりしている」と分析。高齢化の影響もあってスマホなどを使ったネット通販の普及が他国より遅れた可能性がある。

 実際、総務省の調査ではネット販売を利用しない理由として「実店舗で実物を見て買いたい」「決済手段の安全性に不安がある」としたのは60歳代以上で4割前後。いずれも20歳代や30歳代の2倍以上の高い水準だ。店員と対面で説明を聞きながら商品を選びたい人も多く、店頭販売価格にはそうした人件費などが上乗せされて割高になる。

 家電量販店では伝統的に競合店との価格競争が激しい都市部に比べ、比較的緩やかな郊外の価格が高いことが珍しくなかった。他社との比較がしやすいネットはより安い都市部の価格にそろえざるを得ず、郊外など一部店頭との価格差が生じやすい環境もある。

 国内ネット通販は10年以降、市場規模が2倍に拡大し年20兆円に迫る勢いだ。コンビニの販売額をも上回り、日用品のネット購入も増えた。それでも個人消費の中でネット販売割合は日本が28%とまだ低い。

 米国は60%、英国は51%と過半がネットを利用した買い物だ。「日本はデフレ傾向が長く続きネットショッピングでも後発組。実店舗より価格を低く打ち出すことで新しい客層を呼び込もうとした可能性がある」(三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミスト)。逆にいえばネット販売市場の潜在規模は他国よりも大きいともいえ、普及がさらに進めば、店頭価格を一段と押し下げる可能性がある。

 大和総研の長内智シニアエコノミストは「消費者が購入手段をネットに変更した影響だけでも消費者物価が家電など耐久財で1ポイント程度、日用品なども含めると総合指数が0・2ポイントほど下押しされている」とはじく。

 一方で家電量販店向けのコンサルティング会社、クロス(東京・港)の得平司社長は「量販大手がネット価格を下げているのはごく一部。以前に比べネットと実店舗の価格差は縮まっている」という。値崩れを防ぐためメーカー各社がネット専門企業との取引条件を厳しくしており、量販店が対抗する必要が薄れてきたとの声もある。

ビックは同価格

 ネットの売り上げが9%に高まったビックカメラは「今年から店頭でも自社のネットと同じ値段で買えるようにした」。店頭ではスマホでバーコードを読み取ると、ネット上の価格がその場でチェックできる。

 セブン―イレブン・ジャパンでもネット通販の価格はコンビニエンスストアの店舗と原則同じにしている。ナショナルブランド(NB)商品などで他のネット通販で売られている価格と大きな差が出た場合、ポイントや特典を付けることで対応している。

 「お店より安く売ればフランチャイズのオーナーに迷惑がかかる」。ローソンも値下げ競争と一線を画す構えで、ネットとリアル店舗を「一物一価」に収束させようとの動きも広まっている。(平本信敬)

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