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VS.アマゾン、迎え撃つニッポン流通業。

[ 2017年10月1日 / 日経ヴェリタス ]

 ドイツ、日本、英国。米アマゾン・ドット・コムの売り上げの4分の1を稼ぐ3国で、それは静かに始まった。生鮮品の宅配「アマゾン・フレッシュ」だ。

 東京都内に住む高村奈津子さん(36)は共働きで、子育て真っ最中。買い物の8割はネットで、週3回ほどアマゾンを使う。今は近場のスーパーで買う生鮮品も子どもの世話で手が離せないときは「フレッシュ」を使おうかと思い始めている。スーパー優位が揺らがないはずだった生鮮品も、アマゾンの存在感が増している。

最強の購買分析力

 世界で膨張するアマゾンは、創業から23年で株価は一時1000ドルと初値の36倍となった。時価総額は4600億ドル(51兆円)と世界小売り最大手米ウォルマート・ストアーズのほぼ2倍だ。米英で電子商取引(EC)の3割を占める巨人は、百貨店などリアルの小売業をなぎ倒しながら消費者の買い物だけでなく、動画や音楽を楽しむ「生活を丸ごと」のみ込もうとしている。

 日本の小売りが流通外資の攻勢を受けるようになったのは1990年代だ。大型店を規制する大規模小売店舗法(大店法)が廃止され、英スーパーのテスコや仏カルフールが進出した。だが肉や魚の旬や鮮度に世界一厳しい日本の消費者に対応しきれず苦戦。ほどなく撤退した。

 アマゾンとの戦いは次元が異なる。消費者はスマホがあれば店に行かずとも深夜や通勤中といった隙間の時間で買い物ができる。アマゾンのアルゴリズムは世界中の利用者の購買データを分析し、一人ひとりに最適な商品を薦めてくる。

 日本貿易振興機構(ジェトロ)によれば2016年、アマゾンは日本のECシェアの20.2%をおさえ、楽天(20.1%)を逆転した。現在15兆円強のECの規模は「22年度には26兆円に拡大する」(野村総合研究所)。リアルとネットが融合し、新たに生まれる10兆円市場の争奪戦は、取りに行かなければ「アマゾンに席巻されるだけだ」(クレディ・スイス証券の米島慶一マネージングディレクター)

 売り上げに占めるEC比率が3%に満たない小売り大手、イオン(8267)やセブン&アイ・ホールディングス(3382)も目の色が変わった。ネットスーパーを始めて10年以上たつセブン傘下のイトーヨーカ堂は全国の店舗で長年培ってきた「時短・簡便」のノウハウを詰め込み、肉や魚を下処理した食材キットなどネット専用商品を提案する。「指定したモノが時間通り届くだけでは他社との差が付かない」(梶川貴司オムニチャネル推進部長)。店で、ネットで、いかに多くの消費者に選んでもらうかの勝負だ。

リアル店舗と補完

 ファーストリテイリング(9983)の柳井正会長兼社長はECを「世界最大の倉庫を持つビジネス」と呼ぶ。スマホなどを通じて消費者が好みの服を発注すればすぐ届く。そんな仕組みを模索しながら、ネットとリアルの店舗が「相互に補完するのが一番良い」と話す。

 ビッグデータを切り札に自らの経済圏を立て直そうとしているのはヤフー(4689)だ。検索履歴などポータルサイトに集まる全データを基に「利用者一人ひとりのセレクトショップを目指す」(小沢隆生執行役員)

 日本のECの比率はようやく5%を超えたところだ。アマゾンは北米で稼いだカネを人工知能(AI)やデータセンター、日本など海外への投資につぎ込んでくる。最新の勢力図からニッポン流通業の勝機を探る。

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