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転機の消費株(4)人手不足、株価の重荷――待遇改善、好循環呼ぶか(終)

[ 2017年9月30日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 「主婦の皆さんのお力が必要なんです」。ユニー・ファミリーマートホールディングス(HD)が19日、さいたま市内で開いた主婦向けの採用説明会。コンビニエンスストア事業会社、ファミリーマートの沢田貴司社長が登場し、深刻な人手不足を訴えた。

 同社が傘下のコンビニ店を対象に実施したアンケート調査では「約8割の店舗で人手が足りない」との結果が出た。今後2年で主婦スタッフの雇用を10万人に倍増させて乗り切りたい考えだ。

 単身世帯の「中食」需要などを取り込み、大手3社が増益を続けてきたコンビニ業界。デフレ時代の小売業の「勝ち組」とされてきたが、人手不足に伴うコスト増加が収益を圧迫し始めた。

 ローソンは2018年2月期の連結営業利益を前期比7%減の685億円と予想。減益は15年ぶりだ。人手不足に伴う店舗効率化のためのレジ刷新などで先行投資が膨らむ。ファミマも減益が見込まれ、セブン―イレブン・ジャパンは微増益にとどまる見通しだ。

 株価には早くから変調のシグナルが出ていた。親会社のセブン&アイHDとローソンの2社の値動きは昨年夏以降、小売業全体とは逆に下降線をたどり始めた。

 人手不足が今後も強まるのは必至だ。パーソルホールディングス子会社のパーソル総合研究所(東京・渋谷)は、年0・8%の経済成長が続いた場合に見込まれる、25年の産業別の人手不足を試算した。この結果「(外食など)サービス・情報通信」で18%、「小売り・卸」で16%の需給ギャップが生じるという。

 人手不足対策へ各社は懸命に知恵を絞る。夜間事業の短縮、外国人の採用拡大のほか、ロボットや人工知能(AI)の活用も広がる。多くはコストを抑えようとの取り組みだが、コストをかけて待遇を改善し、人手を確保する動きも広がる。

 「将来はメーカー並みの給与や労働条件を保証したい」。イタリア料理店チェーンを運営するサイゼリヤの堀埜一成社長は7月に宣言した。外食は離職率が高く給与も安いとされる。サイゼリヤの16年8月期の平均年間給与は594万円(平均年齢35歳)。食品メーカー、味の素の16年度の952万円(同43歳)などと比べても差がある。

 サイゼリヤは前期から人事制度の改革に着手。8月にはパートやアルバイトを含む従業員に対し、自社の株式を給付する株式給付信託(日本版ESOP)を導入した。市場には「外食産業の魅力向上にもつながる取り組みだ」(野村証券の皆川良造アナリスト)との評価がある。値ごろ感のあるメニューで業績も好調。29日の株価は昨年末比で18%高と勢いがある。

 三井住友アセットマネジメントの宅森昭吉チーフエコノミストは「人手不足をこなして収益が向上すれば、さらなる賃上げで消費を刺激できる」と語る。苦しみの先に待つのは、所得の増加が消費の拡大につながる好循環かもしれない。そうなれば消費株への評価も変わってくる。(おわり)

 野口和弘、南雲ジェーダ、向野崚、伴和砂が担当しました。

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