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AEON転機の連邦経営(中)「大黒柱」次はどこに――デジタル出遅れ、海外事業芽吹く。

[ 2017年11月15日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 「2020年以降の社会とお客様に対応した次世代型IT(情報技術)・物流へ刷新」

 17年4月にイオンが公表した19年度までの3カ年計画の文言だ。20年以降の社会や消費者がどうなると考えているのか、そこに向けてどうするのかという具体策は示されていない。

 17年を「改革計画を策定する年」と位置づけ、実行は18年以降としているイオン。変化の激しいデジタル分野で日本を代表する小売業の最新メッセージとしては物足りない印象は拭えない。

 「AI(人工知能)スピーカーを使ったEC(電子商取引)でグーグルと提携」

 「安売りサイトのジェット・ドット・コムを約3700億円で買収」

 インターネットの脅威にさらされた世界最大手の小売業、米ウォルマート・ストアーズは具体的な対策を矢継ぎ早に打ち出している。「顧客のデジタル体験を優先する」とし、18年度にネット売上高を4割増やすとする一方、米国内での新規出店は過去25年間で最も少ない25店以下に抑える方針も示している。

 国内勢でもファーストリテイリングが生産から物流、開発、働き方まですべてを作り替える「有明プロジェクト」を立ち上げた。柳井正会長兼社長は「情報製造小売業」への脱皮を掲げ、目指すゴールの1つに「消費者個人の好みに合わせたサイズやデザインの服を最短10日で届ける」という絵を描く。

 イオンも15年末にグループ横断ECサイト「イオンドットコム」を立ち上げたほか、ITでつながる行政や医療機関などと消費者向けに様々なサービスを提供する「地域エコシステム」構想も打ち出している。しかし、人口減少を背景に中核とする国内のショッピングセンター(SC)や総合スーパーの先細りが予見されるなかでも、デジタル対応を軸にグループの事業構造を大きく転換するという気概は伝わってこない。

 出遅れ感が否めないデジタル時代への対応。一方、成長を求めた海外市場の開拓は先行投資が芽吹きつつある。

 イオンは2017年3〜8月期、中国と東南アジア諸国連合(ASEAN)での営業利益が合計92億円となり、前年同期比2・6倍に拡大した。先行投資がかさんでいた大型SCで黒字の施設が増加。営業利益の海外比率は11%に過ぎないものの、国内事業が停滞するなか、前年同期の実績から5・8ポイント上昇した。

 海外事業の主軸の中国とASEANではアクセルを踏み込む。グループでSC事業を手掛けるイオンモールは17〜19年度の3年間、海外で15の新規出店を計画し、その数は国内の11を上回る。

 国内流通業界にはイオンのアジア展開を評価する声が多い。14年、イオンがカンボジアに初めて設けた大型SCに入居した家電量販店のノジマ。海外事業を担当する大川善輝顧問は「イオンのおかげで海外進出を果たせた。物件確保の手間が省け、契約リスクも低減できる」と話す。

 新しい国への初進出がイオンのSCという日本企業は少なくとも116社。人口減少に直面する国内流通業にとって、イオンは海外への橋頭堡(きょうとうほ)だ。

 ただ、デジタルも、海外も、現状では国内の小売りに偏った巨大グループを支える事業とはなり得ない。イオンの創業家である岡田家に伝わる有名な家訓「大黒柱に車をつけよ」は柔軟な事業展開の必要性を説いた。高齢化や人手不足への対応も待ったなしの今、グループの巨大さと複雑さが経営の柔軟性、機動性の足かせになっている。

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