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AEON転機の連邦経営(上)来月に新中・長期計画――横串なし、停滞続く収益、生かせぬ規模の強み。

[ 2017年11月12日 / 日経MJ(流通新聞) ]

共通ポイント、足並み揃わず

 イオンがグループ経営の転機を迎えようとしている。再建に取り組む総合スーパー(GMS)事業に改善の兆しは見えつつあるものの、インターネット通販に代表される異業種との競争や人手不足による環境変化は容赦なく押し寄せる。12月に公表する2025年に向けた中・長期計画。イオンは次代を生き抜く「変身」を遂げられるのか。

 「これは5、6年遅れた計画だ」。グループを束ねるイオンの岡田元也社長は10月2日、月例の合同朝礼で社員を前にそう話した。「中間期として11年ぶりに営業最高益を更新」という決算発表が2日後に控えていたにもかかわらず、ばっさりと切り捨てた。

 課題とされてきたGMS事業はいぜん赤字が続くものの、状況は大きく改善。「全店全新」を掲げる大型改装が一定の成果を挙げ、社内には安堵も広がっていた。その雰囲気を戒めるかのような発言だった。

 18年2月期の通期見込みベースで連結営業利益率は2・4%。岡田社長が常々、世界トップの流通業に割って入るための目安とする5%とはなお倍の開きがある。久々の最高益更新も目指す姿からはほど遠い。

 利益が停滞する要因はいくつもある。GMSの不振、ダイエーをはじめとする買収企業の再建に関する投資、新規事業の成長の遅れなどだ。それらを突き詰めれば、小売業で国内トップの事業規模を収益性に変える強力な「横串」がないという課題に行き着く。

 グループ共通の武器として、期待を寄せたプライベートブランド(PB=自主企画)「トップバリュ」。しかし、17年2月期の売上高は7156億円。2年連続の減少となった。商品の見直しにより、足元は「前年実績を上回り始めた」(イオン幹部)とはいえ、かつて掲げた「13年度に1兆円」という目標には届いていない。

 「Tポイントカードはお持ちですか」。食品スーパー事業の主要企業、マルエツの店頭で横串の不在は実感できる。10月の新店オープンに詰めかけた買い物客に対し、従業員が勧めていたのはカルチュア・コンビニエンス・クラブの共通ポイント「Tポイント」のカード発行だ。

 イオンには16年に立ち上げた独自の共通ポイント「WAON POINT(ワオンポイント)」がある。しかし、グループへの利益貢献が大きいマルエツはワオンポイントに加盟していない。電子マネー「ワオン」が使える店舗もわずか5店にとどまる。

 顧客の属性や購買履歴などのデータはPBと並んでグループの重要な資産になる。しかし、共通ポイントや電子マネーといった幅広い消費者のデータを獲得する切り札ですらも、グループ内で横串を通すことができていない。マルエツだけでなく、貴重な成長事業であるドラッグストアのウエルシアホールディングスもTポイントだ。

 「連邦経営」「緩やかな連帯」。事業会社ごとの独立性を重視する経営理念を掲げ、イオンは多くの企業を取り込むことに成功してきた。それが旧ジャスコ時代からの成長と存続の礎だったことは確かだ。ただ、結果として、それぞれの企業の事情や利害が複雑に絡み合う、異形の複合企業となったことも否めない。

 消費行動を根本から変えつつあるデジタル化の波は世界を覆っている。世界最大の小売業、ウォルマート・ストアーズでさえも過去にはないほどの事業変革に着手している。事業の停滞というリスクを内包しながら、議論に1年以上の時間を費やしてきた「中・長期戦略」が持つ意味は極めて重い。イオンとは何か。その問いに対する具体的で分かりやすい解こそが今、求められている。

「隠れた価値」収益転嫁を
地域貢献や環境配慮

 国内流通2強とされるイオンとセブン&アイ・ホールディングス。利益率などではイオンはセブン&アイの後じんを拝している。しかし、地域社会への貢献や環境への配慮など、業績には表れにくい分野での取り組みの価値を無視することはできない。

 福島県広野町。東日本大震災後、避難指示区域となっていた双葉郡で初めてスーパーを開業したのはイオンだった。住民が少なく、個店での採算の確保が厳しいのは明らかだ。「地元企業にも断られた」(広野町関係者)案件に対し、イオンは2015年に出店を決めた。「スーパーがなければ、戻る人も戻れない」(村上教行東北代表)

 16年の熊本地震の際、発災後の1カ月弱でイオンが被災地に送ったおにぎりや飲料、日用品などの支援物資は合計で約350万個に上る。ライバルのセブン&アイは8万2000個。災害時に防災拠点となる大型ショッピングセンター(SC)も20年までに100カ所にする。

 環境への配慮も、国内の大手企業の中でトップクラスだ。持続的な水産業を実現するための国際認証である「ASC」や「MSC」を取得した独自商品の数は53品目と、流通業では飛び抜けた存在。環境負荷を抑えたオーガニック商品の生産・販売にも注力する。

 全国に大型施設を多く持つイオンには行政からの要望も多い。ただ、そうした有形無形の貢献がビジネスの足かせと捉えられることもある。財務諸表には載らない自社の「隠れた価値」をどうアピールし、戦略的にファンを育てていくか。経営理念を収益や競争力に転嫁するプランも必要だ。

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