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リッチ菓子、もっとリッチに、大手、ブランドてこ入れ、百貨店ギフトの定番へ(やっぱりプレミアム)

[ 2017年11月17日 / 日経MJ(流通新聞) ]

原料、加工、見せ方まで厳選

 「ポッキー」やポテトチップスなどの高級版として大手菓子メーカーが百貨店を中心に展開する「リッチ菓子」に転機が訪れている。デパ地下の新星として登場した当時のブームは一巡し、息切れ感も出てきた。従来のブランドイメージの殻をどう破り、長く愛される商品に育てるか。知恵比べが始まっている。

 江崎グリコが百貨店を中心に販売する高級スティック菓子「バトンドール」。18日、バレンタインなどに対応した高額商品「同ラ レコルト」を発売する。ナッツや果物をふんだんに使い、味わいと食感にこだわったという。価格は1箱1051円と従来品の2倍で、1本あたり価格は約131円と同約100円高い。

 バトンドールはグリコが阪急うめだ本店(大阪市)と高島屋大阪店(同)とのコラボレーションで開発した商品だ。定番菓子のポッキーや「プリッツ」を下地に、溶かしバターやチョコレートなど原料を厳選してプレミアム感を出した。

 百貨店側は20代女性などの来店を呼び込む商材として、グリコは年配の富裕層を開拓する手軽なギフトとして位置づけ、12年10月に1号店を阪急うめだ本店に出店。オープン半年で初年度の売上高目標を達成した。その後もデパ地下を中心に店舗を広げる。

 11月中旬、阪急うめだ本店地下1階の食品売り場ではバトンドール売り場に行列ができていた。「友人のお土産に初めて買った」という30代女性から「大阪に来たときは必ず買う」という石川県在住の50代女性まで支持は広い。

 ただ、グリコでバトンドールの商品開発を担当する大森輝一マネジャーは「手軽なギフト需要は獲得できたが、百貨店での地位を固めるにはさらに高単価品も必要」と話す。

 ポッキーの「安価なイメージ」(大森氏)から脱するため、商品名からポッキーを省き企業ロゴも外す戦略は一定の成果を上げた。だが消費者からは「重要な場面での贈答品としては使いにくい」という声も。「高級ポッキー」のイメージから脱却できずにいる。

 百貨店側にすればリッチ菓子はあくまで集客の一策。だがグリコにとって百貨店で通用する洋菓子ブランドの育成は将来の経営を左右する重大問題だ。

 少子化とともに菓子の国内消費は頭打ちに。ポッキーは子供や子育て世代以外の購入は少ない。世代間で大きく異なる消費の「谷」を埋める策の一つが、シニア世代を中心とする贈答需要の掘り起こしだった。「大人の消費を意識した商品づくり」(江崎勝久社長)がその解となる。

 虎屋(東京・港)のようかんのように中元・歳暮にも贈られる定番ブランドへ――。ターゲットを40代以上の富裕層へ転換した。

 従来品も10月に初めて原料を刷新した。カカオを香りに特徴があるエクアドル産に切り替えるなど、原料へのこだわりが百貨店の客層にうけると踏んだ。購入数が多い客を招いたパーティーなどのイベントも今後開催する構えだ。

 阪急うめだ本店がリッチ菓子の開発企画を持ち込んだ菓子メーカーはグリコだけではない。カルビーは高級ポテトフライ菓子「グランカルビー」を投入。だが現在の売り上げは14年の発売当初から2割程度落ち込んでいる。

 てこ入れのため、12月1日に商品を刷新する。ジャガイモを厚めに切りじっくり揚げたフライにあぶりを加え、香ばしさを引き立てる。価格は1箱580円と従来より40円高く設定した。年内に14年時点の売り上げ規模へ回復を目指す。

 バトンドールの1箱500円程度という価格設定はメーカー間で1つの指標になってきた。リッチ菓子は原料だけでなく、販売促進費なども通常よりかかる。収益は実はスーパー用の菓子より小さい。それでも「廉価販売されず、直接顧客と接する機会は得がたい」(カルビー)とみて高級路線を維持していく。

 阪急うめだ本店によるとリッチ菓子4ブランドの売上高は16年度に合計20億円超。だが話題性を失えば低空飛行に陥るとの危機感は強い。洋菓子・ベーカリー商品部の星野大輔部長は「リピーターを意識した取り組みが必要な時期だ」と指摘。ブランドイメージの固着を避け、絶えず高めていく取り組みが必要とみる。

 ネスレ日本は百貨店以外の販路も探る。7月、東京・銀座に同社初の路面店「キットカット ショコラトリー」を改装開店した。これまで百貨店内に6店舗を展開し1本324円の商品などを販売。「働く女性を中心に高級品との認識は広がった」(同社)。今後はより本格的な洋菓子として提案するため、売り場の制約が少ない路面店を実験場として活用する。

 有名パティシエの高木康政さんが全面監修する。カフェではキットカットを使ったパフェなどを提供。オリジナルメッセージをキットカットの表面に刻めるサービスも始めた。

 ネスレはかつてスーパーで定番の特売品だったキットカットを「人へ贈る商品」へブランドイメージの転換を図ってきた。高木氏とのコラボ商品を初めて発売したのは05年だが、「当時からゆくゆくは百貨店で販売する専門店モデルを描いていた」(同社)。「従来型メーカーから顧客の課題を解決するサービス企業に脱却する」(高岡浩三社長)ため、高級ブランド化も手段の1つだとみる。

 百貨店に促される形で始まったリッチ菓子の潮流。だがメーカーにブランドを高め続ける戦略がなければ一時のブームで過ぎ去ってしまう。消費者が持つ大衆菓子という根強いイメージを打破できるか、本当の競争力はこれから問われる。

市場成長、2兆円規模に
健康効果で注目
訪日客にも人気

 大手メーカーが扱う流通菓子の市場は比較的堅調だ。矢野経済研究所によると2015年度の菓子市場は14年度比2%増の1兆9841億円だったとみられる。ドラッグストアが食品の取り扱いを広げており、訪日客の需要も下支え要因だ。チョコレートやアーモンドの健康効果が注目されているほか、素材にこだわった商品など高付加価値化も進む。

 一方で、小売店が扱う商品ジャンルの拡大で売り場の獲得は年々難しくなっている。明治がスナック菓子「カール」の東日本での販売を終了したようにロングセラー商品も安泰ではない。人手不足や人件費上昇を受け各社は展開ブランドを減らすなど採算改善を急ぐ。

 江崎グリコの江崎勝久社長は「菓子が嗜好品だった時代は終わり、これからは他の食品メーカーと競争して生活必需品を目指さなくてはいけない」と話す。中国では菓子市場の2割弱がネット通販に移行したのに対して日本はまだ数%で、コンビニやスーパー以外の販路開拓も遅れている。

 百貨店や路面店などメーカーの直営店は、これまで聞くことができなかった消費者の声を直接得られる貴重な場にもなる。課題が多い菓子業界で、高級ブランドの育成が競合と差を付ける一手になりそうだ。

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