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家計簿アプリ、消費嗜好つかむ、三越伊勢丹、異色サービス続々、4社に出資、ベンチャーの知恵活用。

[ 2017年12月8日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 三越伊勢丹ホールディングス(HD)がベンチャー投資を拡大している。昨年から今年にかけて、家計簿アプリのマネーフォワードや高級レストラン予約サイトのポケットメニュー(東京・渋谷)など4社に出資した。ベンチャー企業の異色のアイデアを取り込み、百貨店の顧客に多彩なサービスを提供する。

 三越伊勢丹HDのベンチャーキャピタル(VC)、三越伊勢丹イノベーションズ(同・新宿)の伊倉秀彦社長によると、ベンチャー投資の目的は「キャピタルゲインとサービス面の相乗効果が半々」という。2016年1月にファンドを設立後、老舗百貨店らしからぬスピードで4件の投資をまとめた。

 出資先企業の共通点は、百貨店の事業と親和性が高いサービスを展開していることだ。

 16年10月に出資したマネーフォワードは銀行口座の出入金やクレジットカードの使用履歴から自動で家計簿を作成するサービスを手掛け、550万人が利用する。このサービスを三越伊勢丹の「エムアイカード」の会員に紹介し、マネーフォワードがもつ家計簿のデータとひもづける。

 三越伊勢丹のカード会員のうち、すでに1万5000人がマネーフォワードに登録したという。三越伊勢丹は常連客が自社カード以外で購入した他店の商品のデータも得られ、顧客の好みや属性をより精緻に把握できる。

 自分たちが取りこぼした需要を知ることで、品ぞろえやサービスの改善につなげられる。「家計簿アプリは閲覧頻度が高く、イベントや商品案内など(提供者側から積極的にアプローチする)プッシュ型のマーケティングに活用やすい」(伊倉社長)という。マネーフォワードのアプリを使った節約術のセミナーを開くなど、客層を広げる取り組みも始めた。

 同年に出資したアクティブソナー(同・港)は中古ブランド品のオンライン買い取り・販売サービス。レストラン予約のポケットメニューは「ミシュランガイド」の星取得店など高級店に絞って紹介しており、いずれも百貨店の顧客と親和性が高い。

 三越伊勢丹イノベーションズは投資の詳細を明らかにしていないが、出資額は4件とも数千万円から1億円ほどとみられる。ベンチャー企業側にとっても、資金調達より三越伊勢丹の得意客とつながることのメリットが大きい。

 伊倉社長は「百貨店にどっぷりつかった社員は外の世界に疎くなりがちだ。ベンチャー企業との協業を通じて、社員の意識改革を促す狙いもある」と明かす。最近では社員から「こういうユニークな企業があるので出資を検討してはどうか」という提案が出てくるようになったという。

 低迷が続くとはいえ、百貨店が抱える上顧客は外部からみれば垂ぜんの的だ。ベンチャー企業の知恵と国内でも有数の購買力をもつ顧客を結びつける流れができれば、百貨店が殻を破るきっかけにもなる。

(中山修志)

【表】三越伊勢丹イノベーションズの投資先
社名        事業内容                  出資時期 
ギフティ      デジタルギフト券の贈答サービス       16年4月 
マネーフォワード  家計簿アプリ・クラウド会計ソフト      16年10月 
アクティブソナー  中古ブランド品のネット買取・販売サービス  16年11月 
ポケットメニュー  高級レストランの予約サイト運営       17年7月

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