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アスクル吉村芳記ECR本部部長――生鮮配送、要の物流築く、実験重ね、現場と解(旬材逸材)

[ 2018年1月23日 / 日経産業新聞 ]

 アスクルがセブン&アイ・ホールディングスと組んで2017年11月に始めた生鮮配送サービスの「IYフレッシュ」。提供地域はまだ東京都内の一部に限られるが出足は好調だという。アスクルにとって初めての冷蔵・冷凍商品の配送の要となる物流分野の立ち上げを率いたのがECR本部の部長、吉村芳記(48)だ。

 「こんにちは、アスクルロジストです。IYフレッシュのお届けです」。配達員が運んできた箱には野菜など食品が入った袋と、アスクルが通常扱っている日用品や文具がまとめて入っている。これが新サービスの特徴だ。

1時間単位でOK

 対象地域はまだ東京都新宿区と文京区だけだが、1時間単位の枠で利用者に時間を指定してもらい商品を届ける。セブン&アイが店舗などで用意した食材を、アスクルの個人向け通販「ロハコ」の日用品などと一緒に梱包。物流部分はアスクルの物流子会社の配送網を使う。

 17年2月の埼玉県三芳町でのアスクルの倉庫火災の後、セブン&アイ社長の井阪隆一が支援を申し出たことから両社の交流が始まった。運用や配送の課題を詰める分科会を立ち上げたのは夏ごろ。11月下旬のサービス開始まで半年もなかった。「短期間で互いの経営資源を組み合わせ、大きな負荷なく始められるかが勝負だった」(吉村)

 冷凍・冷蔵の設備を持つ保冷車を使わずに配送する仕組みづくりが大きなポイントだった。保冷車を使うとコストがかさむため、保冷バッグと配達区域にある店舗を活用し品質を損なわないよう短時間で届ける。吉村は「お客さんが都合の良い時間に受け取れるようにし、できるだけ受注に制約をかけない運営を期待されている」と気を引き締める。

 生鮮配送サービスが初めてのアスクル。当然、物流子会社の配送員も扱ったことのない商品ばかりだ。当初は現場から「卵のような割れやすい物が入った荷物はどう扱えばいいのか」と困惑の声が漏れた。荷物を丁寧に扱ったり、あえて「バン」と勢いよく置いたりして実験を重ね、許容範囲を導き出した。

 吉村はアパレルメーカーを経て06年にアスクルに入社。名古屋の物流センターの運営のほか、本部でのセンター運営管理など、一貫して物流関連に携わってきた。「物流センターの運営では日々の出荷をどう終わらせるか、施策を現場にどう展開するかを考えてきた」

「違う大変さだった」

 配送部門に移って取り組んだのが、IYフレッシュの物流の基礎になった配送サービス「ハッピーオンタイム」だ。細かな配送ルートをプログラムで決め、文字通りオンタイム(時間通り)に届ける。利用者が商品を受け取りやすい利点があり、一度で受け取れるというのは生鮮品の配送でも重要だ。

 もっとも2つのサービスの立ち上げは「違う大変さだった」。ハッピーオンタイムは「ゼロから」着手できたが、IYフレッシュは「相手に合わせていくところが大変だった。今あるものをフルに使って、足りないところや未経験の部分を補った」。

 生鮮配送のサービスには社長の岩田彰一郎も「ひきたてのコーヒーや焼きたてのパンを届けられる可能性もある」と手応えを強調する。あくまで「夢のような話」(岩田)ではあるが、短時間で確実に届けられる物流網を提供できれば、事業の可能性は大きく広がる。

 もちろん課題はある。その一つが遠くの地域まで届けられるようにするための保冷技術の向上だ。保冷バッグの性能などが高まれば長時間持ち運べるようになる。大規模な配送拠点でまとめて商品を用意し、効率的に配送することも視野に入る。「保冷を工夫できるとより効率よく、温度管理した商品を届けられる。そういう挑戦も(セブン&アイと)一緒にやっていきたい」と吉村は話す。

 「IYフレッシュの出足はどうか」と尋ねると、「スタートはちゃんと切れたかな」と淡々と答え「ここからどう根付かせるか考えないといけない」と続けた。IYフレッシュは今後、18年度に東京23区に対象地域を広げていく計画。暑い夏場を乗り切る課題の洗い出しにも着手する。配送のプロは立ち止まっていられない。=敬称略

(諸富聡)

 よしむら・よしき アパレルメーカーを経て2006年アスクル入社。物流施設の現場で運営管理に携わった後、本部の物流センター部門を経て16年から現職。「ロハコ」の配送サービスを担う。

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