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ケーズホールディングス相談役加藤修一氏(7)従業員の働く意欲高める(HISTORY暮らしを変えた立役者)

[ 2018年1月31日 / 日経MJ(流通新聞) ]

POS開発と店頭公開

 「がんばらない経営」と私が言い始めたのは2000年くらいからだったと思います。意味するところは「背伸びをせず、やるべきことをきちんとやる」ということ。この考え方は1982年に社長に就いたときから変わっていません。

 がんばらずに成果を挙げるためには従業員が能率的に働ける環境づくりが大切です。機械にできることは機械に任せ、従業員は人にしかできない接客などの仕事に振り向けるべきです。

 そうした考えもあって、87年に自動発注機能を組み込んだPOS(販売時点情報管理)システムを導入しました。大型家電から電球などの小物まで店で扱う約1万アイテムすべてを取引先メーカーとオンラインで結び、売れた分が自動補充できる仕組みです。

 それまでは在庫管理から発注まで全部が手作業。従業員はレジで商品が売れるたびに4枚複写の伝票を書き起こし、さらに日報にも付けました。実際の在庫と日報を見比べながら発注作業をするのは毎週月曜日。この作業に時間を取られ、お客様をないがしろにしてしまうこともありました。

 従業員にはそれぞれ担当を割り振り、新人は大抵、電球などの小物です。月に数個しか売れないボタン電池を大量発注するといった失敗はよくありました。適正な店頭在庫数量をあらかじめ決めて、足りなくなった分を発注する。そんな決まりを慌ててつくったこともあります。こうした試行錯誤の繰り返しが後々、POSシステムを導入する際に役立ちました。

 POSの機器はシャープ製に決め、ホストコンピューターについてはNEC、富士通、東芝の3社に見積もりをお願いしました。

 当時は猛烈なスピードで店舗を増やしていました。同じ日に都内にあるシャープの会議室を借りて、3社の担当者と商談することになり、「1〜2カ月くらいで稼働できないか」と要望を伝えました。すると、NEC、富士通の担当者は「システムの完成には1年かかります」と同じ答え。その表情は「全く、これだから素人は」とあきれているように見えました。

 ついたて越しに待っていた、東芝の担当者には先に商談に入った2社とのやり取りが聞こえていました。「2カ月でできますと言えば受注できる」と思ったそうです。

 東芝のシステムエンジニアと1週間ぶっ続けで打ち合わせをするなどして、商談から3カ月後には稼働にこぎ着けました。しかし、がんばるとろくな結果にはなりません。当初1年間はバグばかり出て、軌道に乗るまでは苦労しました。

 POSに限らず、従業員の仕事の能率が上がる仕組みは積極的に取り入れました。従業員は会社の株を持っていたことから、自発的に工夫して働き、業績は右肩上がりで推移しました。

 上場を意識するようになったのは85年です。きっかけは日本合同ファイナンス(現ジャフコ)からの誘いでした。自分が持っている株式の価値がどのくらいなのか。従業員にわかるようになれば、働く意欲がさらに高まると考えました。

 88年4月14日、店頭市場(現ジャスダック)に株式を公開しました。場が閉まった午後3時、東京・茅場町にある日本証券業協会から、水戸の自宅に電話をかけました。会長である父に「株価は1900円に決まりました」と報告すると、「期待通りの水準で良かったな」と。私としては店頭公開で満足する気はなく、「次は東証2部上場」と目標を見定めていました。

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