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楽天、鬼門の生鮮に挑む、ウォルマートとネットスーパー、アマゾン対抗、店に足場。

[ 2018年1月27日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 楽天は26日、米ウォルマート・ストアーズと日本でネットスーパーを展開すると発表した。食品のネット通販は日本でも潜在的な需要があるが、鮮度管理やきめ細かな物流網が必要で収益が上げにくい「電子商取引(EC)の鬼門」といわれる。楽天は西友の実店舗を生かした事業モデルを確立し、米アマゾン・ドット・コムなどに対抗する。

 楽天は3月にウォルマート傘下の西友と共同出資で新会社を設立する。9月までに西友のネットスーパーを移管する形で新サービス「楽天西友ネットスーパー」を始める。楽天のポイントサービスを導入するほか、同社のサイトで扱う地域産品や簡便調理品などを新たに品ぞろえに加える計画だ。

 楽天の三木谷浩史会長兼社長は26日の記者会見で「世界を見れば(ネットと実店舗が)いかにハイブリッドしていくかが大切」と述べた。ウォルマートのダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)は「全ての技術でベストではいられない」と述べ、互いの強みを生かす重要性を強調した。

 西友の店舗から商品を集荷して届ける仕組みは維持する。別途、ネットスーパー専用の物流拠点も設ける。9300万人いる楽天ポイント会員の購買情報を活用し、人工知能(AI)による分析などで精度の高い商品を提案する考えだ。

 日本で日用品や衣服のネット通販が急拡大するなか、新鮮な野菜などの食品を扱うネット通販は伸び悩む。

 日経MJが2017年9月に実施した第6回ネットライフ1万人調査によると、生鮮配送サービスを利用したいと考える人は20・2%にとどまった。「鮮度や商品の状態を自分で確かめたい」「送料や会費が割高」といった慎重姿勢の消費者が多かった。

 店舗の運営も難しい。傷みやすい食品は常に廃棄リスクと背中合わせだ。在庫を減らせば、悪天候などで急増する需要に対応しきれない。店や物流ドライバーの人手不足によるコスト増も痛手で、日本で展開するネットスーパー事業者の多くが十分な収益モデルは築けていない。

 小売り最大手のイオンもグループのスーパー約2400店のうち、ネット対応は約300店。イトーヨーカ堂は169店中137店と比較的多いものの、ネットスーパーの売上高は16年度に447億円と全体の3%強にとどまる。西友も340ある店舗のうち、ネットスーパー対応店は4割未満にとどまる。

 ただシニア層や働く女性、単身世帯の増加といった国内市場の構造変化が、ネットスーパーの普及を後押しする。買い物に行けない、行く手間を省きたいといったニーズは今後高まる見通し。食品でも新鮮で早く届くサービスを求める消費者が増える見込みだ。

 この動きをにらみ日本でも生鮮宅配にネットと実店舗の大手が相次ぎ参入する。アマゾンは17年4月に日本市場に参入し、セブン&アイ・ホールディングスはアスクルと組み同年11月に生鮮宅配を始めた。

 現金主義の根強い日本でキャッシュレス決済が広まりつつあることも追い風だ。楽天の三木谷社長は「ペイメント(決済)での連携も検討する」と述べた。

 楽天が意識するアマゾンの生鮮宅配事業では、日本に実店舗はない。楽天は西友の実店舗を最大限に生かせば、アマゾンにない収益モデルを日本で確立できる可能性がある。

 楽天のEC事業は出店企業の商品を売る仮想商店街型である「楽天市場」が主力だったが、店舗と連携した通販やフリマアプリのような個人間取引でも収益源を育てている。ウォルマートとの提携を機に多角化を実現できれば、日本でのEC市場で存在感が一段と高まる。

 店舗を活用した通販では2018年4月にビックカメラと家電専門の通販サイトを立ち上げる。個人間取引の分野では16年に買収したファブリック(東京・渋谷)が運営するフリマアプリ「フリル」を前面に出す。楽天自ら始めた「ラクマ」と合わせ、18年半ばにも総取引額が年2000億円の規模に達する見通しで、業界首位のメルカリ(東京・港)を追う。

 楽天市場のように出店企業に商品の掲載や配送を任せきりにするだけでは、価格や配送スピードでアマゾンなど競合に見劣りすることが多い。ウォルマートとの提携で主体的に通販事業を運営するのは、こうした課題に対応する狙いもある。

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