日経メッセ > リテールテックJAPAN > ニュース > アマゾン、アパレルの陣、ゾゾやユニクロ、国内14兆円市場巡り攻防。

日経の紙面から

アマゾン、アパレルの陣、ゾゾやユニクロ、国内14兆円市場巡り攻防。

[ 2018年2月4日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 あらゆる産業をのみ込むアマゾン・エフェクトが日本のファッション業界を揺るがしている。嗜好性が高い洋服はネット通販に適さないとみられてきたが今春都内にアマゾンが開く撮影スタジオは日本を開拓する意思表示と受け止められた。14兆円規模と新車販売に匹敵する市場でゾゾタウンやユニクロが迎え撃つ。アマゾンの進撃は続くのか。アパレルの陣が試金石となる。

 「アマゾンで売るつもりはない」。TOKYO BASEの谷正人最高経営責任者(CEO)は言う。セレクトショップと自社ブランドで8期連続の増収増益を見込み、勢いがある同社は日本ブランドをグローバル発信する目標を掲げる。世界に販路を切り開きたいはずだが「アマゾンに出すのは総合スーパーに出店するようなもの」と漏らす。

 書籍から食品まで低価格でそろうのがむしろデメリット。トレンドや世界観を大切にするファッション産業ではブランドイメージの毀損につながりかねないとみる。

 「アマゾンでブランドイメージを伝えるのは難しい」。別のアパレル幹部も言う。「サイトが無機質な印象」という声はかねて業界で根強い。ただ、次々に聞かれるアマゾンへの突き放したような評価は警戒感の裏返しでもある。

小売りを次々駆逐

 書籍や日用品のネット販売で世界の消費地図を塗りかえる米アマゾン・ドット・コムはリアルの小売りを次々に駆逐した。昨年はスーパーの米ホールフーズ・マーケットを傘下に収め米トイザラスが破綻した。売上高は日本円換算で20兆円近い。クレジットカードや住所、購買履歴を組み合わせた分析で売れ筋商品を巧みに推奨して販売につなげる。品目も生鮮食品まで広げより安く、早く、便利にという欲求に応えて先進国から新興国まで事業を広げ続ける。

 米ギャップの多くの店舗を閉鎖に追い込んだ衣料品販売高は3兆円規模との調査もあり、既に米国では定着している。日本でも本腰を入れるのは、14兆円にものぼる衣料品の国内市場のうちネット通販比率が1割で、伸びしろが大きいとみたためだ。

 アマゾンジャパン(東京・目黒)は2017年秋に衣服などに特化した物流拠点を大阪府に開設。埼玉県に続く2カ所目で、全国に大量の衣料品を発送する体制を整えた。AOKIホールディングスやコナカといった紳士服大手と専用ページを開設するなど商品点数も着々と増やしている。

 都内に開く撮影スタジオは7500平方メートルと米国や英国の施設よりも大きい。スタイリッシュな画像を使う通販ページを展開してファッション小売りを伸ばそうと試みる。

 それでもアマゾンになびかないブランドは日本最大のファッション通販サイト(3面きょうのことば)、スタートトゥデイのゾゾタウンに頼る。アマゾンジャパンの手数料が成約の1割台なのに対し、ゾゾは撮影などのサービスも含むものの3割超。高くても消費者の個性と好みに応えたいメーカーやセレクトショップを吸い寄せる。TOKYO BASEはネット通販の9割近くをゾゾ経由で売る。

 ゾゾの魅力は男女のモデルを使った豊富な写真だけではないようだ。芸能人らが着こなしをコーディネートするコーナーでは、推奨された組み合わせをウェブ上でまとめて注文できる。ファッションリーダーが集まるサイトという印象づけに成功した。

 若年層には正確なサイズが分かるとの評価が高い。ブランドによって同じ「M」でも大きさが異なる不便さに着目し、実寸による独自サイズを表示し直した。ブランドごとにある「Mだが大きめ」というような曖昧さを排除した。

 ネット通販で消費者が嫌う返品や交換のリスクを減らす努力は徹底しており、17年秋に発表した採寸用ボディースーツは多数のセンサーにより着るだけで体中のサイズが測れる。ファッション性に加え使い勝手を高めたゾゾの年間取扱高は2千億円を超えた。

リアル店舗磨く

 「アマゾンは脅威ではない」。ユニクロを手掛けるファーストリテイリングの柳井正会長兼社長は言う。強みを持つリアル店舗の魅力を高めようと、国内外の全商品を対象にICタグを取り付け始めた。アパレルのリアル店舗はサイズや色、感触を実際に確認できる優位性がある一方、「欲しいものが店にない」「買い物に時間がかかる」といった弱点を抱える。欠品を減らすと同時にタグの情報を自動で読み取ることで会計を瞬時に済ませ、待ち時間を無くしてサービス力を引き上げる。

 今後は購買履歴のデータ分析で需要を予測しコストダウンと品ぞろえのいい店作りを追求する。ネット通販でも店頭にないサイズを頼めるセミオーダー事業をけん引役とし、ユニクロの国内売上高のネット比率を現在の7%から30%に高める目標を掲げた。柳井氏は専門性の高いサービスや商品の質を極め、並行してネット販売に力を注げばアマゾンに対抗できるとみる。

 米国の17年12月の衣料品系流通業の雇用者は約131万人で07年のピーク時から14%減少した。アマゾンは産業構造を根底から覆す。その懐に飛び込むか、距離を置くか。世界の小売りやサービスは二者択一を迫られている。だが技術革新を促し、産業の進化を導くのは独占よりも競争だ。アパレルの陣が試すのは単なる企業の浮き沈みだけではない。(高橋彩、綱島雄太)

ニュースの最新記事

PAGE TOP