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日経の紙面から

1月日経消費DI、小売り・外食・サービスすべてプラス、22年ぶり「ハレ」以外も回復、財布のひも「もうほどく」。

[ 2018年2月4日 / 日経MJ(流通新聞) ]

値上げ受け入れ 明るい服売れる プチぜいたく楽しむ

 訪日客や富裕層の高額消費だけでなく、節約志向の強い一般の消費者でも財布のひもが広く緩み始めたようだ。日本経済新聞社が四半期ごとにまとめる「日経消費DI」の2018年1月度調査で、消費関連企業の足元の景況感を示す指数は約22年ぶりに、小売りなど「物販」、「外食」、「サービス」の3分野が全てプラスとなった。前回調査で業況判断指数がマイナスだった外食では値上げをしたにも関わらず、以前のような客離れは起きていない。(関連記事11面に)

 17年10月1日に、一律の価格を税抜き280円から298円に値上げした鳥貴族。大阪市内の各店舗では値上げ後も変わらず、週末は店の外に列ができる。週に1回は利用するという会社員の野島晃さん(38)は「値上げにはもちろん抵抗があるが、1品数十円程度なら大きなインパクトは感じない。以前と変わらず使っている」と話す。

 実際、同社の既存店売上高は、値上げに週末の台風が重なった10月こそ前年同月比7・0%落ち込んだが、11月は5・3%増と持ち直した。12月も0・4%増と堅調だ。大倉忠司社長は「現状、想定の範囲内で推移している」と自信を見せる。

 ゼンショーホールディングスも昨年11月、牛丼チェーン「すき家」の牛丼を約3年ぶりに値上げした。原材料価格の上昇が主な理由だが、売れ筋の並盛りは据え置き、大盛りやキムチなどサイドメニューを10円上げた。

 過去には値上げが客離れを招いたこともある。今回は対象商品を絞り、上げ幅を最小限にとどめたことで、12月の既存店売上高は前年同月比5・5%増と好調だった。

 外食の業況判断DIは今回、プラス4と前回に比べ22ポイント改善した。昨年10月の前回調査では台風の影響などで大きく客足が落ち込んだが、かき入れ時の年末年始にかけて順調に回復。3カ月後の業況見通しもプラス18と他分野に比べ明るい。

 人手不足による人件費増や酒類の安売り規制強化などを受け、外食企業では値上げが相次ぐ。消費者の価格志向への警戒感はなお強いものの「数年前は明らかに(値上げに)拒否感があったが昨年あたりから変わった」(ロイヤルホールディングスの菊地唯夫会長)。

 外食に先行し改善してきた物販分野。業況DIはプラス5と3ポイント上昇だが、中でも目立つのは、前回のプラスマイナスゼロからプラス18へ大幅に改善した百貨店だ。

 「国内外のブランドの高級時計を買い求める訪日客が増えている」。松屋の秋田正紀社長は笑顔で話す。銀座店(東京・中央)は売り場改装もあり、100万円超の商品でも良く売れる。日本百貨店協会によると17年の免税売上高は前年比46%増の2704億円。「爆買い」が話題となった15年の1943億円を超え過去最高を更新した。

 「夫のプレゼントを買いに来たが、新デザインを見たら自分も新調したくなった」。大丸東京店(東京・千代田)でコートを選んでいた20代の主婦は話す。婦人服ブランド「23区」の店長は「ブルーやベージュなど明るい色の売れ行きがいい。売り場で即決するお客さまも多い」と回復を実感する。売り場では流行のデザインや明るい色の商品を前面に打ち出す。

 低迷が続いた衣料品も復調し、J・フロントリテイリングの山本良一社長は「もう少し見極めたいが、脱デフレの兆しが見えてきた」と語る。

 サービス分野でも財布のひもが緩む動きがみられる。ヒルトン東京(東京・新宿)では、平日3900円(税・サービス料別)、土日祝日4050円(同)と高額なスイーツビュッフェの年間来場者数が10万人に迫る。「女子大生や会社員など若い女性が増えている」

 高評価の旅館・ホテルを厳選し、添乗員も同行するクラブツーリズムのプチぜいたくな旅行商品「プレミアムステージ」は、首都圏発の国内ツアーの最近3カ月間の売上高が前年同期を1割上回った。北海道なら1人当たり5万円ほど高いが、「一般的な客層の旅行需要がじわり伸びている。株高が影響している可能性がある」(担当者)。

 政府は1月の月例経済報告で国内景気の基調判断を「緩やかに回復している」とし、「緩やかな回復基調が続いている」から引き上げた。上方修正は7カ月ぶり。同様の表現は、消費税率引き上げ直前の駆け込み需要があった14年1〜3月以来で約4年ぶりとなる。

 日経の消費DIでも、低迷を続けていた「消費者の支出意欲」の項目がプラスマイナスゼロと、12ポイント改善し、2年ぶりにマイナス圏を脱した。

 富裕層が訪日客と両輪で消費をけん引する。今回の調査で株高の影響を聞くと「富裕層の消費を刺激した」との回答は計77・5%を占めたが「中間層にも波及した」との見方は5・8%。消費の裾野の拡大が持続的な本格回復に不可欠だ。

 ただ、マインド改善が一本調子で物価上昇にはつながらないところに今の消費の実情がある。

 業況DIが前回比23ポイント上昇しプラスマイナスゼロとなったスーパー。明るい兆しがあっても、経営者からは低価格対応を進めるとの声が多い。

 年末年始の売り上げが前年同期比2〜7%増えたイオンリテール。おせちやローストビーフなど「ハレ型」商品が売れる時期だが、岡崎双一社長は「通常の商品の訴求をしっかりしたためうまくいった」と分析する。

 イオンは1月、グループのPB(プライベートブランド)100品目を平均で10%値下げした。16年秋から始めた段階的な値下げは4回目。「価格に敏感な人が多いのは確か」とし、今後も値下げを継続する方針。

 イズミの山西泰明社長も「株高による資産効果もあり、ハレの日需要はいい」としつつ「何かあればすぐ沈みそうで、全体ではまだ上向いている感じではない」と話す。

 コンビニエンスストアも業況DIが11ポイント改善しスーパー同様、プラスマイナスゼロとなった。だがローソンの竹増貞信社長は「消費のベースは依然厳しい」という。

 今回は全14業種中、5業種の業況DIが好不調の分かれ目となるゼロだった。全体では改善方向にありながら、本格的な回復には自信が持てない様子がうかがえる。

 回復持続へのカギを握るのが賃金の動向だ。政府の求めを受け、経団連は今年の春季労使交渉で「年収ベース」も選択肢に含め「3%賃上げ」を加盟企業に促す。

 ただ、反応は業種・企業で割れる。ステーキ店「いきなり!ステーキ」を展開するペッパーフードサービスは正社員を対象に基本給のベースアップ(ベア)と定期昇給を含め平均で約6・4%賃上げすると決めた。人手不足下の好業績を受け、過去最大の上げ幅で従業員に報いる。一方、あるスーパーの経営陣は「3%も上げたら将来の負債になる」と、必要性は認めつつも難色を示す。

 三菱総合研究所の武田洋子チーフエコノミストは「脱デフレの環境は整いつつあるが、完全に脱却できるかは賃金上昇率次第」と話す。そのうえで消費の活性化には「持続可能な社会保障制度が重要」と、高齢化社会における将来不安を払拭する必要性を指摘する。

(中川雅之、出口広元)

【表】商品の価格設定を変更した主な企業   
値上げ 
鳥貴族        2017年10月、一律で設定している価格を280円から298円に 
テンコーポレーション 天丼屋「てんや」で1月、500円の天丼を540円に 
テーブルマーク    パックご飯と家庭用冷凍食品の一部を2〜3月に値上げ 
ヤマト運輸・佐川急便 2017年10〜11月に個人向け宅配便料金を値上げ 

値下げ 
イオン        1月にPB100品目を平均10%値下げ 
良品計画       衣料・服飾雑貨の125品目を1月から順次値下げ

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