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いつでもどこでも、何でも、楽天・ウォルマート連合が目指す、究極の買い物インフラ、ネットも実店舗も、大手、総合チャネルに。

[ 2018年2月2日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 楽天と米ウォルマートが日本のネットスーパー事業で提携した。「いつでもどこでも、何でも買いたい」という日常的な買い物ニーズに対応。同時に、ゆりかごから墓場までコミットできる「インフラ」作りが国境や業態の壁を越えて本格的にスタートしたことを示している。米アマゾン、セブン&アイ・ホールディングス......。消費者を最も魅了する標準モデルはどこになるのだろう。

 「ユーザーの生活をより便利で豊かにする」。楽天の三木谷浩史会長兼社長は1月26日、記者会見で強調した。9月までに、ウォルマート傘下の西友と新会社を設立し、ネットスーパーの共同運営を始める。

トップ同士構想

 楽天とウォルマートが話し合いを始めたのは1年ほど前。三木谷社長が海外のイベントに足を運んだ際などに、ダグ・マクミロン最高経営責任者(CEO)らと会談。両社のトップ同士が議論を重ねながらネットスーパーの構想を固めていったとみられる。限られた幹部による極秘を貫いた。

 楽天関係者は「両社ともこれまでの事業で課題が見えている。顧客基盤を使えるのも強み」と語る。新サービスは西友がこれまで十数の県などで展開してきたネットスーパーの配送網を活用する。米アマゾン・ドット・コムが昨年日本で始めた生鮮宅配「アマゾンフレッシュ」の地域はまだ都内の一部などに限られる。「我々は後発だとは考えていない」という。

 消費者のニーズに応えるには生半可な品ぞろえやインフラでは難しい――。この思いは楽天とウォルマートに共通するようだ。楽天は2012年に生鮮宅配「楽天マート」を始めたが、思うようには伸びず、昨年に事業子会社の吸収合併を発表。三木谷社長はウォルマートとの提携会見で「実店舗とのハイブリッド型の方が効率的」と、共同運営する新サービスに集約する意向を示した。

 一方の西友。ネットスーパーとは別に運用してきたネット通販「ビッグセーブ」を1月末にひっそりと閉鎖した。雑貨などを扱い、店舗が近くにない消費者向けに運営してきたが、楽天との提携を機に新たなネットスーパーに集中する。西友は閉鎖の理由を明らかにしないが、アマゾンとの競合があったとみられる。

 スマートフォン(スマホ)が普及し、消費者はパソコン中心のネット生活よりも「いつでも、どこでも、何でも」の買い物が当たり前になった。都内に住む30代の主婦は、雨の日や体調が悪い時などにイトーヨーカ堂のネットスーパーを使う。だが普段よく訪れるのは、より近くにある他のスーパーだ。「その時に便利な買い方を選ぶだけ。ネットか店舗かなんて意識しない」という。

 事業者がネットとリアルを区別する意味は薄れた。だが逆に、オンラインでもオフラインでも顧客との接点を持てれば、家計支出の多くの部分を握れる可能性が広がる。

配送一元化へ

 満足度を高める必要があるのは顧客窓口だけではない。「楽天市場全体でワンデリバリーを実現する」。ウォルマートとの提携発表から4日後の1月30日。三木谷社長は都内で開いた楽天市場の出店企業向けカンファレンスで力説した。これまで楽天市場の配送は出店企業に委ねてきたが、今後、独自の物流網を築き、店舗からの配送を一元化する構想だ。

 消費者の自宅に届けるだけでなく、駅や店舗のロッカー、コンビニエンスストアなどでも荷物を受けとれるようにする。ネットで買った服を店舗で試着し、返品もできるといった、細やかなサービスも視野に入る。

 カンファレンス出席者の反応は分かれる。「今まで店舗は置いてけぼりという印象だった」と語る、首都圏の店舗の担当者は「(物流で先行する)アマゾンを超える気概を感じた」と評価。一方、別の出店企業の担当者は「『ユニクロ』だって失敗を重ねている。今から始める楽天の物流がすぐうまくいく気はしない」と冷静に話す。

 楽天の最近の大型案件は、直接のネットサービス以外の強化も目立つ。1月29日には野村ホールディングス傘下の朝日火災海上保険(東京・千代田)を買収すると発表。17年末に打ち出した携帯電話事業に続く新分野への参入表明だ。

 既に楽天は生命保険、旅行予約、電子書籍、結婚情報など多様なサービスを傘下に持つ。多くの消費者窓口から得たデータで分析精度を高め、ポイントシステムや共通のIDで結びながら消費者の「欲しい」に迫る。

 楽天と組んだウォルマートは米国で逆の動きを見せている。ネット企業を相次ぎ買収し、ネットと店舗を組み合わせたサービスを急速に広げている。2月1日から、それまでの社名「ウォルマート・ストアーズ」から「ストアーズ」を外した。もう物理的な店舗だけのビジネスではないという最大の意思表示だ。

 ネットだけでもリアルだけでも消費者を満足させることは難しい。重要になるのは、あらゆる接点を通じて顧客と関係を深め、商品を届ける仕組みの再デザインだ。

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