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ヒットの予感――花や料理…小売店で習い事、なじみの店で気軽に開始(消費を斬る)

[ 2018年2月19日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 小売店に「学び」を求める消費者が増えている。物を買うだけでなく、技術や知識を身につけ人ともつながりたい客と、店や商品になじんでほしい売り手。双方の思いが重なり「学べる店」が各地に広がる。

 仙台市に昨秋開業したみやぎ生協錦町店。1階は物販、2階はソファやカウンター、子供の遊び場がある約100席のイートイン「コープカフェ」だ。一角ではハンバーガーも提供する。このカフェの大テーブルでほぼ毎日、何らかのミニ教室が開かれている。

 今月13日はフラワーアレンジメント。近くの生花店の店員が指導する。料金は花代と材料費で500〜800円程度。使う花は1階の売り場で選ぶ。初めて参加した近所の女性は「ふだんは買ったものをそのまま花瓶に飾るだけ。こうして手を掛けると全く変わりますね」と声を弾ませた。

 書道、玩具、体操、ネイルなど幅は広い。「買い物にきた人が『面白そうだ』とその場で参加を決める方も多い」と山岸正治執行役員。講師は地域の専門家が務め、参加者同士も含め人の輪が広がる。「ここに生協ができてよかったと思ってもらえれば」と語る。

 有機野菜など丁寧に作られた食材を集め4年前に開業した「フードアンドカンパニー」(東京・目黒)。大テーブルでは味噌づくりや包丁研ぎなど、多彩なワークショップを開く。

 「店は単に物を売る場ではなくサステナブルな食や消費を発信する舞台」と同店の谷田部摩耶氏。「食との向き合い方に気づきがあった」などの感想をもらうという。こうした取り組みを通じて支持者を広げ、最近新宿に2号店を開いた。

 イオンが麻布十番に開いた有機食品スーパー「ビオセボン」(東京・港)も中央に大テーブルを置く。ふだんはイートインだが、定期的に教室を開く。島根県の食品会社が合同で開いた講座の参加者は「目の前の商品がどう作られたのか、知ることができよかった」と語った。同店も近く多店舗展開に乗り出す。

 2016年の中央教育審議会生涯学習分科会に提出された「ケイコとマナブ」(リクルートマーケテイィングパートナーズ)による調査結果をみると、直近1年間に「何かを学びたい」と思った人は若年層で7割前後、高齢者層も4割から5割と高い。しかし実行者は1割から2割台にとどまる。費用がかかること、時間の不足、内容や結果への不安が大きな壁になっていると同社は分析する。

 なじみの店の一画で気軽に参加できる学びの場は、こうした壁を取り除く。

 東京都生活協同組合連合会(東京・中野)は、本部ビル4階に昨年、交流スペース「えんがわ」を設けた。畳敷きのコーナーやキッチンもあり、各種催しに無料で貸し出す。

 余った食材を持ち寄る料理会、子供向け学習支援など、普通の商業イベントとはひと味違うものも目立つ。「地域貢献を通じて生協を知ってもらう狙いもある」と都生協連の担当者。

 イートイン併設は小売店の流行だが、目先の売り上げだけを狙うと居心地の良さは生まれない。学びの提供を通じたコミュニティーへの貢献は、長い目でみた顧客づくりにつながる。

(編集委員 石鍋仁美)

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