日経メッセ > リテールテックJAPAN > ニュース > ジンズ社長田中仁さん――メガネ超える「次の目」へ、集中力測定、新たな価値(トップに聞く)

日経の紙面から

ジンズ社長田中仁さん――メガネ超える「次の目」へ、集中力測定、新たな価値(トップに聞く)

[ 2018年2月19日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 低価格でおしゃれ、パソコン用やスポーツ用などメガネ業界に新風を吹き込んできたジンズ。最近も、あらゆるものがネットにつながる「IoT」、近視抑制など新たな分野にチャレンジしている。田中仁社長は「事業領域はメガネではなく、見ること」と将来を見据える。

(聞き手は日経MJ編集長 中村直文)

 ――以前、東京・原宿のオフィスにいたときは会議は思い立ったらやる、と話していました。

 「そういえば最近は定例会議が増えましたね」 

 ――大企業病ですか(笑)

 「確かに動きが悪い。もう一度締め直さないと(笑)」

こどもレンズ
「近視を抑制」

 ――パソコン用メガネから6年。今の最優先は何ですか。

 「1つはバイオレットライト(紫光)への取り組みですね。子供が外へ出なくなって太陽の光を浴びることが少なくなっています。実は近視の増加と関連があるそうです。そこで目に有害な紫外線をカットしつつ、子供の目に必要なバイオレットライトを通すメガネを2017年に発売しました。こどもレンズです」

 「法律の問題もあって近視の進行抑制とはうたえません。この前調べたら、慶応の中等部はとても多くの生徒が近視で、東京・江東のある小学校でも70%に達しています。近視は失明につながりかねないし、徐々に普及していくと思います」

 ――従来のメガネの概念を超えるのですね。

 「その意味で言うと(目の動きなどから集中力が測れる眼鏡型端末)『ジンズ・ミーム』ですね。これもメガネのビジネスモデルを革新する可能性がある。メガネは売価から原価と販管費を引いて利益を出す従来型の小売りですね。でも世の中は相対的にモノの価値は下がっています。人は体験にお金を使うようになっています」

 「ウーバーも車を呼んで乗車し、その後に領収書が送られてくる一連のプロセスが体験としてデザインされています。米アマゾンもプライムなど付帯サービスを含めて体験価値を感じる。我々も新たな事業モデルを作るチャンスが来ています」

 ――インターネットの活用もテーマですね。

 「もちろんデジタルが中心で、IT(情報技術)のチームにはそう檄(げき)を飛ばしています。リアル店舗はどんどん変わらないといけない。アマゾンをポチるだけでメガネが出てきちゃうかもしれない。メガネってパンツの次に長く付けているんです。そこから顧客の望むサービスとかデータにつながれば、新たな価値を生みます」

 「だから事業領域は『見る』ことです。ミームを使うことで集中しているかどうかが分かり、フィットネスとも提携しています。つくづく思うのは日本は先進国で一番生産性が低い。フランスのスタッフは長期休暇も取るし、朝は遅く帰るのも早い。要するに日本は嫌々仕事をやって、集中力が弱く、生産性が上がらないのだと思います」

一人で考えて
生産性アップ

 ――ミームが生産性向上につながると。

 「今まではどこもエビデンスを取れませんでした。我々は可能になった。実は当社のオフィスは3年前に日本経済新聞社から賞を頂いたのですが、ミームで調べると全然生産性が上がっていませんでした。原因はコミュニケーションが活発すぎて、集中力が高まっていなかったのです」

 ――どのように改善したのですか。

 「実験の結果、1人で考える時間を多くつくって、その後いったん共有し、また1人になって、最後はワイワイガヤガヤというのが一番効率的です。従来のオフィスはワイガヤが中心でした。ジンズでは『シンクラボ』という施設を作りました。禅寺のような1人で瞑想(めいそう)できる空間を備えています」

 ――モノとしてのメガネビジネスですが、1人当たりの所有数は増えたのでしょうか。

 「以前よりも増え、購買サイクルも短くなりましたが、まだまだです」

 ――17年に1万円台の商品を出しました。成功しましたか。

 「5000円、8000円、1万2000円にして、やはり5000円の売上高が一番大きいです。昔は4900円が最低価格で、1万2000円の商品がいっぱい売れればまかなえるわけですが。まだ1万円以上の商品で『これなら』というのが育っていないのでしょう。8000円を50%、5000円が30%、1万2000円が20%くらいにしたいですね」

 ――景気が少しぐらい上向いてもモノの売れ行きは変わりませんよね。

 「いま世界の景気が熱すぎます。でも本当に実体を伴っているのかなと。例えば米国の店がものすごくいいんですよ。30〜40%増で伸びている。広告もそんなに増やしていないのに。なぜか。実はデフレが進んでいるんだなと思います」

 ――国内出店はどうですか。

 「店舗は500までは余地があります。使われ方も変わりますから、新たな体験の場に切り替える必要があります」

業績データから
売上高1000億円へ新機軸

 ジンズの2017年8月期の連結売上高は505億円と前の期比9%増えた。価格改定やコラボ企画などが好調。テレビCMなど宣伝費を減らし、営業利益は54億円と47%増えた。18年8月期は郊外への積極出店などで売上高は554億円と10%増、営業利益は66億円と22%増を見込む。

 国内の眼鏡市場は4000億円程度と横ばい傾向。今後は眼鏡型端末「ジンズ・ミーム」など新機軸の商品を投入していく。100店以上の中国に加え、台湾やフィリピンなど海外の店舗も広げ、売上高1000億円、業界トップを目指す。(沖永翔也)

 たなか・ひとし

 1981(昭56)年、高校卒業後、前橋信用金庫(現しののめ信用金庫)に入庫。88年にジェイアイエヌ(現ジンズ)設立、社長に就く。眼鏡事業は2001年から。視力は良くダテ眼鏡。14年、慶大院修了。群馬県出身。55歳。

ニュースの最新記事

PAGE TOP