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「縮んで稼ぐ」、外食・小売り、新常識、人手不足時代の「時短経営」、ロイヤルホスト、いなげや。

[ 2018年2月26日 / 日経MJ(流通新聞) ]

ロイヤルホスト 席詰めず満足度アップ
いなげや 「30分遅く」で用意周到

 店舗の拡大、営業時間の延長に血道を上げた外食・小売り。だが人手も足りないし、そんなマッチョなやり方はもう古い。時短でも店舗削減でも顧客の満足度は工夫次第でいくらでもアップする。自ら「縮む」ことで付加価値を生んだ実践マーケティングに迫った。(関連記事3面に)

 20日、東京・世田谷のファミレス「ロイヤルホスト桜新町店」を訪れた沖ツヤ子さん(70)は「ミート&グリーン ギャザリング・プラッター」を注文した。ヒレステーキにエビやチキンを合わせた商品で、価格は3002円と期間限定メニューで最も高い。

 「以前は2千円ぐらいまでだったけど、3千円のメニューも頼んでもいいと思えるようになった」。高級牛肉を使うなど料理の質はさることながら、沖さんが決め手としたのは、ゆったりとした店の空間だ。食後もコーヒーを頼んでのべ2時間ぐらい滞在するという。

 同店を含め約230店のファミレスを運営するロイヤルホールディングスは2017年以降、約7割の店で営業時間を平均で1時間20分短縮した。さらに24時間営業の店は17年1月までに完全に廃止。人手不足にも対応した働き方改革の一環で、黒須康宏社長は「年7億円の減収を覚悟した」と当時を振り返る。

 だが、ロイヤルホストの17年の既存店売上高は約6億円の増収と予想を大きく上回った。店の総営業時間は大きく減ったものの、高額メニューが支持されたことなどで客単価が16年に比べ3・7%上昇したからだ。

 営業時間を縮めるのに合わせ、同社は従来の運営を抜本的に見直した。最も稼ぎ時であるランチとディナーのピーク時間帯でも、客を目いっぱい座席に詰めない。2人客でも4人席に案内してゆったりと座ってもらう。売り上げを追うのではなく、「顧客一人ひとりの満足度を徹底して高める」(黒須社長)戦略へのシフトだ。

 狙いは当たった。それまでの期間限定メニューの売れ筋は2千円前後だった。徐々により高い商品が売れ始め、今月のフェアでは最も高い3千円超のメニューを注文する人も目立つという。

 営業時間の減少で客数の落ち込みが避けられなくなるなか、客の来店が少ない「アイドルタイム」と呼ぶ時間帯にも目を付けた。

 例えば午前10時から11時ごろに、子どもを送り終えた母親らが集まるのはカフェが主流。そこでオムレツやサラダセットなど軽食メニューを新たに提供し、交流の場として気軽に使ってもらうようにした。最近何度も訪れるという都内に住む30代の主婦は「ゆっくり落ち着いて会話できるのがいい」と話す。

 限られた時間だからこそ、消費者により価値を感じてもらいやすい。従来の拡大路線では見過ごしていた盲点ともいえる。黒須社長は「営業時間と客席の稼働率にこだわる時代ではなくなった」と強調する。

 営業時間を縮め、稼ぐ力を高めたのは同社だけではない。2月中旬正午ごろ、食品スーパーのいなげやが運営する「いなげや入谷店」(東京・台東)の鮮魚売り場に、サーモンやブリなどの切り身魚がびっしりと並んでいた。売れてもすぐに従業員が次々と商品を補充していく。

 ピーク時間帯なのに商機を逃している−−。実は1年ほど前まで同店では、来店客がどっと増える正午を過ぎると、「鮮魚売り場は商品の隙間が目立つことも多かった」接待範夫店長)。従業員は特売商品の陳列などを優先するため、カット作業など生鮮品の仕込みが十分に追いついていなかったのだ。

 そこで、いなげやは思い切った決断に出た。17年から同店の開店時間を午前9時から30分遅らせた。従業員の出社は午前8時と従来と変わらず、接客までの余裕が生まれた30分を有効活用した。

 まず青果の仕込みを済ませた後、午前9時半までに特売品をほぼ全て並べる。鮮魚や精肉も8割程度まで仕込みを終わらせる。開店して接客の仕事が増えても、余裕を持ってピーク時間帯までに補充品をそろえられるようにした。

 営業時間は30分減ったものの、入谷店の17年の売上高は前年を2%上回った。販売ロスが減ったことなどが要因だ。接待店長は「限られた人材をうまく活用し、さらに顧客の満足度を高めたい」と話す。いなげやは17年に計38店で営業時間を縮めたが、18年はさらに13店舗で開店時間を30分遅らせる。

 外食や小売りチェーンで営業時間を延長する動きが目立って広がったのは80年代から。だが、24時間営業のコンビニが急増し、ネット通販が普及した今、店を長く開けることで業績を伸ばすという方程式は成り立ちにくくなった。とりわけ、外食・小売業にとって深刻化する人手不足は大きな制約要因だ。

 リクルートジョブズ(東京・中央)の調べでは、首都圏・東海・関西の都市圏で1月のフード系の時給は前年同月比2・4%増の985円と過去最高水準が続く。特に早朝や深夜の時間帯はアルバイトの確保がままならず、一部では計画していた出店をとりやめる動きも出ている。

 ルミネはテナントの人手不足に対応し、17年4月から全15店のうち12店で営業時間を短縮した。マックスバリュ九州は17年12月から8店で24時間営業を中止。17年にグループ全約3000店舗の2割で営業時間を縮めたすかいらーくは、18年にさらに対象店舗を増やす考えだ。「縮んで稼ぐ」逆転の発想はより求められている。

【表】外食・小売りで営業時間短縮の動きが広がる 
すかいらーく 
2017年に「ガスト」を中心として全約3000店の2割の520店舗で営業時間を短縮 

物語コーポレーション 
焼肉店「熟成焼肉 肉源」一部店舗で閉店時刻を早めた 

イオン 
17年12月から「マックスバリュ九州」の8店舗で24時間営業を廃止 

いなげや 
17年38店舗で営業時間を短縮。18年1月に10店舗程度で開店時刻を遅くした 

ルミネ 
17年4月から全15店舗のうち12店舗で営業時間を短縮

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