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インドネシアに挑む(下)進むキャッシュレス化、スマホ決済の覇権争奪、購入履歴で融資見極めも。

[ 2018年2月23日 / 日本経済新聞 朝刊 ]

 インドネシアで銀行口座を持つ人は人口の4割にとどまるが、決して「金融途上国」ではない。普及率が5割を超えたスマートフォン(スマホ)を軸にキャッシュレス化が浸透し、その裏では日本の金融機関や外資も交えた覇権争いが激しさを増している。

 「10%キャッシュバック」。2月初旬、ジャカルタ郊外のショッピングモールはこんなポスターで埋め尽くされていた。大手財閥リッポー・グループが日本の東京センチュリーと組んで始めた電子マネー「OVO(オボ)」について、利用を促すキャンペーンだ。

 「ポイントがたまってお得。財布もいらない」。モールのフードコートで支払いをしたサントさん(34)は笑う。公共料金や電話料金の支払いもスマホひとつ。リッポーは後発だが自前のモール利用者を中心に会員を増やし、半年で820万人とインドネシア利用者数トップを競う。

 日本や欧米では現金、クレジットカード、デジタル通貨と段階的に決済手段が拡大。インドネシアはATMの大半が高額紙幣1種類しか扱えず不便だったため、スマホ普及を機にキャッシュレス化が進む。スマホ決済の成長は著しく、調査会社のユーロモニターによるとこの規模はこの5年で5倍に増加。現金と比べれば1%程度だが、勢いは圧倒的だ。22年にはさらに6倍に増える見通しだ。

 現地銀など27もの企業が電子マネーの発行登録をしており、競争は激しい。

 最大手銀である国営マンディリ銀行(会員数300万人)など現地銀は、高速道路の決済などインフラをおさえて会員数を伸ばしている。米シティグループはオボと張り合うようにキャッシュバックの販促を掲げる。バイクのライドシェア事業を展開する地場系企業(750万人)は日々の通勤で使えるのが強みで、地場の通信会社(600万人)も参入する。

 東京センチュリーの本田誠現地法人代表はこうした市場環境について「生き残るのは1〜2社だろう」と話す。次の一手として、今春からオボ会員向けに融資を始める。現地の有名財閥の信頼と東京センチュリーの融資ノウハウで、決済からローンまで一括提供するビジネスモデルを武器に他社の突きはなしを目指す。

 電子マネーの購入履歴から個人の支払い能力を判断。例えばティッシュなど日用品で高級なものを買う人は生活水準が高く、支払い能力が高いと考えられる。購入履歴で与信できれば「銀行口座を持っていない客にも貸せる」(本田氏)。銀行口座のない国民の6割も融資対象になりうる。

 普及率は1割にとどまるが、クレジットカードに商機を見いだすのはイオングループ。ジャカルタ郊外のイオンモール内で買い物代金の5%割引などを掲げ、会員獲得に乗り出す。

 キャッシュレス化を軸に金融サービスが一気に広まるなか、現地の顧客の信頼をいかに勝ち取るか。勝負は始まったばかりだ。

 この連載は大島有美子が担当しました。

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