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敵はイオンと過信、セブン&アイ・イズミ提携の真相、イズミ、「籠城型」成長へ弱点補完。

[ 2018年4月8日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 セブン&アイ・ホールディングスと、広島県が地盤のイズミは業務提携すると発表した。互いに出資はせず、プライベートブランド(PB)の共同開発や相互送客、総合スーパー(GMS)での商品の共同仕入れ・出店などで手を組む。ネット勢力の急伸、人口減に伴う市場の縮小などを背景に外部の力を利用した補完戦略が広がりそうだ。

 イズミとセブン&アイHDとの提携は短期的な話だけではない。共通のライバル、イオンや米アマゾンをにらんだ中・長期戦略と言える。特に今回の提携は外部の力をフル活用し、地盤を守ろうというイズミの"籠城型"成長戦略のしたたかさが際立った。

 実際に提携を仕掛けたのはイズミだ。両社はカード事業などで連携していたが、もう一歩踏み込んだ関係を求めた。小が大に支援を申し入れた姿を見ると経営が厳しいように思われるが、イズミの経営状況はいたって健全だ。

 イズミの基本戦略は中四国、九州を地盤としたGMSの展開で、全国チェーンになるという野望は抱いていない。戦国大名の毛利氏型と言われるゆえんだ。もっとも地域で圧倒的なシェアを持っていることを過信するようでは地盤固めもままならない。このためイズミはこれまでも外部のノウハウ、情報を貪欲に求めながら競争力を磨いてきた。

 イズミのGMS「ゆめタウン」の場合、他社と違って不動産事業と自社の売り場を分けないミックスモデルだ。地盤にこだわるが、自前にはこだわらない。全ては年々厳しくなる顧客満足のためだ。実は2017年4月、初めて東京に情報収集拠点を作っていた。こうした流れを見ると、セブン&アイとの提携は必然だった。

 提携は長期戦略の一環だが、目先で言えばイオンとの戦いだろう。イオンは11年には中四国に地盤を持つ大手食品スーパー、マルナカグループを約450億円で買収するなど、M&A(合併・買収)によって規模を拡大してきた。現在はGMS、食品スーパーなどを300店超展開。特に食品スーパー部門は、売上高にあたる営業収益が約4000億円と、地域別では首都圏に次ぐ規模を持つ。

 ショッピングセンター(SC)でも、広島県府中町にある地域最大級の「イオンモール広島府中」を16年に増床し、今年4月27日には広島市でアウトレットを主体とした新型SC「THE OUTLETS HIROSHIMA(ジ・アウトレット・ヒロシマ)」を出店する計画。テナントが豊富で、専門性やサービス力を高めているイオンはやはりあなどれない。

 セブン&アイにとってもイオンは直接ぶつからないまでも最大の敵だ。イオンが拡大を目指すこの地域で、セブン&アイがイトーヨーカ堂を広げることは投資に見合わない。むしろイズミとの共闘でイオンの拡大に歯止めをかける方が現実的だ。商品の共同仕入れなどが奏功すれば、停滞するヨーカ堂の利益にもつながる。

 今回の提携でGMS以上に重要なのはコンビニエンスストアかもしれない。イズミはコンビニに参入することをもはや考えていない。ゆめタウンなど自社施設の魅力を高める集客装置としてセブンイレブンを導入していく方が現実的。セブン&アイにとって稼ぎ頭のセブンイレブンが出店しやすくなるというのは好都合だ。

 人口減、少子高齢化のスピードは速い。しかも米アマゾンなどネット流通の急成長でセブン&アイとイオンが流通2強として張り合う意味は薄れつつある。織田信長は自前型で天下統一を狙った印象だが、外国勢が日本を狙う今日。セブン&アイは豊臣秀吉型で本領を安堵しながら勢力拡大を進めるスタイルを選んだ。小売りの競争の構図は変わろうとしている。

(編集委員 中村直文)

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