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高島屋社長木本茂さん――館も街、日本橋からワクワク、婦人服への偏りを反省(トップに聞く)

[ 2018年4月23日 / 日経MJ(流通新聞) ]

 高島屋が9月、東京・日本橋にショッピングセンターを開業する。インバウンドや富裕層の消費が活発で足元の業績は堅調だが、幅広い層の客を呼び戻す百貨店の改革はまだこれからだ。木本茂社長は「単独でできることには限りがある。地域の力を集めて街を活性化していきたい」と日本橋で新たな百貨店のカタチを模索する。

(聞き手は日経MJ編集長 半澤二喜)

 ――先日の決算発表で「インバウンド需要は西高東低」と発言されていましたが、百貨店の「冬」の時代はまだまだ続くという示唆ですかね?

 「そういう意味はなかったですが(笑)。前期は国内百貨店の売り上げが約200億円増えました。そのうちインバウンドが140億円ちょっとなので、確かにインバウンドの貢献が大きいことは事実です。ただその前の年は国内百貨店は減収減益。インバウンドだけでなく国内のお客様もプラスになってきたということで言えば、前の年に比べて少し明るくなってきています」

中間層の消費
ちょっと厳しい

 ――ボリュームゾーンの中間層の消費動向はどうですか。

 「高島屋のカードを持つお客様のうち、年間で100万円以上お求めいただく人の売上高がプラス2・6%。逆に100万円未満の人についてはマイナス4%強だったので、そのところのゾーンについてはちょっと厳しかった」

 「通期ベースでは婦人服はマイナス3%。紳士もマイナス1%でしたが、後半の6カ月で言うと婦人もマイナス2%、紳士はプラスマイナスゼロでほぼフラット。少し回復の傾向は出てきている感じです。この春のベースアップが消費にどれだけつながっていくかがカギでしょう」

 ――インバウンドについては2022年度に830億円と、終わった期の約1・7倍を計画していますが、強気ですね。

 「非常に順調に訪日外国人の数が増えており、むしろ保守的な数字を置いています。東京五輪の後も含めて十分にこのマーケットの拡大が続くとみています」

 ――インバウンドと高額消費が追い風になっている分、百貨店の改革スピードは鈍りませんか。

 「百貨店のあり方、どういうふうにマーケット対応を変えていくかが今、求められています。例えばここ十数年来、婦人服にかなり偏重した品ぞろえでした。逆に面積をどんどん小さくしたことで影響を受けたのがベビー・子供服の分野です。ベビーベッドや哺乳瓶など色々な物が1つの百貨店に行っても取りそろえられないという状況になり離客につながってしまうこともありました」

 「そこで高島屋に来たら必要な物が全部そろうようにしたほか、色々な悩み事に対応できるよう専門知識を持つベビーコンサルタントを配置しました。一方、婦人服では、横浜と新宿でスーツクローゼットという売り場をつくりました。女性は働く時に着るスーツを探そうと思うと各ブランドのショップを回って探さないといけません。自主編集で1つの売り場でいくつかのブランドのスーツを比較検討し、選べるというような環境をつくりました」

 ――日本橋SCではどんな特徴を打ち出していきますか。

 「今ある日本橋高島屋本館と、はす向かいの時計専門館ウオッチメゾン、東館と、9月にオープンする新館で構成します。新館は地下1階から7階までが商業施設で、グループ会社の東神開発がリーシングして今、旬の専門店の品ぞろえを進めています。単に専門店を集めるというのではなく、本館のMDとの関係性を見ながら一体的な商業施設にするのがポイントです」

 「昔この日本橋は日曜日は目的買いで来る人以外はほとんど来ない、閑古鳥が鳴くぐらいの感じでした。ベイエリアとかにタワーマンションがいっぱいできて、今は中央通りを行き来する人がものすごく増えてきました。そういうニューファミリーとか、再開発で急増しているオフィスワーカーの人たちが楽しんで使ってもらえる施設にしたいと考えています」

 ――具体的には?

 「新館の地下1階には専門店として新しい食料品もそろえ、今の予定では6階、7階にレストラン街も入ってきます。それ以外の各フロアでもオフィスワーカー、ニューファミリーに対応して、色々なライフスタイル提案をしていくものが専門店で入ってきます。洋服だけではなくあらゆるジャンルで。そこから先はこれから発表なので」

ベストな形は
街全体に活気

 ――まちづくり戦略を掲げていますね。

 「高島屋だけで事業活動していくというのは非常に点の話で、そこの地域全体が活気を呈していくということがベストです。そのためには色々な関係者とどれだけ手を携えてその街を活性化していくかが重要です」

 「館そのものも街として捉えて、にぎわいがあり、ワクワクする場でなければなりません。各店で色々な展覧会やイベントをやったり、いつも違うことを発信したり、提案し続けないといけない。百貨店はそういう業態だと思っています」

業績データから
21年ぶり国内全店黒字

 高島屋の2018年2月期の連結売上高は前の期比3%増の9495億円、営業利益は4%増の353億円だった。訪日客の消費のほか、化粧品や高額品の販売が好調だった。8年連続の営業増益。地方や郊外店の苦戦をコスト削減で補い、店舗別の営業損益は21年ぶりに国内全17店で黒字に。

 19年2月期は実質ベースでは微増収を見込む。免税売上高は2割増の630億円。9月に日本橋店と専門店を融合させたショッピングセンターが開業。10月にはタイの新店も開業。百貨店モデルからの脱皮に向けて準備を進める。(小田浩靖)

 きもと・しげる

 1979年(昭54年)横浜市大商卒、横浜高島屋(現高島屋)入社。2010年執行役員新宿店長、11年常務。14年から現職。趣味はゴルフのほか、家族とともに楽しむスキューバダイビング。東京都出身。61歳

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