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上野フロンティアタワー(東京都台東区)――地元・観光客集うハブへ、30〜50代取り込み堅調(みせどころ)

[ 2018年4月30日 / 日経MJ(流通新聞) ]

地域情報を発信 シネコンも入居

 J・フロントリテイリングは2017年11月、松坂屋上野店(東京・台東)の南館跡地に、百貨店や映画館、オフィスフロアからなる複合ビル「上野フロンティアタワー」を開業した。百貨店の顧客の高齢化が進むなか、子会社のパルコや映画館など多様な業態を取り込み若返りを図る。売り場の中央に地域の案内所も設け、住民だけでなく観光客も取り込む試みの成果は――。

 上野フロンティアタワーはJR御徒町駅から徒歩1分の場所に位置する。JR山手線、京浜東北線のほか、銀座線、日比谷線、大江戸線の地下鉄駅からも近い好立地だ。

 地下1階に松坂屋、1〜6階にパルコ、7〜10階にシネマコンプレックス(複合映画館)のTOHOシネマズが入り、12〜22階はオフィスとなる。大丸松坂屋百貨店不動産事業部の石井花氏は「御徒町地区の活性化に貢献したい」と複合ビルの狙いを語る。

 延べ床面積は約4万1000平方メートルで、旧松坂屋上野店南館と比べて7割増床した。買い物に訪れた御徒町出身の女性(71)は「こんなに大きくてきれいなビルが建って町の印象が変わった」と喜んでいた。

 Jフロント子会社の大丸松坂屋百貨店が直接運営するのは地下1階のみ。隣接する8階建ての上野店本館と一体で客を呼び込んでいる。中に入ると広がるのは、街歩きを楽しんでもらうための婦人靴売り場。約60ブランドを取りそろえる。

 さらに売り場の中央には、ビルではなく周辺地域を紹介する「上野案内所」を設けた。赤いのれんが際立つ。地域の情報や魅力を発信し、上野動物園が近いことからパンダをモチーフにしたグッズやお菓子なども豊富にそろえた。英語や中国語を話すスタッフも常駐して訪日外国人観光客にも対応。新たな顧客の取り込みを目指している。

 一方、ビルの中核となる1〜6階にはパルコが運営する新業態「パルコヤ」が入った。20代前後の若い顧客が多いイメージの強いパルコだが、上野店は御徒町エリアの属性に合わせて30〜50代が楽しめるようブランドを切り替えた。

 パルコヤは68テナントで構成する。8割の店が上野御徒町エリア初出店で、2割が地元ゆかりの店だ。

 「タワー」を開業する前の調査で、「御徒町エリアには友達を呼んで過ごすような店が少ない」という意見が多かった。そこで1階には人気の「ディーン&デルーカ カフェ」や、予約が困難な日本料理屋「くろぎ」の新業態のカフェ・バー「廚(くりや)otona くろぎ」を誘致した。

 友人2人とお茶をした上野在住の女性(43)は「駅近くにおしゃれなカフェができてとても便利」と満足そうだった。

 内装にもこだわった。共用廊下に暗めの色のフローリングを使い大人の空間を演出。さらに2階のエスカレーター横では、バラとラベンダーのドライフラワーによる素材を柱に埋め込み、香りを楽しめるようにした。

 6階のレストラン街「口福回廊」には、9店が入る。のど黒が有名なすし店「金沢まいもん寿司」など、昼食や夕食時には行列が絶えないという。

 開業から5カ月の状況では、「カードのデータから30〜50代が7割以上を占めており、狙い通りの客層を取り込めている」とパルコヤ上野店の服部静課長は手応えを感じている。集客数も売上高も計画を上回るという。

 男性1人だけのほか、カップルや夫婦の来店も想定以上に多い。従来のパルコにはあまり見られなかったベビーカーを押した女性客も目立ち、地域の特性を反映した客層となっている。

 7〜10階には映画館が入る。8スクリーン、全1440席を用意。秋葉原が近い立地を生かし、アニメファンを意識したラインアップにした。周辺には映画館がなかったため、集客に貢献しているという。12〜22階はオフィスとなっており、1千人あまりが働く。

 百貨店と映画館、オフィスを兼ねそろえた複合ビル。観光地の要素もそなえるだけに、顧客の裾野は広い。実際、幅広い年齢、属性の人が集まるスポットになっている。

記者から
地域との連携、成長左右

 上野公園や上野動物園、美術館、博物館、アメヤ横丁などがあり、古くからにぎわいをみせる上野御徒町エリア。最近では訪日外国人観光客の姿も多く見かけるようになった。

 J・フロントリテイリングは新たな街のシンボルとして上野フロンティアタワーを企画、松坂屋上野店本館と周辺施設を合わせて「シタマチ・フロント」と名付けた。

 2017年12月には地元の商店会と組み、駅前の「おかちまちパンダ広場」にスケートリンクを作った。パルコヤや松坂屋では、上野動物園や上野の森美術館のチケットを提示すると割引やサービスを受けられるようにもしている。

 松坂屋の単独のブランドと品ぞろえだけでは集客できる層は限られる。ビルの中の多業種だけでなく地域の商店会らと連携することで、取り込めていなかった顧客にも手を伸ばす狙いがある。地域と一体となっていけるかが、今後の成長を左右しそうだ。(鈴木慶太)

《施設概要》
▽ 開業日   2017年11月4日
▽ 事業主   大丸松坂屋百貨店
▽ 延床面積  4万1000平方メートル
▽ 所在地   東京都台東区上野3の24の6

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