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ドラッグストア、「食」のみこむ、生鮮・健康・美、何でも、サケや出来たてギョーザ、コンビニより便利?

[ 2018年5月9日 / 日経MJ(流通新聞) ]

杏林堂 焼きたてパン
ウエルシア 店内調理カレー
マツキヨ 栄養豊富な高級ジュース

 ドラッグストアの拡大が止まらない。加工食品にとどまらず、店内調理の食品や生鮮品を提供するチェーンが相次ぎ、店内は一見するとスーパーと間違うほどに。1990年代にマツモトキヨシの名を全国に知らしめたテレビCMさながら、「何でも欲しがる」ドラッグストアが、スーパーやコンビニエンスストアをのみ込もうとしている。

 静岡県吉田町に、都内でもまだ珍しい本格的なバターコーヒーを飲める店がある。そこはカフェではなく、3月に開業したドラッグストアの杏林堂薬局(浜松市)吉田店。オランダの国立公園で放牧された牛のバターを使ったバターコーヒー(税抜きで350円)を提供する。

 店内で焼き上げたクロワッサンを使って調理したサンドイッチなども販売し、モーニングやランチセットもそろえる。近隣に住む男性(60)は「コーヒーを飲みに2日に1回ぐらいきている。買うつもりはないのに、店で安い商品を見つけると買ってしまう」と話す。

 「まるでスーパーみたいで驚いた。買い物が1カ所で済む」。4月中旬、妻と初めて来店したという男性(71)がカゴに入れたのは、サケの切り身。約2600平方メートルの売り場では精肉と鮮魚の専門店がテナントとして入り、200〜250品をそろえる。野菜は自社のバイヤーが調達する。

 品ぞろえだけでなく、加工食品の安さもスーパーに負けない。吉田店近くのディスカウント系スーパーとスナック菓子やカレー粉など食品13品目で比べると、7品目で杏林堂薬局の方が安かった。

 「競合相手はドラッグストアだけではない。すべての小売業がライバルだ」。静岡県内に約80店を展開する杏林堂薬局の青田英行社長はこう語り、食市場の取り込みに意欲を見せる。全国有数のギョーザの消費地である浜松という土地柄から、自社開発した独自レシピの冷凍ギョーザを販売してきた。昨年4月からは一部店舗で、店内調理したギョーザを焼き上げて販売している。

 20年間で売上高に占める食品の比率は14%から約44%にまで高まった。食品の拡充は集客力に直結する。カード会員の来店頻度は年34回と、同業を大きく上回る。17年にはツルハホールディングス(HD)の傘下に入り、競争の激化に備える。

 食に関連した商材を何でも取り込むドラッグストアは、杏林堂薬局だけではない。「ゲンキー」を展開する福井地盤のGenky DrugStoresは肉や野菜、果物を取り扱う店舗を現在の約90店から18年12月までに全店に広げる。

 17年度の市場規模が前年度比5・5%増の6兆8504億円と、2年連続で5%成長を遂げているドラッグストア。けん引役が食品だ。売り上げに占める食品の比率が56%に達するコスモス薬品は、売上高が10年で3・5倍以上増え、約5000億円に達する。

 ドラッグストア各社が食品強化に乗り出し、業界全体の食品比率は約23%に拡大。食品の品ぞろえを増やしたり、独自商品の開発にも拍車がかかり、スーパーやコンビニエンスストアなどを脅かそうとしている。

 ウエルシアHDは3月、食品に絡む新たなサービスを打ち出した。東京都台東区の浅草まるごとにっぽん店は、店内の厨房で調理したカレーライスを販売する。

 「淡路島産玉ねぎ入り浅草カレー」(540円)はウエルシア独自のレシピ。ご飯を店内で炊き、工場で作ったルーを温めて提供する。店内には全国各地のレトルトカレー約120種もそろえ、プラス税抜き200円で店内で炊いたご飯と福神漬けなどをつけて食べられる。

 「人口が減っていく中、飲食業界も厳しい状況にある。ドラッグストアであれば、食の役割も違和感なく取り入れられる」。ウエルシアHDの池野隆光会長はこう指摘する。カレーを提供する店舗は都市部や郊外での出店も計画する。

 同社はコンビニが得意とするサービスに手を広げる。約1700店のうち135店で24時間営業を行っており、19年度末までに400店に増やす方針。弁当・総菜の取扱店も早期に現状の約4倍である600店規模に広げる計画。公共料金などの支払いを受け付ける収納代行サービスも全店舗で行う。

 マツモトキヨシHDは野菜や果物を圧搾してつくるコールドプレスジュースを提供する。昨年6月に開いた銀座の店に続いて、1月に開いた新店「マツモトキヨシ原宿駅表参道口店」で販売している。

 通常のミキサーで作るスムージーやジュースに比べ、ビタミンなどが残りやすいのが特徴。価格は1000円前後と高めだが、美容に関心の高い利用客を取り込む。

 同社は「食品を多く取り扱う戦略では小売業全体で同質化し、売っているものがどこでも同じになる。ドラッグストアとしての専門性を発揮するのが難しい」とみる。逆に、美と健康に沿うサービスであれば積極的に取り入れている。ネイルサロンやメーキャップサービス、薬剤師によるカウンセリングのできる店を増やしている。

 日本チェーンドラッグストア協会は、25年までに市場規模が10兆円に拡大すると推計。現在、5万5000店を展開するコンビニの約10兆7000億円に迫る勢いだ。

 少子化で食を巡る競合が激しさを増すなか、異業種の商材やサービスをのみ込むドラッグストアの動向は、スーパーやコンビニの戦略にますます影響を与えそうだ。

(矢尾隆行)

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